第56話 ティーパーティー
どうしてこうなった……
「いやぁ〜僕たちのウサちゃん!探してたんだよォ〜!どっこ行ってたんだ全くっ!ヒック」
今俺たちは、妙な帽子を被らされ、茶会の席に座らされ、紅茶やら菓子やらを振る舞われている。
ウサギはこの2人の妖怪のペットなのか……?
だが捜してたなんて絶対嘘だと思う。
茶を飲みすぎて酔っ払いのようになっている。
「おっ!この人もしや!坂東昴じゃないかあ?!ヒック」
「うっひゃひゃ!本当だ!あの有名な坂東昴じゃー!
バンザーイ!」
「こりゃあ尚更パーティーしないと!カンパーイ!」
うわ……勘弁してくれ。
なんなんだよ、マジでこいつら……。
さっきから歌も音楽もうるさい……
どうすればこの幻覚から目が覚めるんだ!
「ささ、お前さんもお茶をどーぞ!
おっといけない!もっと美しいカップを!おーい!猫又!カップだカップ!」
「ティーカップだな河童!お〜いティーカーーーップ!
おやこんな目の前にあったウヒャヒャヒャヒャ」
やっべぇ……すっげーイカレた奴ら……
絶対幻覚、絶対幻聴。
「ほらほらパーティーでは飲まなきゃ!ほらミルクたっぷり!」
「なんのパーティーだよ……こんなとこで」
「何でもない日のパーティーに決まってるじゃないか!」
「ほんとだな、全く何を言ってるんだか!ひゃっはー!」
「はぁ?何でもない日?」
「誕生日は1年に1度きり!そうとも たったの1回さ!
でもなんでもない日は364日って~ことは〜?
年がら年中お祭りってことさ!バンザーイ!」
「そのとぉおおり!!何でもない日バンザーイ!
ところで君の何でもない日はいつだい?」
お茶を注ぎながらわけのわからないことを言われ、俺は疲れ果てているせいか、その水面を見ながらボーッと呟いた。
「誕生日じゃない日なら……今日かな……」
「今日?!」
「今日だとっ!?」
受け取ろうとしたカップを引ったくりつつ2人の妖怪は驚きの声を上げた。
なにがそんなに驚くのか甚だ疑問だ。
「いやはや奇遇だね!私も今日がなんでもない日なのだよ」
「世間は狭いねぇ。僕もなのだよ。うひゃひゃっ」
また歌を歌い楽器を演奏し始めバカ騒ぎがはじまった。
よくもまぁこんな場所でそんなに楽しそうにはしゃぐことができるもんだ。
早くこの幻覚幻聴から覚めないと……!!
こんな神の山奥で、霧に囲まれながら豪勢なティーパーティーなんてしている奴……いるわけがないんだから!
「おやおや〜進んでないね進んでないね〜っ!
頭がお疲れかな〜?
コンコン……ん?大変だ!こいつぁ頭が空っぽだ!!」
「そっそりゃあ大変だっ!!
お砂糖だお砂糖!甘〜い砂糖が足りないよホラ持ってきて〜!って、ああ!また目の前に!うひゃひゃ!」
「おおっ?こちらの狐さんは食欲旺盛!
まるで獣のようにバリバリといっちゃってるねぇ〜!
間違えて私たちも食わないでくれよっ?HAHAHAっ!」
この場を楽しんでいる?のはデンだけのようだ。
確かに腹は減っているが……
これは幻覚なはず……だから気がついた時にはその辺の木の枝や土を食べてましたなんてことになりかねないので手が出せない。
「ヤバいな本当に……いよいよヤバい……
ここの森……いろんな意味でこんなに厳しかったなんて……」
完全に舐めてた……
このままじゃ何日かかっても何ヶ月かかってもアマテラスの所になんか辿り着けないだろう!
ほかの皆は大丈夫だろうか……?
「なぁ、虎太郎……こた……!!!!」
ズズズーとすました顔して紅茶を啜っている虎太郎に俺は驚愕する。
「おい!ダメだよ飲んじゃ!!」
「あ?なんでだよ、喉乾きすぎてんだよ俺は」
「これ本当は泥水かもしれないだろ!」
俺はバッと立ち上がり、勝手に被らされていた帽子を勢いよく取った。
「君たちがなんなのか知らないけど!俺らは今すぐー」
「席替えだ席替え!綺麗な茶碗を!」
「そうだ席替えだ!ほら君はここ!あんたはここ!」
ダメだ、この調子じゃ話すら進まない……!
「それで?なんだね話とはー?ごくごく」
「そんな思い詰めた顔してどーしたんだー?
言ってごらんなさい、ヒック……」
飲んだり食べたりしながら聞く気があるのかないのか全く分からない行動を取られ、イライラしてしまう。
「アマテラス様に会いに行かなきゃなんないんだよ!だからこんなとこでティーパーティーなんか優雅にやってる余裕ないわけ!
だからもう行くよ!……ほら、虎太郎、デン、立て!」
「なななな!今のを聞いたか!
岩戸のクイーンに会いに行くんだと!」
「なんやと
ヒャッハーーー!こりゃもっと茶を飲むしかねえっ!」
「………?」
なんだよその、ハートの女王みたいな言い方……
「いや、お茶はもういいからさぁ……頼むから行き方を教えてくれ。アマテ…いや、岩戸の女王までの……」
「まぁまぁまぁまぁ座って座って!
ほら茶を飲めば少しはその空っぽの頭に糖分が入る!」
河童に無理やり座らされ、猫又に大量の砂糖を盛られた。
茶に溶けきれなくて白い粉がカップから溢れ出る。
「要らないってばだから!!いい加減にしろよ!」
「茶を振舞ってやったのにその言い方はないよなぁ?河童」
「だよなぁ猫又。こんな失礼な奴、女王に首を跳ねられるだろうな」
俺はその静かなやりとりにゾクッと悪寒がした。
「そもそもねぇお前さんよ、岩戸のクイーンは出てこないよ?」
「そうともさ。行っても意味無いのさ」
「……三種の神器があっても?」
「そうともそうとも。そもそもそんなもんは、ただの女王の時間稼ぎ目的さっ。」
「えっ、そうなのか?!じゃ、じゃあ一体どうしたら……」
「諦めてこーしてティーパーティーを楽しむんだな!
ほら!新しい茶葉を!新しいクッキーも!」
「そうだ!そろそろホットチョコレートなんてどうだろう?!美味いぞ?ウヒャヒャヒャヒャ」
「……もしかしてお前らも……アマテラス様に会う目的だったのか?」
妖怪2名は一瞬手を止め、そしてまた動かして笑った。
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