第3話 義妹の決意 

 母の遺影に自分の決意を口にした後、和花はゆっくりと今の自分の気持ちを話し始めた。


「この決断をするのに私は何年も悩みました、お母さんはとっくの昔に気付いていたと思いますが、私は小学生の頃からずっと兄さんの事が好きでした。でも、妹である私が兄さんに告白をしてしまったら、断られるにしろ受け入れて貰えるにしろ兄さんには沢山の迷惑を掛けてしまう事になります、なので、いっそのこと兄さんが彼女さんを作ってくれたら、私はこの気持ちを諦める事が出来て本当の意味で兄さんの妹になれるかもしれないとそんな風に思う事もありました、でも」


 そこまで言って、和花は一度言葉を切ってから。


「駄目ですね、兄さんは高校生になっても彼女を作る様子は全くありませんし、それに聞いて下さい、お母さん、少し前に兄さんにどうして彼女を作らないのですかって聞いた事があるのですが、その時の兄さんは何と答えたと思いますか? 兄さんはそもそも彼女をどうやって作ったら良いか分からないと言っていましたし、それに……」


 そこまで言った後、和花は数秒間、時間を置いてから。


「俺の周りに居る女子の中だと和花が一番可愛いから無理に彼女が欲しいとは思わないって兄さんはそんな事を言ったのです……もう、そんな風に言われたら私が兄さんの彼女になるしかないって、そう思ってしまうのも仕方がないじゃないですか、私は大好きな兄さんと付き合えて兄さんは身近で一番可愛いと思っている私と付き合える、私たち二人にとってこれ以上ない程に幸せな未来です」


 少し口早にそう言ってから、和花は一息ついて。


「だからお母さん、私は夏休みの間、兄さんに今以上に好きになって貰えるように沢山アピールをしてから、最後は兄さんに告白をして兄さんの彼女になってみせます、だからお母さん、どうか私たちの事を見守っていて下さい」

 

 和花はそう言って仏壇の前から立ち上がった。そして、


「ふふっ、お義父さんが出張に行ったのが運の付きですね、兄さん、この夏休みの間に今以上に私の虜にしてみせるので覚悟しておいて下さいね」


 二階に居る兄の事を思いながら和花はそんな決意を口にした。

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