第5話 勉強会
そして、和花のそんなお願いを聞いた悠人は、
「別に良いけど、優等生の和花に俺が教えられる事なんてそんなに無いと思うけどな」
悠人はスマホから目を離して和花の方を観てそう答えると。
「そんな事はありません、確かに学業の成績は私の方が上ですが」
「……随分とハッキリ言うんだな」
悠人が苦笑いを浮かべながらそう呟くと。
「事実ですから、でも、そんな私でも数学の成績だけは兄さんには勝てません、幾ら得意科目とはいえ毎回満点を取れるなんて兄さんは本当に凄いと思いますよ」
和花はそう言って悠人の事を褒めてくれたのだが。
「それを言うのなら、苦手科目なのに毎回90点近い点数を取り続けられている和花の方がよっぽど凄いと思うぞ」
悠人は妹に向けてそう突っ込みを入れると。
「それは私が数学で分からない所があった時、兄さんがいつも丁寧に教えてくれるからです、だから兄さん」
そこまで言うと、和花は一度言葉を切ってから。
「今回もよろしくお願いします、これでも私は兄さんの事をとても頼りにしていますから」
和花は可愛らしい声でそうお願いをして来たので。
「可愛い妹に頼られたら兄さんとして期待に応えない訳にはいかないな、直ぐにゲームを終わらせるから和花は準備をして待っていてくれ」
ゲームを進めながら悠人が和花に向けてそう言うと。
「分かりました、よろしくお願いします兄さん」
そう言って和花は数学の宿題を取りに自分の部屋に戻った。
その後、ゲームを終えた悠人はベッドから起きて、部屋の真ん中に置いてある机の前に座っている和花の隣に座ると。
「それじゃあ兄さん、私は数学の宿題をして何処か分からない場所があれば質問をさせて貰いますね」
和花はそう言ったので。
「ああ、分かったよ」
悠人はそう返事をすると、和花は数学のプリントをファイルから取り出し、シャーペンを手に取ると静かに課題をやり始めた。
そして、悠人はというと和花が勉強をしている間は特にやる事も無いので、スマホを開いてSNSを見始めたのだが。
「……」
悠人はチラリと隣に居る和花の姿を観た。
今は8月で朝からとても暑いので、和花は半袖ワンピースに短めのスカートという、かなり涼しそうな格好をしているのだが。
そのせいで悠人からは和花の細くて白い腕や魅惑的な太ももが見えていて、悠人の視線はどうしても和花の柔らかそうな肌に吸い込まれそうになるのだが。
(いや、駄目だ!! 幾ら和花が可愛いといっても相手は妹だぞ、そんな邪な眼で見ていい訳ないだろ!!)
心の中でそう思い、悠人は押し寄せて来る欲望を何とか必死に抑え込んで視線をスマホに向けていると。
「ところで兄さん」
課題をする手を止めて和花がそう話しかけて来たので。
「えっ!? ああ、どうかしたか和花?」
悠人が少し慌ててそう答えると。
「えっと、兄さんは夏休みの宿題をしなくても良いのですか?」
痛い所を和花に突かれてしまった。
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