episode1-14 星の杖

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【Name】

 氷室 凪

【Level】

 18

【Class】

 菓子姫

【Core Skill】

 ☆君臨する支配

【Derive Skill】

 ◇菓子兵召喚 Lv1

 ◇フレームイン『チェイン』 Lv1

 ◇星杖起動 Lv1

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「星杖起動」

『accept、多次元収納を展開』


 俺の言葉に反応して、如月のネックレスに吊り下げられた銀色の小さな杖から機械的な音声が発され、その直後、まるで小さく折りたたまれていた紙を広げていくように、30cmほどのメタリックな杖に変形して如月の手の中に収まった。


『complete、星杖起動』


 その音声と共に杖の先端にとりつけられた青い球状の宝石のようなものがほんのり明るく光を発する。

 また、先端の少し下あたりにゴマ粒のように小さなランプがついており、緑色に光っている。


「わっ、すごい! ほんとに起動した!」

「予想通りだったな。やっぱり旗下にいるやつの異能なら俺が起動出来る。そういうスキルみたいだ」

「うん、それはもうそういうものだと思っておくよ。でもどうやってりりちゃんを説得したんだ? この短時間で心変わりさせるって、普通じゃなくないか?」


 如月と密約を交し晴れて旗下に迎え入れた後、詳細は伏せて沖嶋に説得成功の旨を伝え、異能の強制起動について実験を始めた。無事に起動することが出来て一安心だ。


「野暮なことを聞くなよ沖嶋。如月もみんなを助けたい気持ちは一緒だ」

「こんなときに我儘言ってられないもんね! 安心して沖嶋くん、あたしも頑張って戦うから!」

「ま、まあ二人のわだかまりがなくなったんなら俺も嬉しいけど」


 微妙に納得いってなさそうではあるが、現に如月の異能が起動している以上俺たちが和解したのは客観的に見て間違いない。沖嶋はひとまずそれでよしとしたのかそれ以上の追及はしてこなかった。


「どうする氷室? 前にお爺ちゃんに見せて貰った時もこうだったから、多分魔法使えるよ」

「そうだな……、そもそもだけど何の魔法が使えるんだ?」

「えーっと、なんだっけ……」


 星の杖を片手で持ち、もう一方の手でこめかみをぐりぐりしながら如月はうんうんと唸り始める。そんなことすら覚えてないとか、興味ないにもほどがあるだろ。むしろよく起動のキーワードを覚えてたな。

 いや、待てよ? そもそもキーワードがこうやってスキルに表示されてるなら……




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◇星杖起動 Lv1 +

如月りりの異能「星の杖」を強制起動する。

▽星の杖

星の記憶を読み取り魔法を再現する装置。

使用には星の記憶を書き込んだメモリーカードと、

魔力を蓄えた魔石が必要となる。


【魔力残量】

100/100(m)


【カードスロット】

・Fly(1m/1m)

・StrongFirst(1m/1m)

・Lightning(1/5m)

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 ビンゴだ。菓子兵召喚と同様にスキル自体の詳細を確認できる。音声入力で起動したことを考えると迂闊に読み上げない方が良いか? それとも魔法の発動は如月本人にしか出来ないのか?

 これらが全て俺の知っているものだとすれば、上から順に低級飛行魔法、低級身体強化魔法、低級砲撃魔法のはず。試すなら身体強化が無難か。


「ストロングファースト」


 なにも起きない。


「如月、今の言葉を言ってみてくれ」

「うん、ストロングファースト」


 星の杖はうんともすんとも言わない。


「おかしいな。ステータスウインドウにはフライ、ストロングファースト、ライトニングの3つの魔法が表示されてるぞ」

「あ、思い出した! そういえば間違って名前だけで魔法が出ちゃわないようにこう言わなきゃいけないんだった! オーダー・ストロングファースト!」

『accept,StrongFirst』


 アクセプト……? どういう意味だ? 英語はさっぱりなんだ。


「身体能力が強化されてる感じはあるか?」

「お、おおお? すごいすごい! 力が漲って来た! ほら! この剣とかめっちゃ軽い!」


 コボルトの死体から強奪してここまで持ってきていた片手剣。地面に突き刺しておいたそれを、如月はひょいっと抜き取って軽々とぶんぶん上下に振り回して見せる。元々片手で持つこと自体は出来ていたが、重そうに引きづっていたことを考えるとしっかり身体能力が強化されているようだ。


 とりあえずアセプトというのはちゃんと発動した場合の単語で良さそうだ。


「一応聞くけど、その魔法は他の奴にはかけられないのか?」


 ゼリービーンソルジャーズ全員に身体強化魔法をかけられれば、大きな戦力アップになる。いくら魔法で強化されるとは言っても如月自身は前に出て殴り合いなど出来ないだろうし、支援に徹して貰った方が総合的には良いはずだ。


「うーん、多分無理だと思う。お爺ちゃんそんなこと言ってなかったはずだし、別に今だってあたしを選んで使ったわけじゃないし」

「それもそうか。じゃあ――」

「ちょっと待った。氷室、色々試したいのはわかるけど、りりちゃんの異能が使えるようになったんならひとまずそれで良いんじゃないか? たしかダンジョンのモンスターって、時間経過で強くなるんだよな?」

「あ、あぁ、そうだな。そうだった」


 たしかに沖嶋の言う通りだ。当初の目的である、足手まといを戦力にというのは達成されてる。俺としたことが、魔法について色々検証できるという機会に目が眩んでしまっていた。危ない危ない、沖嶋がダンジョンの知識を持っていなければいたずらに時間を消費するところだった。


「検証は歩きながらでも出来るし、ともあれまずは進むべきだな。如月、あと1分経ったら魔法は解除してくれ。たぶんその魔法は1分で魔力を1消費する。その認識で間違いないか確認しておきたい」

「はいはい、わかったよ。なんかあんた活き活きしてんね」

「魔法は魔術に近い異能だからかな。氷室的には興味津々なんだろうね」

「……」


 否定はしない。俺が目指していたのは魔術師だが、可能なのであれば魔法でも良かった。というか沖嶋、こいつなんだかんだ異能について詳しいな。今の発言は魔法と魔術の関係を知らないと出てこないだろ。

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