第2話 朝食

 その後、悠人は着替えるからと言って和花に部屋から出て行って貰うと。


 悠人はパジャマから私服に着替えると、眼鏡を掛けてから自室を出て階段を降りて一階にあるダイニングへと向かった。


 そして、悠人がダイニングに入ると。


「あっ兄さん、今朝ご飯の準備をしているので少し待っていて下さい」


 隣のキッチンにいた和花が悠人の方を観てそう言ったので。


「ああ、分かった……なあ、和花」


「何ですか? 兄さん」


 悠人の言葉を聞いて、和花がそう聞いて来たので。


「家事でも他の事でも俺に出来る事があれば遠慮なく言うんだぞ」


 悠人がそんな事を言うと。


「もう、急にどうしたのですか兄さん、私は今日までずっと家事をして来たので今更困る様な事はありませんよ」


 和花はそんな返事をしたので。


「それはそうだけど、夏休みの間父さんは出張に出ていて家には俺たち二人しか居ないからな、俺じゃ父さんの代わりにはなれないけど、それでも俺はお前のお兄ちゃんだからな、何か困った事があれば遠慮なく俺を頼ってくれ……まあ、しっかり者の和花からしたら俺なんかじゃ頼りにならないかもしれないけどな」


 少し自虐を交えつつも悠人が和花に向けてそう言うと。


「ふふ、そうですね、確かに家事に関しては兄さんだと少し頼りないかもしれませんね、でも」


 そう言うと、和花は悠人の朝ご飯を持って来て机の上に置いた。そして、


「それ以外の事だと私は兄さんの事をとても頼りにしていますよ、何と言っても兄さんは私が困っていたら絶対に助けてくれる世界一かっこいい自慢のお兄ちゃんですから!!」


 嬉しそうな笑みを浮かべながら、和花はそんな事を言ったので。


「……そうか、そんな風に思ってくれているんなら兄として俺は嬉しいよ、ただ、和花」


「何ですか、兄さん?」


「えっと……何で俺の手を握っているんだ」


 自分の右手を両手でしっかりと握りしめている妹の顔を観ながら悠人はそう質問をすると。


「あっ、すみません兄さん、私なりの信頼の証だったんですが嫌でしたか?」


 少し不安そうな表情を浮かべて和花はそんな事を言ったので。


「いや、別に嫌ではないけど」


 和花から顔を逸らして悠人がそう答えると。


「そうですか、それなら良かったです」


 安心した様に微笑んで和花はそう言った。


 その後、十数秒経ってから和花は悠人の手から自分の両手を離すと。


「それでは兄さん、そろそろ朝ご飯を食べましょう」


 和花はそう言ったので。


「ああ、そうだな」


 悠人もそう言葉を返して、兄妹二人は雑談を交えつつ朝ご飯を食べ始めた。




 その後、朝食を食べ終えた悠人は二人分の皿洗いをしてから、冷蔵庫の中に入っていた飲み物を持って二階にある自室に戻って行った。


 そして、一方の和花はというと。


「……チーン」


 ダイニングを離れて床の間に行くと、一人の女性の写真が置かれた仏壇の前に座って静かに拝んでいた。そして、


「お母さん、今日から私と兄さんは夏休みを迎えました、そして夏休みの間お義父さんは出張先でお仕事を頑張ってくれているので、家では私と兄さんと二人で生活をする事になります」


 母の遺影に向けて和花は近況を説明し始めた。そして、


「……それでお母さん、私はようやく決意しました、この夏休みの間に私は兄さんに告白しようと思います!!」


 二階に居る兄には聞こえない様にいつもより少し小さい声で、それでもハッキリとした口調で和花は自分の決意を口にした。

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