第44話 ランカスター
「では!ユーゴ先輩のGOJU入りを祝して!
かんぱーい!!!」
「か、かんぱい」
「かんぱい…」
「カンパーーーーィ!!
わぁこれずっとやってみたかったんデスー!」
ユーゴだけはハタチなのでビールを飲んでいる。
「っはぁ〜!さすがニッポンの生ビールオイシイですね!」
「せっかくなら日本酒とかにしてみたら?」
そう俺はすすめたものの……
またここか………と内心思っていた。
大学後、俺らはまた例の焼肉店『こころ』に来ていた。
駒子が昔バイトをしていた店だ。
「歓迎会といえばここでしょ!」
「和巳少食のくせに」
「WOW……これがヤキニク……♡」
「伸てんちょー、生ハラミ…4人分追加で。」
俺らは誰がどう見てもかなり違った性格、噛み合わないテンションだ。
このチームでやっていけるのか少々不安になる。
「……あっ、なぁそういえばユーゴ先輩。
玉藻の前に会ったってことだよな?
ってことは、玉藻の前の夜の相手をしたってこと?」
「ブッシューーーー!!!」
「っわ!おい和巳ぃ!コーラ吹くなよ!」
「だ、だだって昴!直球すぎっ……!」
「だって気になるだろ?!玉藻の前もユーゴ先輩のこと相当気に入ってるみたいだったしさー。
実際、八咫鏡をくれる条件はソレなわけだし」
絶世の美女と美男のそんなシチュエーションって……
ドーテーの俺には未知の世界すぎて想像ができないが、単純にマジで妖怪とそんなことしたのかしてないのかは気になる。
「ユーゴ先輩まさか本当に……」
自分も同じ目にあいそうになった和巳は相当怯えていてなんだか可哀想だが、俺からすればぶっちゃけ少し羨ましくもある。
「???どーゆー意味デスカ?したって何を??」
「っ、言わせる気?とぼけるなよな」
「も、もうやめようよ、昴っ!」
「早く食べて。」と言って冷静に肉を焼いて配っているのは駒子だけだ。
「なんだよ、むしろ聞くべきだろ?
和巳だって次会った時3人でしなきゃなんないんだし」
「もっ!もぉおおお!昴、キミって結構デリカシーないよね!」
さっきから店員たちだけでなく、周りの客たちまでユーゴをチラチラ見ているのがわかる。
外を歩いている時なんか、皆必ず1度は振り返り、女性は完全にユーゴに釘付けになっていた。
そのくらい、ユーゴは浮世離れした美しさだ。
玉藻の前がゾッコンするのも頷ける。
「ワタシ、玉藻サンとは何もしていないデスヨ」
「「え?」」
.......そうなの???
「ミラーも、くださいって言ったらくれました」
「えっ、マジか...。なーんだつまんな。」
俺は肉を頬張りながら心の中で舌打ちをする。
面白い話が聞けると思ったのに~
「つまんなって.....昴はもう……。
いや、でもよかったよね、ユーゴ先輩」
「ハイ。彼女と何かあると魂を吸い取られると聞きましたから」
「えっ?!」
「なので、ワタシの術で幻覚を見せている隙に逃げました。
きっと彼女はワタシといろいろシたと思い込んでいるでしょう」
俺らが目が点になって固まっている中、ユーゴはそう言いながら美味そうに肉を食べている。
箸の使い方にはまだあまり慣れていないようだ。
「ユーゴ先輩……あなたが日本に来たのは、三種の神器を手に入れるためってことよね?」
駒子が訝しげに手を止め尋ねた。
「うん?そうデスヨ」
「鏡以外の在処は知っているの?」
「ミラーの他は……勾玉と草薙ソード……でしたよね。
実はワカリマセン」
「勾玉は僕が持ってて、草薙剣は駒っちゃんの弟さんが持ってるんだよ」
「おいっ!!なんで言うんだよ!和巳!」
大事なことをそんな簡単に暴露する奴があるか?!
「だってユーゴ先輩はもう僕らの仲間じゃないか!
逆にどうしてそんな大事なことを教えちゃダメなんだよ?」
「な、なんでって……」
「ワタシをまだ信用できていないからでしょう?」
ユーゴが静かに言ったその言葉に、ドクッと鼓動が跳ねる。
ユーゴはニコニコしながら冷静に言った。
「どうしたら信用してもらえますかね?
ワタシはキミたちの崇高な理念の邪魔をするつもりは無いデスヨ。
何かを救いたい気持ちは……とてもよく分かりますカラ」
俺は昔から、簡単に人間を信用しない。
どちらかというと神や妖怪に寄り添って生きてきたからかもしれない。
人間の醜い一面はたくさん知っている。
何かを信じれば、たいてい裏切られる。
それは唯一、人間だけにある概念だ。
会計時、
「今日もありがとね!いやぁ!駒っちゃん!まーたイケメンな彼氏が増えて!ほんっとたいしたもんだな!大学入ってから随分と明るくなったようだし!楽しそうでなによりだよ!」
また店長がそんなことを言っている。
「ちがっ、だから彼氏とかじゃなくてっ!
と、友達です!ただの!!」
「タダノ君っていうのー?へぇ~!日本人離れした顔してるのに名前はガッツリ日本人なんだな」
「そうじゃなくってっ!」
「てんちょ。ワタシのナマエは、ユーゴ・メリンです」
「メリン……って、もしかして……ランカスター・メリン?!」
「あ、ワタシの先祖を知っているのデスネ」
「すっ……すっげぇえ……!!さ、サインくれサイン!!店に飾る!!」
「エッ?ワタシのを飾っても……」
「いいからいいから!!!」
どういうことなのだろうと、俺らは店を出たあとユーゴに聞いた。
「ランカスター・メリンはね、ワタシのひいひいひいひいひい爺様くらいの人で、祖国では一番名を馳せた最強のエクソシストなのデス。
結構映画とかにもなっているみたいデスヨ」
「なるほど……ごめん、全然知らなかったわ。」
「伸店長、ホラー映画マニアだから……」
「ランカスター・メリンは僕、聞いたことあるよ!
最強の悪魔祓い……たくさんの人々を助けた神父さんだったって。
まさに伝説の人だよね」
バシュッー!!!
え……???
カランッーと地面に落ちたもの。
それは尖った手裏剣のようなものだった。
一瞬のことすぎて把握できなかったが、
どこかから飛んできたソレを、ユーゴが弾いたのだ。
当たる寸前だったのは、和巳だった。
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