家庭科と体育と
チャイムギリギリになって自分たちのクラスに戻ってきた。次の授業は確か家庭科だったな。
ここでうちの学校の介護科の授業について話をしよう。
福祉科は普通科と違って、一般授業が明らかに少ない。数学、英語、国語は一年生で終わる。二年生からは、3教科に変わって介護の授業が増える。例えば、社会福祉の基本、心と体(認知症、発達と老化)など細かい単位が増えてくる。
二年間で覚えるとなると中々大変だから先生達も教えるのも大変だと思う。先輩達の話だと社会福祉の基本は特に覚える事が多く、法律とか年号、内容も多く出てくるから大変らしい。
僕も先輩達のように覚えられるか心配だな。
その中で、唯一家庭科があるのは介護福祉士としてだけでなく、生活に困らないようにするためのものだと思う。介護福祉士の中にはグループホーム(認知症対応型共同生活介護施設)で勤務する人もいるそこでは、主に介護士が利用者の食事を作ることになる。だから、料理や手芸などの知識と技術が必要なのだと思う。
『来週は各グループで料理を作ってもらいます。介護科のみなさんは、特に卒業してからも大切なので真面目に取り組んでくださいね』
授業の終わりの間近に家庭科の先生がそう言っていた。僕は家でも料理はするから多少は自信がある。
『それでは、今日の授業はこれで終わります』
『ふー。やっと授業終わったー。次の授業なんだっけ?』
僕の後ろに座るカントが話しかけてきた。
『次は体育だよ。六組と合同でサッカーやるって言ってた気がする』
『サッカーか。いいね。早く着替えて行くか』
『そうだね。さてと、体操着は、、、と』
アレ?体操着がない!?なんでだ?
『ねーカント僕の体操着知らない?見当たらないんだよね』
『体操着?お前確か花見の時体操着に着替えて、水を浴びて遊んでたじゃないか』
そうだったー!!花見の時遊んでて濡らしちゃったんだった。
『ねーカント。君の体操着貸してくれないか?』
『バカ。俺の体操着貸したら、俺が体育出来ないじゃんか』
『そんなこと言うなよ。僕たち親友だろ?』
カントの体操着に手を出した。
ーーーあいつ、グーで殴ってくるとは。親友とは。なんだ?
仕方ない。他のクラスに聞いてみるか。
とりあえず一組に行ってみるか。一組には、中学の時からの友人がいるから聞いてみよう。
『石井ー。体操着貸してくれ』
『おー涼。体操着か。今日うちのクラス体育ないから持ってないんだよね』
なんてことだ。体操着がないのか。
『あ、これならあるぞ』
石井が紙袋を渡してくれた。
『なんだ、体操着あるんじゃないか、ありがとう』
やっぱり持つべきものは友人だ。サイズは合うかな?
『ほら、涼早く行かないと間に合わないぞ。俺は教室から応援してるからな』
『応援?どう言うこと?』
まぁ、いいか。さて教室に戻って着替えて行くか。
『小川。お前は高校の体育を何だと思ってるんだ?ふざけてるのか?』
菅原先生に怒られた。菅原先生はうちの高校のボート部の顧問だ。筋肉ムキムキでイカつい先生で恐れらている。他の生徒からゴリ先生なんて呼ばれてる。
なんで僕が怒られてるのかは友人から借りた体操着のせいだ。
白色のTシャツに胸デカデカと名前まで書かれてる。これはまだいい。
けどズボン。いや、これはズボンじゃない。ブルマだよ。こんな時代にブルマなんて見たこともないよ。ましたやはいてるのが男子高校生。
『す、すみません。体操着汚してしまってこれしかなかったので』
『はー。介護科の小川は本当にバカだったとはな。介護科の先生も大変だな』
僕の悪い噂が職員室にまで届いてるとは。
『先生ー!僕、授業は真面目に受けるつもりです!』
『あー、もうそれでいいなら受けてよし』
ブルマでサッカーをする男子高校生なんているのだろうか。
『涼。お前やっぱりバカだ。ブルマ履くとは思わなかった』
カントが笑いながら言ってきた。体操着ないんだから仕方ないじゃないか。
介護科の七組は、僕たちの行動にはあまり反応がない。見慣れたのかな?
六組にはすごい笑われた。他の人たちに笑われるのも慣れてきている自分が情けない。
やっと、体育も終わった。次は昼食だ。カント達と学者に行くかな。
学食の中から、他の生徒達の会話などが聞こえてくる。賑やかでいいな。
僕たちも学食の中に入る。
それまで、みんな楽しそうに話をしてたのに僕たちが学食に入ったらみんな一斉にコチラを見てコソコソと話をしている。クスクス笑ってる人たちもいる。
なんだろ?僕たち何かしたかな?まぁいいか。とりあえず注文しよう。
『おばちゃん。日替わり定食一つ』
『おや、あんた、さっきブルマでサッカーしてた子じゃないか?久しぶりにブルマなんて見たよ。お礼にご飯大盛りにしてあげるね』
学食のおばちゃんにまでさっきのことが広まってるってことは、みんな見てたのか!?
しばらくの間、学校内では僕のことをブルマを履くバカと呼ばれた。
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