第20話 日本三大妖怪
「その意気じゃ昴。
日本三大最強妖怪でも関係ない。
昔から友情と愛に勝るもんはないんじゃ」
「ちょっ!ちょっと待て!
日本三大最強だってぇ?!」
「そう言わんかったか?」
「言ってねえよ!なんだよそれ怖すぎだろ!!
マジで冗談だよな……?」
塩爺が首を振り、デンもウタも首を振る。
「っ…!じゃ、じゃあっ、三大ってことは……あとの2人は誰だよ?!」
俺は一気にビビり出す。
さっきまでの覚悟が情けなくも簡単に揺らぎ始めていた。
だって日本三大最強妖怪ってさすがにヤバすぎだろ!
「日本三大最強妖怪とは……
俺はこれでもかというほど目を見開いた。
「はっ?!?!
しゅ、しゅ酒呑童子ぃ?!そんなわけなくね?あの酔っぱらいが?」
「ギャハハっ!めちゃめちゃ失礼だな昴よ」
デンがゲラゲラと吹いている。
いやだってだって!
いっつも酒飲んでベロンベロンだし、他人をすぐからかって松竹ちゃんには毎日のようにボコられてるようなヘナチョコだぞ?
良いところは顔くらいであとは何もないようなテキトーな鬼。
「だが日本三大最強なのは本当だぞ?アイツはあぁ見えてただの酒乱じゃねえ。わりと使える鬼なんだよ。(笑)」
俺は驚愕しすぎて口をパクパクさせることしか出来ない。
いや、やっぱ何度酒呑童子の姿を思い浮かべても信じらんねーよ!
まだアイツといつも一緒にいる天狗のほうが信じられるわ!
そもそも本当に日本三大最強妖怪だったら、なんで俺の学校にいつも入り浸って酒なんか飲んでんだよ!!
俺はグッと首元のソハヤの剣を握り締める。
「アタイは全力で昴の味方だよ。」
力強く真剣なウタ。
彼女のことは、俺の両親のおかげだろう。
正直心強い。
「まぁ、オイラは言うまでもねーよな。
お前みてぇのとずっと一緒にいてやってるような、優しくてキュートな狐様だぞ。感謝しろよな」
「デン……」
まぁデンはこう見えて一応狐の大神だし、強いに違いないだろう。
「昴。こちら側は皆、おぬしの味方じゃから心配する必要は無い。
求められれば全力で力を貸すし、おぬしに助けられた恩のある神たちは皆、おぬしを優先するじゃろう。」
その言葉に俺はひとまず勇気づけられた。
こうして俺は、本来の目的より遥か斜め上を行きすぎたものたちをたくさん受け取ってこの神社を去った。
帰りはデンの強制的な要望により、牛タンやらずんだ餅やらラーメンやらいろいろ食べ歩きさせられ、ついでにお土産も買わされた。
家に帰ってから俺は、数年ぶりにアルバムを開いた。
まだほとんど赤ちゃんな妹・真珠と、反抗期丸出しの兄・大也、そしてまだまだガキの俺。
優しい笑みを浮かべている父と母。
たまにまだ若めの爺ちゃん。
誕生日、海水浴、遊園地、何気ない日常を切りとった写真……
どれも幸せいっぱいの、何不自由ない家庭。
でも俺は知っている。
そういう日常は、普通に見えて本当は、全然普通じゃないってことを。
誰もが忘れがちだ。
こと、家族においては。
そこにある日常が当たり前すぎて、これからもずっと永遠に続くものだと誰もが思っている。
でもそれは、いつ容易く壊れてもなんの不思議もない、脆くて儚い現実だってこと。
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