デイサービスと実習
ブルマでサッカーをしてから約一週間。他クラス、他学年などからブルマを履く変態と呼ばれ慣れてきた頃。僕たち介護科の方では来週の月曜日から始まる介護実習に向けての話と必要準備を進めていた。
実習先はある程度自宅から近いところに行く。そのため、仲間との集合時間も合わせて、みんなで施設に入ることになっている。
『集合時間と場所の確認はこれでいいな。当日も忘れ物とかないようにな』
カントがこういう時に仕切ってくれるから助かる。
僕も忘れ物とかしないようにしよう。
『あー。あと涼。おまえ絶対ゲームとか余計なもの持ってくるなよ?』
『失礼な。余計なものはもっていかないよ!』
『ならいいが。俺たちに迷惑かけるなよ』
全くもって失礼だ。実習のときは普段より気合を入れて取り組むよ。
『じゃあ他に質問がないなら当日みんなよろしくな。三日間みんなで乗り切ろうぜ!』
ーあれから、一週間たって今日からデイサービス実習だ。集合時間に余裕を持って到着できた。
他のみんなもちらほら集まってきたな。
『よー。みんな揃ってるな。それじゃあ、みんなこれから施設に入るからな。失礼な内容にしろよ?』
『おはようございます。津久理高校から来ました。介護科の者です。今日から三日間実習よろしくお願い致します。』
『はい。おはようございます。君たちが実習生だね。僕はここのデイサービスの介護主任の酒井です。今日からよろしくね。とりあえず、更衣室で実習着に着替えてね』
メンバーは男子しかいないから同じ更衣室だ。各々着替えてる。
『なんか、実習着を着て施設にいると本当に実習に来たんだなって実感するよな』
カントが着替えながら言ってる。
『だね。学校内での実習とは違うから頑張らないとね』
僕も実習の実感を感じながら気を張るようにした。
実習着に着替えおわってメモ帳、筆記用具を持って、酒井さんの所へ向かう。
『実習生5名準備終わりました』
実習のリーダーのエイタが酒井さんに報告する。
『準備終わったね。じゃあとりあえずデイサービスの中から説明しようか』
酒井さんからデイサービスの施設内の説明を受ける。
『デイサービスの規模によって受け入れる利用者は変わってきます。うちでは一日に十五人の利用者が来ます。なので介護士は一日四人います。他にもケアマネージャーや事務員さん、利用者さんの食事を作る調理師もいます。多くの職種の職員さんが働いてます。みなさんは三日間介護士と一緒に行動することになりますが、多くの職種の方が一緒に働いてることを忘れないで下さい』
酒井さんが言っていた他職種の職員が多くいる。介護士だけではデイサービスだけでなく、他の施設でも運営は出来ない。だから、他職種との協力は不可欠だ。
『今日は僕が皆さんの指導役です。分からないことは聞いて下さい。それでは、これから利用者さんのいるフロアに行きますが、皆さは実習生であることを忘れず、言葉遣いには気をつけて下さいね』
『はい。お願いします』
『ここが利用者さんが一日過ごすフロアです。利用者さん同士の会話、囲碁、将棋で遊んだり、介護士が付き添いで入浴したりします。食事もここのフロアで摂ります』
酒井さんに案内されたフロアは学校の教室三つ分くらいの広さがある。中心に長テーブルがいくつか並べており、何人かの利用者さんが座って会話をしてる。角の方には小さいソファとテーブルが置いてあり外を眺めることができる。そこでも利用者さんは会話をしたり、将棋をしていた。
『それで、こっちが脱衣所と入浴室です。男女別に入ります』
脱衣所はかなり広い。銭湯のような広さがあるけど中はスッキリしてる。
浴室は、一般家庭の浴室にあるシャワー、蛇口があるところは少ない。代わりに見慣れない機械が多い』
『介護施設では一般家庭にあるような浴室とは変わって、皆さんが見慣れない機械があると思います。こっちの、ブランコみたいに天井から吊るされてる機械がチェアー浴と言います。歩行が難しい方が利用します。操作方法は入浴の時しますね』
教科書で載っているチェアー浴とは形が違うけど同じ部類なんだろう。浴室内は床が濡れている為転倒リスクがどうしても大きくなる。歩行が難しい方に適している浴室になってる。
『それでこっちの大きい浴室が、機械浴と言われるものです』
大きい長方形の浴室が、機械浴。利用者は横になりながら浴槽内に入ることができ、ジェットバスもついてるので利用者も身体の負担が少なくなるようになっている。歩行困難、座位が保てない方は入浴をすることが困難なことが多いので機械浴はデイサービスだけでなく、老人ホーム、病院でも採用されている。
『うちのデイサービスではこれらの設備を使用して、利用者さんが一日快適に安全に過ごせるように取り組んでます。それでは、みなさんはこれから利用者さんの所に行って、コミュニケーションを取ってもらいます。利用者さんの話をしっかり聞いて下さいね』
『では高尾君は、こちらの太田さんとお話しはて下さい』
僕の担当する方は、女性の利用者さんの太田さんだ。
『あら。随分若い子が入ったんだね。酒井さん』
『太田さん。この子は、津久理高校の学生さんなんです。今、実習でここに来てるので、太田さんも色々教えてあげて下さい』
『あらそうなの。こっちに座ってお話ししましょ』
『はい。高尾と言います。よろしくお願いします』
『あーそうそう。高尾さん。少し暑いからエモンカケ持ってきてもらえるかな?』
『はい。エモンカケですね。持ってきますね』
・・・エモンカケってなんだ?
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