第7話
今日もベッドの上。足の保湿をしてくれている看護師さんが、膝の下の傷痕を見て、これかなり切ったんじゃない?
「痛かったよ。19針縫ったの」
「どうすれば、こんなになるの?」
「ママさんバレーやってて、ボール追って体育館の角にスライディングしていったの」
「良かったね、神経も血管もないところで」
本当に運良く、出血しないだけでも助かった。でもすぐ縫った方がいいので、救急車で、病院に向かった。夜の9時近くそろそろ練習終わる頃だった。仲間は帰り大変だろうと、車で一緒に行ってくれた。診察台はガタカタして安定感なく、痛いのと恐怖で、ヒヤヒヤもんだった。麻酔が半分効いてるか、どうかっていう、痛くて痛くてしょうがない。
何日か消毒しに、通院するよう言われ、仲間のお陰で、その日は無事に家に帰る事もできた。
しばらくの間は、神経と筋肉がつながっていないような、変な感じが3ヶ月程続く。歩くのも足を引きずるようにで、ゆっくり、ゆっくり。
お風呂に入るのも怪我してすぐは足を上に高くして、つからないようにした。結構、きつかった。でも毎日仕事にも行った。
今日はひな祭りの日。ホールではピアノの響き。これって、リクエストしたノクターン。
ありがたーい。ナマノクターン。何故か、涙が溢れてくる。マスクして車椅子に座りながら聴いてる。良かった。一曲目だとは思わなかったから早めに部屋を出た。初っ端の出だしは残念ながら間に合わなかった。続いて、カノン、小田和正さんの曲、ユーミンの曲。おひなさまの曲。でも30分ぐらいで終わっちゃった。涙と鼻でマスクはえらいこっちゃで。看護師さんにティッシュ持って来てもらって、鼻かみながら、感動してる私と、嫉妬してる私が、ぐちゃぐちゃになりながら。いい刺激。ピアノの音色、響き、弾いている人のタッチの仕方で大小柔らかさ、強さ、優しさちょっと練習不足で、自信なさげな感じも、音からわかる。学生の頃の、合唱コンクールでのピアノ伴奏者だった瞬間。バンドでの、キーボード奏者。その時、その時の、あの何とも言えぬ緊張感が大好きで、ライトを浴びる気持ち良さ。やめられない。それなりに、刺激的な人生だったのかなぁ。その時は、とてもしんどくて、大変な事でも、今となればキラキラした思い出になってる。私の人生なかなか楽しい。尺八とキーボードでセッションしてお祭りのステージで、演奏させてもらった事もあった。その時は音を愛して止まない人の音楽愛の光に包まれながら、奏でる音がキラッキラ輝く。温かい思いで会場がいっぱいになる。もう二度と感じる事の出来ないすべて。良き体験をさせて頂き、感謝しかない。その場の温度が1℃か2℃上がっているんじゃないかと思うほど熱い人。その人から溢れ出る愛の量とでもいうのか。この世でそんな人離れしたような人に会えただけでも私の宝。真の愛をありがとう。
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