episode1-20 スキルポイント

 沖嶋たちの異能の確認を終え、画面を切り替えて今度は自分のステータスとスキルを確認する。

 配下の力を把握するのも大事だが、真に重要なのはこっちだ。

 なにせ沖嶋たちは一時的に俺の旗下に入っているだけで、この難局を乗り越えることが出来た場合それでおさらば。それに対してこの力はこれから一生付き合っていくものなんだからな。




□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 氷室 凪

【Level】

 18

【Class】

 菓子姫

【Core Skill】

 ☆君臨する支配

【Derive Skill】

 ◇菓子兵召喚 Lv1

 ◇フレームイン『チェイン』 Lv1

 ◇星杖起動 Lv1

 ◇マスカレイド Lv1

 ◇お願いカミサマ Lv1

□□□□□□□□□□□□□□□□


 モンスターの数が多かったからか、随分レベルが上がった。

 ノーマルクラスの上限であるレベル100までは比較的上がりやすいらしいが、それでも国家冒険者や企業冒険者ではないフリーの冒険者の場合そこまで上げるのに約3か月程度はかかると言われている。それと比較すれば異常な成長速度だ。


 本来召喚系スキルを主体にして戦うクラスは、他のクラスに比べるとレベルが上がりにくいとされている。理由は経験値を召喚獣と折半するからだ。

 普通の冒険者はソロで活動などしない。召喚士であってもそれは同様で、フリーの冒険者であっても大抵数人のパーティーは組む。そしてその場合、かなりざっくりした言い方をすると、獲得できる経験値はパーティーの頭数で割った後さらに召喚獣と折半するということになる。召喚士は他のクラスの2倍戦わなければレベルアップについていけなくなるというわけだ。


 つまり俺のレベルアップが速いのは単純な話、ここまでソロで戦っていたからなわけだが、こっから先どうなるかはよくわからない。

 沖嶋たちは冒険者じゃないからレベルという概念を持たないが、そんな沖嶋たちがモンスターを倒した場合、経験値はどうなる? 沖島たちがダンジョンで異能を使えるのは俺のスキルの影響下にいるからであり、それを考慮すると俺の総取りという可能性も0ではないと考えられる。

 もしこの仮説が正しければ、最深部に到達するまでにLv50までは上げられるかもしれない。


 冒険者にとって10の倍数と50の倍数のレベルに達することは、キリが良いというだけではなく特別な意味がある。

 前者はスキルポイントの獲得であり、後者は新たなDスキルの獲得。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇菓子兵召喚 Lv1 『+』

     スキル「菓子兵召喚」を強制起動する。

▽菓子兵召喚

お菓子の国の兵士を召喚して従える。

・ゼリービーンソルジャーズ

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 スキルの詳細を開くと、今まではなかった『+』という項目が追加されているのがわかる。それを指で軽く触ると、さらに新しいウインドウがポップアップする。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇菓子兵召喚 Lv1→Lv2     『SP 1』

解放する権能を選択してください。

▶召喚獣「シロップスライム」の解放

▶同時召喚数+1

▶重複召喚数×2

▶召喚獣強化

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 このように、獲得したスキルポイントを消費することでDスキルはレベルを上げることが出来る。レベルアップにあたり、何を強化するか、どのような能力を解放するかは示された選択肢の中から1つだけ選ぶことになる。

 これらの選択肢が具体的にどういう能力なのか、どのような内容なのかは実際にレベルアップさせてみなければわからない。詳細を確認しようと選択肢をタップしても




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

菓子兵召喚のレベルアップを実行しますか?


解放する権能

『召喚獣「シロップスライム」の解放』


Yes/No

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 確認画面が出てくるだけで一切の説明がなされないわけだ。以前に色々調べてた時も思ったが、実際に自分がなってみて改めて強く感じる。冒険者のシステムはとにかく不親切極まりない。俺たちの世界の神様が力を与えてくれるという話だが、だったらもう少しわかりやすくしてくれても良かったのではないだろうか。ユーザーフレンドリーに欠けるぞ。

 と、文句を言っていても始まらない。俺が正式な手順で冒険者になり真っ当な探索をしているのなら家に帰ってからじっくりスキルポイントの使い道を考えれば良いが、今はそうも言っていられない。後になってスキルレベルを上げておけばよかったと悔いても遅い。今上げるべきだ。


 シロップスライムの解放というのはまず間違いなく新しい召喚獣を召喚出来るようになるのだろう。

 ゼリービーンソルジャーズに続いてシロップスライムとなると、どうやらこの菓子姫というクラスが召喚できるのはお菓子にまつわる召喚獣だけなのかもしれない。

 シロップスライムなどというモンスターは聞いたことがないが、名前からしてスライムの一種であることは確実。

 某国民的RPGの影響でスライムというと雑魚モンスターのイメージを持たれがちだが、現実のダンジョンにおけるスライムは中々の強さを誇る。敵として出現した場合もそうだし、召喚獣としても決して弱くはない。

 選択肢の一つとしては、全然ありだ。


 次に同時召喚数と重複召喚数については一見しただけじゃ何が違うのかわかりづらいが、ノーマルクラスの召喚士でもこのスキルは同じであるため俺は知っている。

 同時召喚数は種別の異なるモンスターを同時に召喚できる数を示しており、重複召喚数は同じ種類のモンスターを同時に召喚できる数を示している。

 菓子姫を例にするなら、ゼリービーンソルジャーズとシロップスライムを同時に召喚しようとする場合同時召喚数+1が必要で、シロップスライムを2体召喚しようとする場合は重複召喚数×2が必要になるということだ。


 現時点では同時召喚数の方は選ぶ意味がない。なにせ今俺が解放している召喚獣はゼリービーンソルジャーズのみ。後々同時召喚できるようにしたいと考えた場合でも、先に取るべきはシロップスライムの解放だ。

 対して重複召喚数を取るのはありだ。ゼリービーンソルジャーズを更に追加で7体召喚出来るというのは悪くない。絶対服従の頭数というのはどれだけいても困らない。


 最後に召喚獣強化。これも召喚士には必ずある選択肢で、解放済の召喚獣の中から一種を選び能力を永久的に強化する。

 今の俺の場合はゼリービーンソルジャーズの強化が出来るわけだが、今のところこいつらに力不足は感じていない。より戦力を安定させるという意味ではありだが、優先度はそれほど高くないように感じる……。


「今のレベルは18か……」


 候補はシロップスライムか重複召喚数増加にまで絞り込めている。

 ただ、シロップスライムを選んだ場合すぐに召喚することは出来ない。いや、出来るは出来るが、それをするにはゼリービーンソルジャーズを引っ込めなければならない。

 沖嶋たちの異能がダンジョンでどこまで通用するかわからない今、出来ればこいつらは召喚したままにしておきたい。


 さっきは今上げるべきだと思ったが、一戦見てからでも遅くはないか?

 もしくは、レベル20も近いしそれを見越してシロップスライムを取っておき、次に同時召喚数増加を取るという手もある。

 重複召喚数増加を選んだ場合リスクなく確実に戦力の増強が出来るが、セイレーンのようなケースもあるから手札を増やしておきたいという気持ちもある。


 クソ、なんて悩ましいんだ……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る