第5話 電気街中心

さて、ちょっとだけ話に出た、電気街中心のことだ。

電気街中心とは、天狼星の町の中心街であるところの、

龍頭(リュウズ)電気街の、さらに中心、

いわゆるいろいろな物事のまとめがあるところだと思って欲しい。

大きな天狼星の町において、一応取り決めは必要で、

電気街中心の偉い方々、老頭(ロウズ)によって、

町のあり方がいつも議論されていたり、

あるいは、暮らしのあれこれが決められていたりしている。

いわゆる役所のようなものだと思って欲しい。


電気街中心に働いている、カミカゼという男がいる。

何かが飛びぬけているわけでもない、何かが早いわけでもない。

これも人名だと思って欲しい。

髪は後ろに撫で付けられていて、いわゆる灰色の背広を着こなしていて、背は高く、隙がない。

眼光は鋭いが、粥を目の前にするとふにゃりとなるのは、皆の知るところである。

カミカゼは町の暮らしを見てきては、上にそれを報告する役目を持っている。

電波のあり方、掃除は定期的に来ているか、暮らしの豊かさ、

様々の事柄をカミカゼはまとめて、

情報にしたり、あるいは会議で報告する。

たいてい電気街中心が動ければすぐに、暮らしに反映されるので、

カミカゼはありがたがられている。

カミカゼは人々の暮らしを良くするべく、

今日も町を歩き回り、書類に起こしている。


電気街中心で、珍しく人事の知らせの紙が張られた。

どうやら、会議の偉い方のあたりが少し変わったようだ。

老頭が変わるのは、しばらくなかったことだとカミカゼは思った。

カミカゼは、一応生真面目に名前を確認する。

クロック、タケトリ、チャイ、

この三人が、とりあえず次の会議からの老頭らしい。

文書を作るときに注意しないとなとカミカゼは思う。

それから、今までのようにすぐに暮らしに反映させていく仕組みを、

できれば残していきたいなと思う。

今度の三人はそのあたり大丈夫だろうか。


カミカゼは掲示板を離れ、机の書類を片付けようと思い立つ。

町の暮らしは悪くなっているわけではないが、

不満や改善点はいつもある。

それを解決していくことで、この町がよくなっていくことを、カミカゼは信じている。

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