第21話 俺のこと好きすぎ
次の日の学校で、俺はさっそくいつものメンバーにその話をした。
「わたくしはいつでも昴様のためなら命さえもかけられますよ!」
「松竹ちゃん……ありがとう!」
「僕も頑張れますよ〜!酒のことなら任せてくだせぇ!ヒック」
「いや酒の話はしてねーよ?」
「オレ様を味方につけるなんざお前良いタマ持ってんなぁ〜」
「は?たま?」
不覚にも俺は泣きそうになってしまった。
っていうのは冗談だけど、普通に嬉しかった。
松竹ちゃんも酒呑童子も太郎坊も、二つ返事で力強く頷いてくれたからだ。
俺の仇討ち兼日本救済に全面協力してくれるというのだ。
まぁ酒呑童子と太郎坊に関してはいつもの如く酔っぱらいだから、どこまで本気かどこまで俺の話を理解してるか知らないけど。
まぁ1度頷いたもんは撤回させねーぞ。
にしても……
マジでさぁ…みんな……
「俺のこと好きすぎかよ」
「そりゃ〜あそうよ!だから俺らはこの学校にたむろってんだぜぇ?」
「まぁ学校で酒飲むのはどーかと思うけどね」
酒呑童子と太郎坊は相変わらず酒臭い。
2人ともイケメンなのに女が居ないのは頷ける。
ん………?
なんか忘れてるぞ俺……なんだっけ。
「あっ!そーーだ!おい酒呑童子!」
「んぶっ!ん、なんだよいきなりデケェ声出しやがって」
酒を咳き込みながら睨んでくる酔っぱらいに、俺はずいっと近付く。
いやぁ……イケメンだなぁ……
じゃなくて!!
イケメンだけど、どう見てもやっぱりただのへなちょこ酔っぱらいだ。
「お前……日本三大最強妖怪ってこと、なんで隠してたんだよ?!」
「へっ?!」
「へっじゃねぇよ!誤魔化すなよ!?」
「や…じゃなくて…知らなかったのかよ昴?!」
カチンっ!
「知らなくて悪ぃかよ!だいたい俺はな!妖怪の歴史なんかに微塵もキョーミないわけ!知るわけがないし、てゆーかお前が最強なんて信じられないんだよ!」
「まぁ私も……今でも信じられませんね。世界七不思議の1つなのでは?」
「はは、まぁ、もしかしたら何かの間違いってこともあるかもですよね」
カチンっ!
松竹と太郎坊の言葉に、今度は酒呑童子がこめかみに青筋を立てた。
「そーかそーか。酔いが覚めて来たぞぉお前ら。
そんなに疑うのなら証明して見せようか?
オレ様はこの学校を一瞬で壊滅させられるが?」
「おっおいヤメロ!俺の学校だぞ一応!つか学校は関係ないだろ巻き込むなよ!」
俺は結構不安になっていた。
なんだろな、こうー…ちょっと抜けてるところとかも最強とは思えない所以というか……
まぁでも塩爺もデンも言ってんだから事実なんだろうけど。
「にしてもお前も、すげーもん手に入れたもんだな、昴。あの伝説のソハヤの剣なんてっ!」
3人が俺のブレスレットとネックレスをまじまじと見てきた。
「本当ですねぇ。昴さんにお似合いです。」
「問題は使いこなせるかだけどねー」
「オレ様が鍛錬に付き合ってやってもいいぞ」
鍛錬……かぁ。
確かにいくら強い武器を持ってたって、使いこなせないことには意味が無いよな。
「よし、じゃあ頼むよ酒呑童子。
さすがに日本三大最強妖怪の大嶽丸に挑むには、おんなじ最強妖怪であるお前のお力添えは必要だよな!」
「「「えっ……」」」
「え?」
ポカン顔の3人の顔が、みるみる青くなっていく。
たちまち顔面蒼白になり、口をパクパクとしはじめた。
「なっなっ、なななんとっ!昴ちゃん!!」
「なんだよ、太郎坊」
「すすす昴様!まさかそんなっ……」
「え、どうしたんだよ松竹ちゃん」
「おまっ!今、大嶽丸っつったか?!」
「言ったよ?お前と同じ最強だから知ってるだろ?」
「知ってるも何も!復活しつつあるってのはソイツのことだったのかよ?!
ちょいちょいちょいちょい待て待て!
俺は抜ける!あんなのと関わるのはごめんだ!」
「はぁあ?!何言ってんだよ今更!お前さっきまでやる気満々だったくせに!」
「す、昴ちゃん!僕もちょぉっとそれは……例外かなぁ…ごめん、酒も不味くなるどころか二度と味わえなくなるかもだし」
「あ?何言ってんだお前まで!
そんなにやべえ奴なのか?大嶽丸ってのは」
「やばいなんてものではありませんよ昴様……
あの鬼神は、日本で最も強大であるとされた鬼神魔王。
酒呑童子とはまた違った種の鬼……
己の欲のためなら手段を選ばぬ残虐非道で無慈悲な男。
1000人がかりでも敵わないほどの鬼神と言われているのです」
3人とも明らかに焦りの表情をしている。
が、俺は疑問だ。
「そいつがやべーってのはもう知ってるけどさ、
おい酒呑童子。お前も最強なんだろ?
名を連ねてるお前がそんなにビビることなくないか?」
「……正直、俺はあいつとタイマンしたことあるわけじゃねぇから力の差はわからんが…
ただな、単純に……俺はあの種族が苦手なんだよ昔から。
俺の鬼族とは猛烈に仲が悪く、仲違いをした歴史がある。
大嶽丸の種族が坂上田村麻呂に討伐されたとき、俺の種族が応援を寄越さなかったと今でも恨んでやがる……」
「・・・。」
いやいやいやいや……!
こいつこんなナリして気弱すぎね?!
え、俺がオカシイのか?!
「なぁ昴。俺は気付かなかったよ。
お前は……あの伝説の武将…坂上田村麻呂の子孫なんだろ?
だからお前はソハヤの剣を手に入れることができた。
だったらお前ならワンチャンいけるかもしれん。
だが俺は無理だ。
俺の力を持ってしても、田村麻呂相手に大嶽丸ほどは粘れない。きっと瞬殺。」
俺は目を丸くした。
「えっ?!最強のお前でさえ敵わない相手なのか、俺の先祖って……」
「酒呑童子、いくらなんでもそれは言い過ぎなのではないですかー?あなたそこまで弱くないでしょう?仮にも日本三大最強妖怪の一人と数えられているのですから」
「そうだぜ酒呑アニキぃ〜。アンタの全盛期なんて日本中の妖怪たちが震え上がってたじゃんか〜」
「そっ、そぉ…かぁ?オレ様ってぇ……」
よし!その調子だみんな!
この鬼を気持ちよくさせろ!
「だいたいあなた、坂上田村麻呂と戦ったことがあるのですか?
確かに伝説上では最強の人間ですが、その人物が大嶽丸を討伐したからといって、あなたが大嶽丸に負けるということには繋がらないと思います」
「そうですよアニキィ〜!力の強弱は、勝敗とは筋の通らない理論だし、実は向こうも酒呑童子という名に相当ビビってやがるかもしれねっすよ!」
ダンっー!
と突然酒呑童子は立ち上がった。
「おしてめぇらっ!オレ様について来い!
オレ様の後ろにいる奴ぁ誰も死なせん!」
パチパチパチと拍手をしつつ、その燃えるような瞳の炎を見て、俺はしめしめと笑う。
単純ヤローめ。
まぁ何はともあれ、この3人はそこそこ心強い。
「いや〜あ良かった良かったぁ!
最強の武将と最強の鬼が2人で立ち向かえば、大嶽丸なんぞ楽勝っすよぉ〜!」
「えぇ!昴様と酒呑童子は、なんだかんだいつも相性がいいですものノリツッコミとか!陰ながらわたくしは応援しておりますわ!」
ん……?
んんん???
「ちょっ…と待て。
何勝手に抜けてんの?
お前らもやるんだよ一緒に!」
「「えっっ?」」
えってなんだよ、白々しいな。
てゆーか俺のためなら命かけれるってあんなに息巻いてた松竹ちゃんなんだったの?
俺のさっきの感動はなんだったの?
こいつらって……
人間よりも自分勝手じゃねーか!!
ってまぁ、今に始まったことじゃないか。
昔っから妖怪や神と関わってきた俺は気付いていたはずだ。
「ま、とにかく決まりだから!
そんなに不安なら、自分で仲間集めてきて」
やる気に満ち満ちた純粋酒呑童子は別として、
不安に満ち満ちた太郎坊と松竹を、とりあえずは頷かせた。
このときの俺は、ご覧の通り、結構お気楽に考えていた。
これから俺は、個性強すぎる仲間たちを集め、祖先の名にかけて最強の鬼退治をすることになる。
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