第4話 ガラクタの植物園

ガラクタは、図鑑を作っている。

ガラクタとは、一応人名だ。

猫背の青年で、いつも白衣。髪はぼさぼさ、血色は良くなくやせている。

みなりを整えれば美形だが、整えていないので、ちょっと残念だ。

ガラクタは、植物の図鑑を作っている学者だ。

天狼星の町には、時折新種が根を張ることがある。

植物学者のガラクタでも知らない、新種だ。

そういった、町特有の新種を集めて、

ガラクタは、育てたり記したり、膨大な資料をまとめたりしている。

もっとも、町自体に植物は少ない。

あっても、高い窓から破棄されてしまうのが、ほとんどではあるけれど、

ガラクタはそんな植物を集めて、天狼星の町の図鑑を作っている。


ガラクタは、小さな部屋と、ちょっとだけ植物園らしいものを持っている。

電気街中心から部屋を借りるのも厄介だったが、

この高さまで水を運ぶのも一苦労だ。

もっと下の階を借りればよかったと思わないでもないが、

今度は書物を運ぶのが厄介だ。

ガラクタの植物書物は膨大な数で、ガラクタ自身の作り出した資料もあるから、

おいそれと頼むわけにもいかない。

だったら高さと水は、電力で運ぶことにして、ここを研究所としよう、

ガラクタなりに覚悟をして、ガラクタ植物園ができたというわけだ。


ガラクタは、天狼星の町では変わり者ではあるが、

ガラクタの未完成ではあるけれども出版した図鑑は、

町の外で話題となり、ひそかに売れているらしい。

銭屋のゼニという少年が定期的に、ガラクタの預金を告げていくけれども、

ガラクタは目下、植物園を維持することしか考えていない。

それだけの予算があれば、ガラクタ自身はどうにかなると思っている。

ちなみに銭屋とは、入り組んだ天狼星の町で、

いわゆる銀行に近いことを出張でしてくれると思って欲しい。

ガラクタのように部屋から外に出ない人間には、

銭屋の出張はありがたいものなのである。


今日もゼニ少年が呆れ顔でやってきて、

預金額のメモを更新していった。

ガラクタに配給される電気はほとんど植物園に使っているから、

ガラクタの生活は少々不便だ。

でも、ガラクタはそれ以上に植物が好きで、でも、その感情をなんと言うのかまでは、

ガラクタはちょっとわからない。

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