第25話 神社の龍神



「わー。相変わらず圧巻だなぁここは。」


貴船神社は何度来ても圧倒される。

大きく立派な佇まい、あまりにも広大な自然の美しさ、神々しい雰囲気。

1歩踏み入れるだけで一瞬にして空気も匂いも変わるのを俺はここに来る度昔から実感していた。


入ってすぐの場所に古めかしい看板があり、そこにはこの神社の龍神に関することがびっしりと書いてある。


高龗神は、万物の命の源である水を司る龍神がいわれて祀られている。


それを知ってから俺は、

だからあいつは水があるところが好きなのかぁと最初に出会った場所のことなどを思い出したりした。



さっそくデンと本殿に行く。

そこの真下に龍穴と呼ばれる大きな穴があるとされており、普通の人間には見えないし通り抜けられないよう、封鎖するような形で祀られている。


ここはかなり人気のパワースポットとしても有名だ。


とくに世間一般では、龍神様は特に新しいことをスタートする際、物事が上手くいくようにお力添えをしてくれるという言い伝えが信じられている。



「よしよし、誰もいないな」


「穴に入んのか?けーさつ呼ばれんぞ」


「さすがに入らないよ。だから呼ぶんだ。こーして」


俺はハーっと息を吸った。


「おーい!タカ龍〜っ!俺だよ〜!来たよ〜!」


幼い頃から、出会った時から、

俺はいつもこうして、寝ているタカ龍を起こしてきた。

だからなんだか体に染み付いてしまっている。



ズズ……

ズズズ……


カタカタカタカタ……



突然地響きがし、龍神が起きたのだとわかった。


これはこの地では一般人に、

龍神のアクビなどと呼ばれている。



「ほらね。俺が呼ぶと一発なんだ」



ブワワワワ〜っと穴から出てきて大きく天に舞い上がった龍を、目を細めて見上げる。



「相変わらずすげぇ……綺麗だなぁ」



天に舞い上がった高龗神はそれはそれは見事だ。

オーロラに輝く鱗に、長く逞しい髭、ギロリと黄金に輝く眼光。

その神秘的な姿が太陽の光に照らされ、とても言葉では形容しがたい光景だ。


俺はタカ龍の姿を見た時だけ、いつも思う。

視える目の持ち主でよかったと。



「無駄にでっっけぇなぁ〜相変わらず。

オイラみたいに縮こまったほうが絶対動きやすいのに」



「いいんだよ、タカはあのまんまで。」



眩しさに目を細めていると、ギロリと見下ろしたタカ龍と目が合った。

その瞬間……


「すすすすす昴ぅう〜〜っ!

会いたかったぞ昴〜っ!!」


ビュオンッーと凄い勢いで降りてきて、

どどどーーーんと砂埃を散らしながら目の前に降り立った。


「ふはは。よぉタカ龍。変わらず元気そうでよかったわ」


服に着いた砂を払いながら笑いかけると、突然俺をクンクンと嗅ぎ始め、ジロジロと見回し始めた。



「……え、なに?どしたー?」


「なんか雰囲気が変わったと思ったら……

そうかお前!!ついに手に入れたんだなソハヤの剣と小通連をっ!!」


さすが鋭い龍だ。

しかもやっぱりちゃんと知ってるんだ。



「もしかして最初から、俺が何者かも知ってたとか……?」


「ん?……田村麻呂のことか?」


やぁあーーっぱ知ってたんかーーーい!!!!


マジでさぁ、え、なになに?

鬼子母神といいこの龍神といいさぁ、

なんで今まで黙ってたんだよ!!



「……んでまぁ、今日はさー、それについてちょっと聞きたくて。」


「聞きたいこと?」


「うん。もう説明し疲れたから単刀直入に質問だけ言うね。

大通連はどこにあるか知ってるー?」



面倒くさがりの俺は、全ての説明をとっぱらって用件だけ伝えた。


が、


「……それが必要なのか?」


やっぱそうなるよなー。

やっぱ一から全部説明しなきゃダメだよなー。


「えぇっとね、タカ、」


「昴様は、復活した大嶽丸を退治しに行くのです!」


突然のその声にギョッとすると……


「松竹ちゃんっ?!?!」


いつのまにか松竹がドヤ顔で突っ立っていた。


さすが俺のストーカー……いや、協力者。


わざわざここまで着いてきたんだ……。



「大嶽丸は三明の剣のうち、顕明連を所有しています。

小通連は今日、昴様の手に。

残りの大通連を含めた三剣を手中に収めて、日本を魔国にしようとしている。

これは一刻を争う事態です。」



タカ龍は、それさえも分かっていたかのように、全く驚いた様子はなく至って冷静沈着だ。



「2000年前から日本を見てきた、日本最古の龍神である高龗神様なら、何かご存知かと思って参ったのです。」


グッジョブ松竹ちゃん!!

この子がいてくれてほんとによかったぁ〜!



「ふむ……いかにも私は田村麻呂も妻の鈴鹿御前も知っていた。

……が、そもそもこれを語るには大まかな歴史くらいは遡って話さんとならないな。」



タカ龍は約1200年前の歴史に思いを馳せるようにしてゆっくりと語り出した。


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