第6話 エリート課長、陸遜を突破する

伊籍に孔明の書簡を持たせ呂蒙の元へ向かわせる。病気を装い陸遜を派遣してきた呂蒙は果たして伊籍に会うのであろうか…


「呂蒙が会うか…か。そうやなぁ、まず陸遜に会うことになるかもな。呂蒙なら『まずお主が会い、様子を見よ』って言いそうやしな。陸遜を説き伏せられねば呂蒙に辿り着けず、呂蒙を説き伏せられねば孫権には会えんやろな。魯粛に関する書簡を携えてきた使者を無下にはせんやろし、ひとまず会うことはできる。会えればあとは伊籍の実力や。」


伊籍の実力や!って課長、それは他力本願過ぎるでしょう。伊籍は何を言えば陸遜、呂蒙を説き伏せることができるでしょうか?


「『おお!あなたが陸遜殿でございますか!お初にお目にかかります。私は伊籍と申します。本日は軍師諸葛孔明から書を預かり、大王様へのお目通りをお願いするものでございます。この書は貴国の魯粛殿が諸葛孔明に対しお話しになられたものをまとめたものでございます。私のような小者がこのような大役を仰せつかり、陸遜殿を前にして足が震えてございます。陸遜殿の風格は名だたる将のそれでござりますれば、私はただ跪きお願いするのみです。』って言われたら陸遜は何と答える?」


ちょっとへりくだりすぎて気味が悪いですね。気味が悪いので追い返したくなります。


「せやろ?気味が悪いやろ?関羽はこれを陸遜にやられとるんや。で、なんやこいつは小心者やのーと陸遜を侮ってしまったんやな。それと同じことをやれば、賢いと言われる陸遜や、きっと『あ!バレてる』と思わずにはおられんやろ。全部見透かされとるんや、気まずいでー。『いえいえ、蜀の名士と呼ばれる伊籍殿とお会いできるとは光栄でございます』とか言いよるで、絶対。そしてお互い苦笑いや(笑)あとは腹の読み合いやな。陸遜からは『この書を我が君にお渡しすればご用向きは果たせられますかな』なんて意地悪を言われるやろうけど、『私自身も書の一部にございますれば大王様へのお目通りをお願いいたします』と返せば何も言えんようになるやろ。」


一人二役を演じる課長、おもろい。そして妙に説得力がある。自分がやったことをやり返され、書簡を預かれば良いでしょ?と意地悪をすれば自分も書簡の一部だと返される。賢い者ならば感心と同時に赤面してしまいそうだ。陸遜も部下なのでここはやはり上司である呂蒙に報告せざるを得ないだろうな。第一関門突破…だな。


「陸遜が『都督を呼んで参るがゆえ、しばしこちらで待たれよ』と言うのも時間の問題や。そうなれば次は呂蒙やな。呂蒙はバリバリの武闘派なイメージやさかい、正攻法でいくで。」


次は呂蒙と伊籍の一人二役だな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る