第35話 神器の在処


俺らは次の日から剣道部に入部することになり、

安達駒子だけでなく、乃木部長を中心とした他の部員たちからも扱かれることとなった。

勉強よりももはや部活を優先することになりそうだ。

が、まぁ日本の一大事のときに悠長に勉強なんかしていられないし。

ってのを自分の中で多分言い訳にしてる。


そして今日は、安達駒子の家に行くことになっている。



「メェェェェン!!!」


「いでっ…!」


「こら坂東!集中力が足りんぞ!」


「すすいません部長っ!」



だから俺はまた緊張感に包まれて今日1日過ごしていた。

こんな短期間に友達の家に2度も……

いや、まぁ厳密に言えば、安達は友達ではないかもだが。



チラリと和巳の方を見ると、

なにげにイキイキとしていてまた俺はこいつを尊敬した。

何においても前向きに取り組めるところは、和巳の長所だ。

せっかく鬼切丸を持っているんだから、使えなくては困る。



しかし………


問題は安達駒子のほう。



相変わらずものすごい剣技で周囲を圧倒している。

小柄なのにどこか威圧感のある態度……なんか影を持っているようなオーラ……

そして三明の剣を手に入れたがるその理解不能な執念。


何を考えているのかまるで掴めない。


が………


まぁいい。

シロの言うように、今の優先事項がこれなんだから。


そのことは、三明の剣を手に入れてから考えればいい。



俺は元々楽観的な性格だ。

だからこそ、他人と違う奴らに囲まれ、他人と違う生活だったとしてもなんだかんだ生きてこれたんだろう。




ということで、スパルタ剣道部活動を終えていざ安達駒子宅へ向かうこととなった。



「お疲れっす〜皆さん☆」


早速、フクロウのフクが迎えに来た。


なんだろうな…

なんかこいつ、フクロウのくせにチャラい感じなんだよなぁ。

これで本当に博識なんだろうか…。



俺と和巳は、デカくなったデンの背に乗り、

フクに乗って飛んでいく安達の後を追う。



「すっっっごーーー!きもちーっ!

ズルいよ昴!こんな楽しいこといつもしてたなんて!

いつも登下校これでしてんの?!」


「んなわけないだろ。」


初めて狐に乗って空なんか飛ぶというありえないアトラクションに、和巳は終始興奮しっぱなしだ。



「そういえば、シロもデカくなれるんだよな?」


俺は、和巳の首にいつも巻き付いているシロに疑問を問いかける。


「なれますよもちろん…

空を飛ぶのはあまり好きではないですが…」


「なんだそうなのシロちゃん!

じゃあ今度乗せてね!」


「私は好きではないと言ったんですよ和巳さん…」



こうして考えると、ほんっと世の中不思議だよな。

神や妖怪って本当にいて、それが視える俺とかも存在してんだもんなー。




そうして、到着した先で驚愕した。



「えっ!?まさかの……」



清明神社?!?!



いや、安倍晴明の末裔っての疑ってたわけじゃないけど…

ガチだったんだ…。


上空から見下ろすその圧倒的存在感に、目を奪われる。

ちらほら観光客も見える。


安倍晴明の神社は京都でも有名なパワースポット、そして観光スポットだ。


そのすぐそばに位置する屋敷がどうやら安達の家らしい。


大きな外門の前に降り立つと、安達はなにやら御札のようなものを数枚取り出した。


「うちは強力な決壊が貼られてるから、家の人以外は入れないの。

だから全員、体にこれを貼って。

いい?体に、直によ。」



俺は言われた通りに服をめくって、体に直に貼り付けた。



「デンとシロは一応姿くらましをしてね。

まぁ、父に会ったら意味ないと思うけど」



俺らは安達についてこの無駄に広い敷地を歩き、ようやく家の中へと入った。

言葉では形容しがたいほど趣があり、なんとも高貴で立派な佇まいだ。



「ここが私の部屋」



「部屋って……これが?」



それは、明らかに1つの「家」だった。


意味が全く分からず呆然としていると、「お茶入れてくる」と言って安達は出ていった。



「駒様の家系は複雑なんす」


そう声を出したのはフクだ。


「複雑って…どういうこと?

まさか家族一人一人に持ち家があんの?」


「駒様だけがここの"離れ"で暮らしてるんすよ」


「は?どうしてだよ?」


「まぁ…そうなる詳しい経緯は知らんすけど、

厳密に言えばそもそも駒様は本家ではないとゆーか…」



え?!?!


詳しく踏み込みたい話だったが、もう安達が戻ってきてしまった。



「おぉ!オイラの好きなどら焼き〜♪」


ずっと不機嫌だったくせに、デンは出された大量の菓子の中からどら焼きを貪り食いはじめた。



「あー…わざわざありがとう安達さん。

で、えぇっとフク、まずはキミに説明するよ」


俺は昨日話した内容を、もう一度繰り返した。

非常にめんどくさいが、知識豊富な博識フクロウなら、何か情報を知っているかもしれないと思ったからだ。


「ほーほー。なるほどー。

昴氏はあの坂上田村麻呂で、和巳氏はあの渡辺綱であると。

ほーほー。」


「いや、子孫ね?おたくの安達さんと同じように」


「大嶽丸が10年ほど前に復活し、近頃ますます勢力を上げていることは知ってたっす。

もちろんオレもできる限りのことは協力してもいっすけど、わかるのは、三明の剣の在り処と、三種の神器の在り処くらいっすね」



「な、なんだってぇえ?!?!」



俺はその言葉に空いた口が塞がらなくなった。

そんな俺の代わりに、和巳は口を開く。



「そ、それだけ知ってれば充分だよ!

フクくんそれ!それはどこなの!!」



「まず、三種の神器の一つである八尺瓊勾玉は、和巳氏が所持しているということで間違いないっすね?

残りの八咫鏡は、日本三大妖怪である玉藻の前が。」



「えっ?!確か日本三大妖怪の玉藻たまもの前って……九尾の狐に化ける最強の美女とかって伝説の……」



さすが和巳はよく知っている。

日本三大妖怪は、大嶽丸、酒呑童子、そして玉藻の前なのだ。


だがまさか、その味方か敵かも分からない最強の妖怪が三種の神器の1つを所持しているとは全く予想外だった…。


これはとりあえず、どうにかして彼女に会いに行かなくては…


めちゃくちゃ怖いけど。



「……で、あとの1つ、草薙の剣は?」



「あぁ、草薙剣ならこの家にあるっす」



「「「?!?!?!」」」



何をサラッとすげえ発言してんだコイツはよ?!

なにデンと一緒んなって菓子食い始めてんだよフクロウ!



「おおおおおい、安達さんっ!

知ってて黙ってたのかよそれ?!」


「しっ知らないわよ私は!!

そんなものがウチにあるとか聞いたことない!」


安達のこの表情は……

まぁ嘘ではないっぽいな。


てことは余計に厄介じゃんか…。

きっと父親が持ってるとか、それかその父親も知らないとかだろ?

はぁ〜……



「じゃあまぁ、草薙の剣は一旦置いといて……

大通連は?三明の剣の大通連はどこだよ?」



「あ、それなら私が持ってるわ」



安達さんんんんんんんんんんん!!!!!



「なんっっで!!昨日の時点で早く言ってくんなかったんだよ安達さんんんん!なんで涼しい顔してすましてたんだよ!!」



「あれ、私…言ったと思ったけど…」



はぁ……

ため息しか出ないわ。


なんだろうなぁ…俺の周りって……

なんでこう変わった奴らしか集まんないんだろう…



まぁとにかくまとめると、

三明の剣のうち、小通連は俺、顕明連は大嶽丸、大通連は安達が持っているってことだ。



んで三種の神器の八尺瓊勾玉は和巳、八咫鏡は玉藻の前、草薙剣はこの家のどっか。



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