第14話 松竹の秘密
「そうそう、さっきの話に戻りますけど昴様。
ここらで有名な安産祈願の神様といえば、鬼子母神堂の
俺はその名を聞いて眉を寄せる。
「……やっぱり〜?でも俺ぶっちゃけあの人苦手なんだよな。なんか怖いんだもん……」
鬼子母神は仏教を守護する女神の1人であり、普段は母性溢れる穏やかで美人な女神なのだが、ホルモンバランスだかなんだか知らないがたまに人が変わったように機嫌が悪い時がある。
そんな時は彼女の家来の側近たちもあたふたしている。
「しかしあのお方はすごいですよ〜!
なんたって1000人ものお子をお産みになられているのです!」
「はいぃ?!なにそれ?!1000?!?!」
驚愕……というか、普通にドン引きしていると、
横から酒呑童子が酔っ払いながら口を挟んだ。
「な〜わっかるぅ〜。俺もあの女神は苦手だ〜
昔のこともあって鬼には当たりが強ぇしなぁ〜」
「え?なんかあったの?」
「大昔な、鬼は子を食うのが好きだったんでな〜」
ゾクッと鳥肌が立つ。
「な、なるほどな。そりゃあ1000人も産んでる子供好きの女神様だもん。怒られるのは当たり前」
「ちっげーよ!そうじゃねえ!」
「……は?」
「あの女神も子を食うんだよ」
俺は目が点になった。
……は?何言ってんだこいつ?
面白くない冗談だな。
「いくらネタでも言っていいことと悪いことがあるぞ?」
「いや事実だよバカチン!
鬼子母神は大昔、他人の子を奪っては食していたから、鬼とは常に奪い合いだったんだ。
そーゆーわけだから、今でもちょっとした因縁が残ってるっつーか」
「…………。」
俺が言葉を失っていると、今度はベロンベロンの太郎坊が、赤い鼻を近付けてきた。
「まぁまぁ安心してくだせぇよ昴ちゃん。
そんなん大昔の話で、今はもうとっくに鬼子母神も鬼類族も人間なんて食いやせん。
むしろ知っての通り、人間の味方!」
「お、おう……別にビビってねーし」
「とりあえず昴様、
その女性を是非、鬼子母神様の所に連れて行ってさしあげてくださいな。
なんならわたくしもお供いたしましょうか?
わたくし実は、あのお方のご機嫌取りは結構得意なのです!
最近はお会いしておりませんからそろそろ御挨拶に伺わないと。」
「あっ、マジ?!松竹ちゃんがいてくれるのホントに助かるよ!」
俺がそう言うと、松竹は真っ白い頬をポッと赤く染めた。
松竹の秘密その1……
神々からかなり評判が良い。
典型的な、誰からも好かれるタイプというやつだ。
本人は気づいていないようだが、実際そっちの世界ではめちゃめちゃモテている。
「あっはっはっ!松竹お前まぁ〜た昴の前で顔真っ赤にしっ」
ドゴッ!!!
酔っ払い鬼・酒呑童子は松竹に殴られ泡を吹いて気絶してしまった。
松竹の秘密その2……
めちゃくちゃ力が強い。
別名・破壊神
「あわわ〜っ!酒呑童子殿ぉ〜大丈夫でしゅか〜?ぶはははっ」
ビシャビシャ〜
太郎坊が笑いながら酒呑童子の顔に酒をかけている。
俺はそれを、やれやれと言った様子で眺めた。
酔っぱらいってマジで頭おかしいよな。
「くっそ!てっめ!松竹!こっんの座敷わらしが!何しやがんだっ!鬼族のボスであるオレ様に向かって!」
「ふん。口を慎みなさい酒呑童子。
もう一発、今度は本気を食らいたいですか?」
「っ、むむ……!お、お前なんてっ!いつまでも昴に付き纏ってるだけのただのストーカーのくせにぃ〜っ!!」
ドゴッ!!!!!
松竹の秘密その3……
多分俺のストーカー。
たしかに普段、授業中でさえ窓から手を振ってきたり、気がつけば勝手に入ってきて俺のノートを覗いていたり、隣で授業に参加していたり……
かと思えば俺と話した女子や、俺の悪口を言う奴にイタズラしてたりする。
そろそろ止めさせないとなぁとは思っている。
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