世界一可愛い義妹のたった一つの欠点

向井数人

プロローグ 義妹の決意

第1話 義理の妹のたった一つの欠点

 藤崎悠人ふじさきゆうとには義理の妹が居る。


 頭が良くて料理が得意で家事も殆ど一人でこなしてくれていて、その上性格もよくて顔も滅茶苦茶可愛いという一見何の欠点も無い完璧な妹だ。


 そんな感じで悠人からすれば誰の前に出しても恥ずかしくない自慢の妹なのだが、そんな妹には一つだけ大きな欠点があった、何かというとそれは……




「…………」


 窓から差し込む朝日に照らされて悠人はゆっくりと目を開けた。


 そして、普段なら直ぐにベッドから出て学校へ行くための準備を始めないといけないのだが。


 今日から夏休みが始まった事を思い出し、まだ眠気も残っているからもうひと眠りしようかと悠人が再び目を閉じると。


「あら兄さん、折角起きたのにまた寝てしまうのですか?」


 直ぐ傍で聞きなれた可愛らしい声が聞こえたので悠人は再び目を開けて声のした方へ顔を向けてみると。


「おはようございます、兄さん」


 そこには悠人の義理の妹である藤崎和花ふじさきのどかが居た。


 綺麗な茶髪のロングヘアに少し童顔だがとても可愛い顔立ちをしていて。


 背は少し小柄だが胸は意外と大きくて中学生にしてはかなりスタイルの良い悠人の義理の妹は朝から嬉しそうな笑みを浮かべて寝起きの兄の顔を観ていて。


 そんな和花の顔を観て、相変わらず俺の妹は可愛いなと悠人は心の中でそう思いながらもそんな気持ちは一切口には出さず。


「……おはよう和花」


 悠人がぶっきら棒な口調でそう挨拶をすると。


「ええ、おはようございます兄さん」


 相変らず嬉しそうな笑みを浮かべたまま和花はそう挨拶を返して来た。


 そして、悠人は数秒間そんな笑顔を浮かべている妹の顔を少しの間ぼーとした表情で眺めていたのだが、時間が経つにつれて徐々に意識がはっきりとして来て。


「……なあ和花」


「何ですか? 兄さん」


「お前はどうして朝から俺の部屋に居るんだ?」


 悠人が当然の疑問をそう口にすると。


「どうしてと言われましても、そんなの兄さんの寝顔を観たいからに決まっているじゃないですか」


 和花はさも当然と言った様子でそんな事を言ったので、悠人は数秒間何を言おうか悩んだ後。


「俺の寝顔なんかを観た所でお前には何の得も無いだろ?」


 悠人がそんな事を言うと。


「そんな事はありませんよ、だって兄さんの寝顔を観ていて私はとても癒されましたから」


 和花は笑顔を浮かべたままそんな事を言ったので。


「……そうか」


 そう言って悠人は和花から顔を逸らした。すると、


「ふふ、そうやって照れている兄さんも可愛らしくて私は好きですよ」


 和花は再び悠人を困らせる様な事を言った。


 これが悠人の義理の妹の唯一の欠点、和花は超が付くほどのブラコンで兄である悠人の事が好きすぎて他の異性には全く興味が無く。


 事あるごとに和花はこんな風にストレートな好意を悠人に伝えて来るのだが。


 高校1年生という思春期真っ盛りの悠人からすれば、幾ら家族とはいえ血の繋がっていない年下の美少女から一日中好意を受け続けるのは中々理性が削られる行為である上。


 もし悠人が冗談で和花に告白をすれば、和花はその思いに応えてくれるかもしれない位には悠人の事を兄としても異性としても好いてくれていて、その事に関して悠人はとても嬉しいと内心思っているのだが。


 幾ら血の繋がりが無いとはいえ、家族としてそして何より兄として妹の好意に応える訳にはいかないと思っている悠人からすれば、今の日々は中々辛い状況なのだった。

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