第42話 フランスから来た美男子


2日後の大学にて、

なにやらキャーキャーと騒がしく人が集っているのを発見した。



「……なんだ、あれ」


「なにか美味いもんでもあんのかっ?!」


「絶対違うと思うぞ」


頭に乗っているデンはそのままに、

俺は好奇心で近付いた。

こんなに騒がれてるなんて、有名人でも来たんだろうか。



「かっっこい〜っ!♡ねぇ何人なの?♡」

「やばぁ〜いっ♡♡背ぇ高ーいっ!」

「目ぇきれぇえ〜い♡♡」

「ねぇ連絡先教えて?♡」



ものすごい人だかりなのでなかなか近くには寄れないが、

その人物の背が異様に高いため、首までは辛うじて見ることができた。



「え」



なにこの既視感。


絶対こんな奴に会ったことないって言い切れるのに……

すごく知ってる奴みたいな感じ……



「って、あぁぁああ!!!」



俺の大声に、全員が振り向いた。

当然、その人物もこっちを見たので目が合う。


薄紫色に黄金色の瞳……

白銀に薄いブルーが混じっている長髪……


そうだ間違いない。


こいつが……玉藻の前が言ってた男。

三種の神器、八咫鏡を持ってるはずの男だ!!


どうしてうちの大学に?!


でも……これは好都合だ。



「WOW!キツネさんだぁ……可愛いデスネ」



ゾクッ!!!



な、なんだこの異様なオーラは……



こんなのっ……



見たことない!!!!



「オナマエはなんてゆーのデスカ?」



近づいてきた途端、具合が悪くなりそうなほどの強烈なオーラに俺は一瞬、その圧で押しつぶされそうになった。


デンもそれを感じているのか、毛を立たせて威嚇しているのがわかる。




ニタァと笑う不気味で妖艶なその笑み。


キャーキャー言っている他の人間たちからは、ただの美男子イケメンスマイルにしか見えていないだろう。



でも……俺にはわかる。




こいつは……




只者じゃない!!!




「落ち着け、デン……」



そうだ、狼狽えるな。


別に敵と決まったわけじゃないんだ。



俺はうるさい鼓動を悟られないようになんとか笑顔を作ってそいつを見上げた。


さすが190cmの長身。

迫力すげえし、確かに美男子だけど……威圧感半端じゃないな……


つうか……絶対日本人じゃないだろ。



「や……やぁ、見ない顔だな。転校生?」


「ワタシは留学生デス。2年生!」



留学生!一個上か。



「あぁ。そうなんだ!俺は1年だから、君は先輩になるね」



「OH!ワタシセンパイ憧れ!」


「っ、あっそう。じゃあセンパイつけて呼んであげる。名前は?」



「ワタシの名前は、ユーゴ・メリン。

フランスから来ました。よろしく!」



フランス……なるほど。

玉藻の前に名前を聞いた時、日本の名前じゃなくて覚えられなかったと言っていたな。


じゃあやっぱり間違いない。確定だ。

むしろこんな容姿こんなオーラ、こいつしか有り得ない。


八咫鏡を得るためにわざわざはるばるヨーロッパから来たのか?

でも何のために……



「……なぁ、ユーゴ先輩。

俺と、友達になろう。」



ユーゴの表情がパァッと明るくなった。



「なりますなります!ボナミ!メルシー!」



あ……俺初めて自分からこんなこと言ったわ。

初めて自分から友達作ったわ。


あれ……?こんなに簡単だったのか?



「先輩って呼ばれるの憧れだった!!ヨロシクネ!」


「こ、こちらこそ……」


笑顔でギュッと手を握られ、俺の鼓動が跳ね上がる。


俺に初めて、外国人のイケメン友達ができた。




「あ……あれもキミのボナミ…オトモダチデスカ?」


ユーゴの視線の先を見る。



「!!!」



その先にいたのは、こちらを険しい顔で睨んでいる、

松竹、酒呑童子、太郎坊の三妖怪だった。



「なっ……なんで……み、見えんの……」



「え?だってワタシは……」



ふ……と妖艶に細まる紫黄色の瞳、長いまつ毛、上がる口角……




「エクソシストですから」




ユーゴ・メリンは



祓魔師ふつましだった。

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