第12話 エリート課長、孫権と共に立つ

呂蒙から添え状をもらい、孫権の元へ到着した伊籍。

呂蒙との舌戦でヒートアップした課長の顔にも疲れが見える。だがしかし、ここまで来て「あ、すみません。ダメでした(テヘペロ)」というわけには絶対にいかない。君主:孫権仲謀との絶対に負けられない対話が始まる。


孫権『貴公が伊籍殿か。前に一度こちらへ参られたことがあろう。変わりなく過ごされていたかな。』

伊籍『大王への拝謁を賜り、恐懼の極みにございます。本日は前都督、魯粛殿の言葉を持参いたしました。』

孫権『子敬が遺してくれた言葉か・・・。【帝位への道標】、死してなお私に皇帝になれと言うのか、子敬よ。』

伊籍『ご生前にすでに帝位についてお話しされておられましたか。』

孫権『かしこまった話ではないがな。かつて子敬に、お前の労に報いるに私が馬上の子敬に手を貸し馬から降りるのを手伝ってやったら、お前はそれで功を労ったとしてくれるか?と問うたら、子敬は【皇帝になって賓客を招く馬車で迎えに来たら労ったことにしますよ】と答えおった。今でもあの時の子敬の顔を忘れることはない。・・・・・・伊籍殿、呂蒙からの添え状を見た。子敬は常々貴国と良好な関係を維持するよう言い遺しておった。が、貴国はそれを踏みにじるばかりか、私からの申し出さえも揶揄し、侮辱の言葉を返してきた。これを笑い飛ばすことは一国の主としてできるものではない。』

伊籍『返す言葉もございませぬ。』

孫権『一つ尋ねる。子敬は貴国ではどのような人物であったか。』

伊籍『軍師諸葛孔明が友と呼ばずにはおられぬほどの御仁にございます。昼夜を問わず国の未来を語り、その言も動も堂々としておられました。智も武も勇も兼ね備えた稀代の名将といえましょう。貴国と我が国の架け橋として、魯粛殿の存在以上のものはございません。』

孫権『であれば良い。子敬に免じ、此度だけは貴国の申し出を受けよう。だが二度があると思うな。子敬の名をもって約する以上、名を汚すような真似は私が許さん。たとえ魏の曹操に付け入る隙を与えることになろうと、子敬の名を汚した罪は死をもって償ってもらう。』

伊籍『ははっ、肝に銘じましてございます。』

孫権『ところで伊籍殿はしばらく我が国に逗留されるのかな?』

伊籍『法の大枠が定まるまでが魯粛殿のご意思でございますれば、粉骨砕身務めさせていただく所存です。』

孫権『なお良し…だ。』


「孫権はな呂蒙が納得しとるなら、あとはどう格好つけるかや。自分を犬呼ばわりしとる国と同盟結ぶには口実が必要なんや。周りも納得する口実がな。『ワシが皇帝に成らなんだら、死んだ魯粛が無念やろ?魯粛が交渉しとった荊州を返すっちゅうなら、魯粛のためにも蜀との関係をもう一度見直したろうやないか。人質ならぬ城質も差し出す言うとるしな。まして法は国家百年の計とも言えるやろ。検討する価値は十分にあるで。』これなら周りもどうこう言わんやろ。軍を預かる呂蒙が反対せえへんなら、孫権自身は自分のメンツさえ立ててもろうたら反対することは無いとみてええと思うで。」


仮に魏と組み皇帝になったとしても、先は短い。であれば…と呉との交渉はまとまった。ここまでくれば課長の次のシナリオは孔明と呂蒙の軍事トップ会談、すなわち4拠点時間差攻略の作戦会談である。主攻は樊城と襄陽。助攻もしくは陽動が長安と徐州である。どこに誰を向かわせ、曹操と司馬懿を出し抜くのか。関羽の運命はすぐそこまで覆りかけている。この【詰め】さえ間違わなければ…だが。




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