第13話 学校に入り浸る妖怪
今日は月曜日。
学校の日。
俺の高校生活も残り僅か。
思い返してみると、まぁ中学の頃と比べれば多少は人とのコミュニケーションに慣れたものの、やっぱり1人の方が遥かに楽で、俺の高校生活も基本は一匹狼だったな。
とはいえ、俺には人ならざる者たちとの関わりが多くあるため、1人なようでいて実は全然1人になっている感覚がない。
昼休み、俺はたいていいつも、弁当を持って第2校舎の屋上へ行く。
本校舎の屋上だと、毎回イチャイチャカップルとか誰かしら男女がいるからだ。
だからちょっとめんどくさいけどこっちまで来ると絶対に誰もいない。
なぜならこっちの校舎は、「出る」という、皆が恐れる学校怪談の噂の校舎だからだ。
そしてそれは、
「昴様、ごきげんよう。」
事実である。
待ち構えていたように毎回いるのは、着物を着たこのおかっぱ頭の真っ白い少女。
最初この子を見た時は、あの有名な幽霊さながらの見た目に腰を抜かしそうになったが、話してみればなんてことはない。ただの年頃の女子妖怪だ。
真っ白な肌に髪に赤紫の目は、とても妖艶で神秘的な美しさを醸し出している。
まさにこの世のものではない姿形だ。
「やぁ、
「まーあ!今日も美味しそうなお弁当ですこと」
この子はなぜだか毎日必ず俺に話しかけてきて、たまにずっと付き纏って離れなかったりする。
が、他の妖怪たちとは違ってとても良い子なので別にそこまで気にしていない。
「まぁ妹は料理上手だからなぁ〜
毎朝早起きして朝飯まで作ってくれるんだ。
ホントは俺がやんなきゃなんだけど、アイツを見てるとなんていうか……母親の姿みたいで……」
俺は無意識のうちに、家事をする真珠を、母親の姿に重ねていた。
「だから多分……甘えちゃってるんだろうな……こうして……」
独り言のようについ呟いてしまっていた。
しかし松竹は隣で優しく笑った。
「頼られるということは、女性はとくに嬉しいものですよ。」
「え?どうかなぁ……。俺しょっちゅう妹に怒られてるし」
「手のかかる男性って、私は好きですけどね。
だから……私にも、たまには頼っ」
「あ!そうだ
俺はつい急いで口を塞いでしまった。
俺は高校でも既に独り言が多い変人として有名だ。
ここの屋上は安心な場所のはずなのについ癖でキョロキョロしてしまう。
挙動不審と言われてきた小中学生の頃から染み付いてしまっている。
「……実は、ついに兄の奥さんがさぁ、妊娠したって言うんだよ!」
「まぁ!それはおめでたいですね!
人間の赤子というものは脆くて儚くて大変可愛らしい。」
「だからそこが問題なんだよ!
無事腹ん中で育って、無事生まれてきてくれるか、俺はもう気が気じゃなくて」
「おおん?なになに?オレ様も混ぜろ!」
突然グイッと現れたのは鬼のような見た目をしたかなり大柄な妖怪……って言うか多分鬼。
しかし結構男前なうえにかなりマッチョなのでちょっとムカつく。
「もう……また邪魔しに来たのね……」
松竹は、誰かが来るといつもムッとする。
「
「おうよ、なんせ1週間前から飲みっぱなしだからな!太郎坊の野郎が特製の天狗酒をくれたんでな」
「またあいつかよ。のんべえが。」
「誰がのんべえでしゅってぇ〜?ヒック……」
噂をすれば、天狗の妖怪・太郎坊が酒を大量に持って現れた。
いつも赤い顔を更に赤くしていて、目は明らかに据わっている。
ちなみにこいつもなかなかのイケメンなので俺はムカついている。
俺の周りはいつも美男美女の妖怪や神ばかりだ。
なんでか知らんが。
「昴はんもいっちょいっときますかぁ〜いっちゃいますよねぇ〜?
こないだ全国の天狗たちの酒評議会でねぇ、いっろんな酒を交換したり作ったり、あぁ〜楽しかったなぁ〜!そーだ!今度昴はんも一緒に行きやせんかぁ?」
「未成年に酒をすすめるなよっ!」
「あらら?そういえば昴さん、今日は狐大神様はおりませんの?」
松竹が尋ねてくるその美しい声まで掻き消されそうなほど、鬼と天狗が騒がしすぎる。
こいつらは常日頃から酔っ払っているくせに、俺がいるからかこの学校へ来てはちょっかいを出してくる。
「あー、いるはずだよ絶対。
また食いもん目当てで裏庭でもうろついてんじゃね。
放っとけよあんなの」
実は小狐姿のデンは大変愛くるしい見た目なため、それを利用して学校の女子たちにモテモテだ。
デンは既に校内では人気の名物狐となっており、女子を中心とした生徒たちからいつもいろんなおやつを与えられ完全に餌付けされている。
抱き締められたり写真撮ったり……
人間の俺を差し置いて、100歩も200歩も先をいかれている感じで俺はかなりムカついている。
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