14 セレンドル渓谷

 12:30、列車は長いトンネルに入ると、速度を落としました。そして、トンネルを抜けると、そこには絶景が待っていました。


 ここは、アウローラ川随一の景勝地、セレンドル渓谷です。

 この渓谷は豊かな自然と美しい景色で知られ、アウローラ川の清流と樹木が訪れる人を魅了します。


 渓谷全体が国立公園に指定され、過度な開発は禁止されています。

 ノーブルハーバーとシルバーレーベンを最速で結ぶシルバースカイエクスプレスも、ここでは川沿いの線路をゆっくりと走ります。


 時間が惜しいビジネスマンにとって、ここでの減速は無駄?

 いいえ、普段忙しいからこそ、能動的な息抜きも大切であることは、一流になるほど心得ています。

 ここではパソコンを閉じて、ゆったりと景色を眺めることにしましょう。



 12:38、ベルクハイム駅に停車しました。


 セレンドル渓谷には、魅力的な街がいくつかあります。その中でも中心的な存在が、ここベルクハイム。


 この街は長い歴史を持ち、街の中心部には中世の建築物が残り、石畳の通りや古代の教会が街の風情を彩ります。


 そんな中でも一際目を引くのがベルクハイム城。美しい中庭と古代の建築様式で建てられた壮麗な城は、今では歴史博物館としてこの城と街が歩んできた歴史を紹介しています。



 ベルクハイム駅を出ると、列車はセレンドル渓谷沿いの線路をゆっくり走ります。

 再び美しい景色が現れました。ゆったりと流れる大河、美しい鳥の舞い、色とりどりに彩られた花々、今は手を止めて、この自然が作り出した最高の芸術をゆっくり見ましょう。


 再び、長いトンネルに入ります。

 トンネルには乗客たちの顔が映ります。この旅を通してさまざまな経験をしてきた表情です。


 列車に乗って旅に出る人もいれば、旅を終えて列車で帰ってくる人もいます。


 私たちもそろそろこの旅に終止符を打ちましょう。この長いトンネルを抜ければ、シルバースカイエクスプレスはほどなく終点のシルバーレーベン中央駅に到着します。


 たくさんの乗客たちの思いを乗せて、列車はトンネルを駆け抜けていきました。

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