13 “シルバースカイエクスプレス”食堂車の名物メニュー

 11:50、そろそろお腹が空く頃です。食堂車に行ってみましょう。


 シルバースカイエクスプレスの食堂車は、列車のほぼ真ん中、4号車に連結されています。正午前のこの時間、食堂車は混雑していて、多くの人で賑わっています。順番待ちの列が隣のラウンジ車まで伸びていました。


 この列車の食堂車では、本格的なメニューが食べられると評判です。


 中でも人気は『特製ビーフシチュー』。ノイスターレ王国産の上質な牛肉を使用した、シルバースカイエクスプレス自慢のビーフシチューで、深い味わいの濃厚なスープとともに、季節の野菜がたっぷりと添えられます。


 その他にも、アルティオス大陸の風味豊かなハーブやスパイスを使ったスパイシーパスタや、ローズウッドのバラの花びらを添えたバラサラダ、エンチャントの森で収穫されたハーブを使った香り高いハーブティーなど、ノイスターレ王国の味を存分に味わうことができます。


 順番待ちをしている人たちは、空腹に耐えながらも、ここで味わえる最高級の食事を楽しみに待っています。



 食堂車の隣にはラウンジ車があります。


 ラウンジ車の一角には喫茶カウンターがあり、ここでドリンクや軽食を購入することもできます。


 お昼時の今は食堂車の順番待ちをする人、食後のコーヒータイムを楽しむ人の他に、簡単な昼食を食べる人も見かけました。


 反対側の一角には、魔法によって自動演奏されるピアノが置かれています。


 その時々に応じて最適なBGMを流し、車内での一時をより充実したものにしています。


 いま、演奏されているのは、ノイスターレ王国を代表する魔法音楽家、ヴィクトル・フロストウィンドによって作曲された『氷雪の調べ(Ice Serenade)』です。


 この曲は穏やかなピアノの旋律と、氷の結晶が光り輝くかのような音色のシンセサイザーによって構成され、雪山の美しさと静けさを表現しています。


 この曲が流れる、ということは車窓からはあの山々が見えるはずです。


 前に行った永遠の雪の都、エターナルスノーフォレスト、それを取り囲む高い山々、エターナルスノーマウンテンズが車窓に現れました。


 標高3000m級の山々が連なる姿は、雄大で小さなことなど忘れさせてくれます。列車が山々の麓に近づくにつれて、まるで銀の帯が地平線に広がっているかのように、白銀の山々が視界に入ってきます。山々は高くそびえ立ち、雪と氷で覆われた頂上が空に向かって誇示されています。


 太陽の光が山々に反射し、まばゆい光を放ちます。その輝きはまるで宝石のようで、景色を魅力的に彩ります。山々の稜線はシャープで、その一部は氷の剣のように尖っています。


 一方でその手前には夏の日差しを浴びている穀倉地帯も見えます。


 真っ白な雪山と、緑の夏草、ここでしか見れないこの対比の車窓は、見た人の心にいつまでも残ることでしょう。

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