第47話 大学食堂にて会議



次の日………


俺らは大学内の学食にて一旦落ち合った。


しかし……

周りの目が凄すぎる……!


そりゃあそうだろう。

なんてたって、こっちには大学一目立っているギャルとイケメン、両方ともいるんだからな。


そして、結構普通のモブっぽい俺と和巳と、剣道部の有名最強女子、駒子。


まぁとにかく周りの目からは、

なにあのグループの組み合わせ?

なんでユーゴくんとギャルが、あのメンバーと一緒にいるの?

いやそもそもなんでユーゴくんとギャルが一緒にいるの?

みたいな感じなのがヒシヒシと伝わってくるのだ。


近寄ろうにも近づけないようだ。


「じゃあ改めて自己紹介からしようか!皆!」


やはりこういう場を取り仕切るのは和巳らしい。

なんだかんだギャルが苦手とはいえ1度仲間になってしまえば関係ないみたいだ。



「まずは僕から!経済学部の1年!佐渡和巳さわたりかずみ

渡辺綱の末裔らしいです!

趣味は爬虫類!好きな食べ物はカレー!嫌いな食べ物は鰻!僕のペットの蛇っぽくて絶対ダメなんだ。

皆でGOJUを盛り上げたいと思ってる!よろしくね☆」



盛り上げたいって……

アイドルグループでもバンドグループでもねぇんだぞ……

と、俺はため息を吐く。



「お、俺は……坂東昴ばんどうすばる

経済学部1年。えーと、坂上田村麻呂の末裔……。

趣味は……釣り。好きな食べ物は寿司で、嫌いな食べ物はチョコミント系。宜しく……」


「……私は、文学部1年、安達駒子あだちこまこ。趣味は剣道。安倍晴明の末裔。

好きな食べ物は肉……とくに牛ハラミ。嫌いな食べ物は……ポテトフライ。」


「ワタシはユーゴ・メリン!フランスから来ました!国際学部2年生!

ワタシの祖先はランカスターメリンです!

趣味は語学を学ぶことで、好物はダックワーズ、苦手なモノはオイスター。

皆さんドウゾヨロシク!」


「ウチは服咲葎ふくさきりつ

法学部3年。服部半蔵はっとりはんぞうが祖先よ。」



「「「えぇっ?!?!」」」



服部半蔵といえば、歴史上最も有名な忍者の頭領である。


まさかそんな人物の末裔だったとは……!


誰もが驚いた目になっている中、服咲は派手な弁当包みを広げながら何食わぬ顔で続ける。

ちなみに今日もとてつもなく派手だ。



「趣味はオシャレをすること♡

好物はオムライス、嫌いな物はパクチーよ」



そう言って開けたデコデコな弁当箱は、なんと可愛らしいオムライスにデコったおかずがキラキラと敷き詰められていた。

まさか弁当まで派手とは思わなかったため、俺らは目を丸くした。


これでいて……本当に服部半蔵の……?



「僕歴史書で読んだことあるよ!服部半蔵の伝記!

凄いね!やっぱり忍者だったなんてさ!りっちゃん!」



ピタリと服咲が固まり、

俺はビクッと焦りだしてしまった。


出たよ出たよ、人たらし和巳モード!

けどさすがに今回はダメだろ!



「ちょっ、和巳!

いきなりまたそんなアダ名つけて!失礼だろ!

仮にも先輩なんだからさ!」



恐る恐る服咲を見ると、服咲はボーッと手元の弁当を見つめながら、突然フッと笑った。


" りっちゃんは可愛いよ "


「……別にいーわよ。好きに呼べば?

大学になんて暇潰しに来てるだけだし」



服咲のその笑みは、何かを思い出しているような、どこか切なげなものに見えた。




「じゃあワタシもりっちゃんと呼びマス!」



「えぇ……マジか。俺はフツーに葎さんて呼ぶわ」



本当は葎先輩と呼ばなきゃだし、なんなら敬語も使わなきゃなんだけどな。

俺、昔から敬語苦手だし、神にすら敬語なんて使わないくらいだからな。ははは。



俺らは各々の昼食を食べ始めた。

俺は大学生になってから専ら買い弁か学食だ。

ついこないだまでは、妹が作ってくれる弁当だったから、その有難みが今になってようやくわかる。


でも……


「家族以外の人間と飯食うとか…初めてだわ……」


悪くないな、こういうの。

悪くないな、大学って。


なんとなく俺はずっと……こういうのに憧れていた気がする。



「私も……」


「え?」


あ、俺声に出てたのか…。


「私は…家族とも食べたことないから…」


駒子はいつもの真顔を貼り付けたまま、学食の親子丼を淡々と口に運ぶ。



「ホイ」


俺がコンビニの袋から菓子を取りだし、駒子の前に置いた。


「どうぶつグミ!いろんな動物入っててけっこーうまいんだぜ。」


驚いたように俺を見る駒子に笑って言った。


「これさぁ、昔よく駄菓子屋で爺ちゃんが買ってくれたんだよ。

親がいない俺らきょうだいを、爺ちゃんはしょっちゅう菓子買いに連れてってくれてさ。俺らも遠慮なんて全くせず、食いたいもん片っ端からバンバン買ってたわ。」



俺の脳裏に懐かしい記憶が蘇る。

親がいなくなってもそれは、楽しかった思い出の1つだ。


「今思うときっと爺ちゃんは、親のいない子供にどう対応していいか分からなくて…必死だったんだと思う。

もちろん菓子なんかじゃ埋まらないんだけど…

そのグミのアホみたいな動物の顔を見るとさ、どうにも笑っちゃって……そんな俺を見て爺ちゃんが安心したように涙ぐんでたのを覚えてるんだ。

それっから俺は、親がいようがいなかろうが、そばにいてくれる人の幸せだけは守らなきゃいけないって気付いた」



「……昴…」



" この役立たず!アンタがいればあの人は戻ってくると思ってたのに! "


首を吊っている母の無様な姿が駒子の脳裏に浮かんだ。



「優しいね、昴は……。」


駒子がフッと笑ってグミを手に取った瞬間、


ガッシャーーーン!!!!


「「「?!?!?!」」」


自分たちのテーブルの上に突然、

天井を突き破って何かが落ちてきた。



周りが騒然とし、

混乱状態の中バタバタと逃げていくものや、何が起きたのか興味を持ち恐る恐る近寄ってくる野次馬ですごい騒ぎになった。


咄嗟の勘が人一倍働くユーゴと葎が、俺らを庇ってくれたため、怪我をせずに済んだ。


俺らは急いで距離をとり、各々の武器を掴む。

目の前には、真っ二つに割れたテーブル、台無しになった俺らの飯で悲惨な状態になっている。


そして真ん中には、

なにやら動いているものがいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る