第7話 甘い誘惑
そして、そんな和花の言葉を聞いた悠人は、
「えっと……悪い和花、俺はそんなに頭がよく無いからお前が言っている意味がよく分からないな」
そう言って、悠人は一旦部屋から出て行こう思い、その場から立ち上がろうとすると。
「あっ、兄さん、待って下さい!!」
そう言って、和花が悠人の腰回りに急に抱き着いて来たので。
「えっ、あっ、うわっ!?」
立ち上がろうとしていた悠人は突然の和花の行動に対応しきれず、和花に抱き締められたまま尻もちを付いて後ろに倒れた。そして、
「いててっ……」
そう言って、悠人が床に倒れたまま目を開けると。
「あっ、すみません、兄さん、大丈夫ですか?」
悠人の腰に抱き着いたまま心配そうな表情を浮かべて和花がそんな事を聞いて来たので。
「ああ、別に何ともないぞ」
悠人が正直にそう答えると。
「そうですか、良かったです、もし私のせいで兄さんに何かったら私は自分の事を嫌いになってしまう所でした」
和花はそんな事を言ったので。
「いちいち大袈裟だな、例え和花のせいで俺に何かあったとしてもお前は気にしなくて良いんだぞ、妹を守るのは兄さんの大切な使命だからな」
悠人はかっこ付けてそんな事を言ったが。
「残念ですがそういう訳にはいきません、だって兄さんは私が世界で一番好きな人ですし、私は好きな人が傷つく姿なんて観たくありませんから」
照れ臭そうに微笑んで和花はそんなセリフを言ったので。
「……そうか」
そう言って、悠人が和花から目を逸らすと。
「あっ、兄さん今照れていますね」
和花は嬉しそうな口調でそう言ったので。
「……照れてねえよ」
和花から視線を逸らして悠人がそう答えると。
「嘘です、兄さんは絶対に照れています」
和花は続けてそう言ったので。
「照れてないって」
悠人はそう言い返すと。
「もし本当に照れて無いのなら、ちゃんと私の目を観て話をして下さい」
和花がそんな事を言ったので。
「……分かったよ」
そう言って、悠人が再び和花の方を見ると。
「ふふ、私のお願いを素直に聞いてくれる優しい所も私は好きですよ」
和花はそんな事を言ったので。
「……もう俺の負けでいいからこれ以上からかわないでくれ」
悠人がそう呟くと。
「ふふ、分かりました」
和花は嬉しそうにそう言った。そして、
「ところで兄さん、本当に私に何かお願いをしなくても良いのですか? 今の私なら兄さんのどんなお願いでも聞いてあげますよ?」
和花は再度そんな魅力的な提案をして来て、悠人は薄い布越しに感じている和花の体の柔らかさに理性が溶かされそうになりつつも。
「…………いや、別にお前にお願いする事は特にないよ」
ギリギリのところで兄としての理性で耐えぬいて、悠人は何とかその言葉を絞り出した。すると、
「……そうですか、兄さんがそう言うのなら仕方が無いですね」
和花は諦めた様にそう言ったので、その言葉を聞いた悠人はようやくこの甘くて辛い時間から解放されるのかと安堵したのだが。
「それでは兄さん、代わりに私のお願いをもう一つ聞いて貰えませんか?」
「え?」
そんな予想外の事を言われて、悠人は思わずそう呟いた。
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