第6話
夢を持ってその場所を選んだ。旦那さま。牛舎があり、格安で丁度良かった。ぱっと見は小屋だが、中は人が生活できるようにリフォームして、悪くはなかった。湿地を埋めてるところの為、じめっとしてしょっちゅう蛇を見る。牛は黒毛和牛。牛肉のための育成。JAからの仕事も引き受けて、こなしていく。人が良く誰からも好かれるような性格で、コミュニケーション能力も高く、人を笑わせるのも好き。できちゃった婚で、子供が生まれたのが先だったんで、毎日が忙し過ぎて、円形脱毛でハゲの部分が出来てたのは、驚きの何ものでもない。すべての初体験に毎日ワクワクだらけ。近所の方達は、段々と覚えていく。花植えや公民館掃除。保育所の親の集まりだったり。何でも、始まりはいい。また若いから、次々と子供生まれても、仕事してても、毎日食事作りは怠惰しないで、頑張って生きている。すべてバラ色!奇形児の娘を育てながらも。でも、私はこの頃から暗い顔も見せるようになってきたかも。忙しいからイライラもするし、感情の起伏は激しくなってきたかも。人間だもん。子供達も小学生になって何かとPT Aの集まりも増えて、スポーツ少年団に所属するようになると当番制で見守りもあったり。と何かと、時間に束縛される日々。ゆっくり家族で旅行など、全くなかった。
JAの仕事の相棒がお酒好きで、いつでもお酒飲みながらいたらしい。旦那さまはお酒飲みながら人の家には行かなかったのに、その方に感化されたようで、似たような事をするようなっていった。いつの日か、飲酒運転で捕まったって、免停だって。言われた時にはもう立ち直れないんじゃないかぐらいの勢いで、落ち込んで。私も仕方ないから、足になって、手伝っていたけど、周りから何だかんだ言われるようになって大変よ。彼が車運転できるようなった頃から、私の中の私がウンザリし始めてた。お酒ばかり飲んで現実か非現実かもわからなくなるような状態になってて、家の仕事もしなくなって、牛を何十頭も殺してしまって、感覚がイカれているのは確か。私も同じくらいおかしくなっていたかもしれない。後始末は親と関係者にお願いして、迷惑かけて。馬鹿な息子に、馬鹿な嫁。と思われてただろう。
段々にこの辺りで仕事するのも嫌になってきたらしく、他県の友人から紹介され、家から、出るようになった。
お酒ばかり飲んで家にいる頃は、家の水周りもイカれたらしく、水がでなくなったので、私は毎日実家から50ℓくらいずつタンクで運んで生活していた。夜は近くの温泉に行く。子供達と私はこの毎日いろんな温泉に行くのが、すごく楽しい事になっていた。でもそのうち、娘がインフルエンザになってしまったんで、子供達連れて、実家に戻った。それからは家に行く事なく、実家から学校にも送っていた。旦那さまも、イヤイヤなのを連れてきた。でも、最初から婿としてマスオさん状態だったら良かったんだけど、1番酷い状態で、それも嫁の実家だなんて。旦那さまにとったら、まさに地獄よね。嫌で、逃げ出すね。私の父親も我慢出来ず、病気でもないのに、日中お酒飲みながら働きにも行かない若い男を見たら、文句のひとつふたつは言いたくなるようで。こっちも疲れる。今は普通の状態じゃなくて病気の一種なの。って言っても通じない。なるようになる。で、やっぱり逃げて家に戻ってしまった。仕方ないから、別れようってことになって。1番へんな時に本当はする事じゃないんだけど、私も変だし、旦那さまも変だし。
でも、旦那さまもあの家あの場所から離れて暮らすようになったら、変がなくなった。私はその頃、あの場所に御神酒をあげ、感謝して、2度と戻らない事を約束したら、カラダに入り込んでいた何かがスーッと頭のてっぺんから抜けていった。私のすべての辻褄が合ったのはたいぶ後からだった。
ここから現在。てっきり彼女さんと結婚してたと思っていた元旦那さまが子供達とお見舞いに来てくれた。緩和ケアに転院した日。この日はまだ桜が満開で、家族写真撮るのには最高にベストな日。たぶん娘はこの時点で私があと2ヶ月しか生きられないと言われただろう、シチュエーション。久々に会った家族との楽しいヒトトキ。まさか元旦那さまが、目の前にいるなんて、これまた私にとっては夢のような感覚なので、現実っぽくない。娘や息子はそれぞれ時間を作っては父親とお酒飲みながら話してるみたいだけど、私はいつもかやのそとで、関わるときがない。3番目の子は父親といても何を話していいかわからないと言う。みんなで、外に出て、満開の桜の中で幸せそうな笑顔でカメラを見る。実際のところ幸せだったからいい写真になった。私の髪は抗がん剤の副作用で、かなり薄くなってたので、娘にプレゼントしてもらったウィッグつけての写真だから、どっちみち記念になる。子供達の結婚式以来の家族写真になる。病室内の面会人数は2人ずつと言われてるので、みんなで一緒は外にでるしかない。それか、面会室みたいな所に私が行くか。あまり動きたくない私は病室にいると、とっかえ引っ換え2人ずつの組み合わせが、変わって面白い。
「結婚するって言ってたよね」
「とっくに別れた」
元旦那さまとの会話。だって、結婚するから同じ名字を使わないでほしい。と長々な手紙で私はお願いされたから、30年使っていた名字を変えたんだよ。裁判所まで行って手続きして、その後の関わる通帳やカード。資格の名字変更も全部やって、そして、子供達の名字まで変えされられて。子供達にとってははじめましての名字だから、本当に酷い事させられて。私だけだったら別に元に戻すだけだが、何なん?この人って、やっぱりわかんない。それなのに結婚してないって。なんで?どうしてよ!長男は世帯主になってたから、孫もつくってくれてて、名字変更等には関わらなくて良かったから。娘は出たり入ったりしてて、今だに荷物が前回、前々回の名字で届く。運送業者の方たちは変に思わないか心配になる。が本人はどう思われようがどうでもいいと言う。結婚詐欺師とか?おかしくてしょうがない。へーんなの!笑っちゃうでしょ
でもね、あれから桜満開で写真撮ってから1年たとうとしてる。私の誕生日には外泊願いだして、温泉に行って来た。娘のサプライズでホールケーキまで、用意してもらって。ごちそうの他にだったから。完食するのもけっこう大変だったわ。もうこれが最後かも。を全部に向けながら、毎日すごしてる。ひな祭りには、ピアノ演奏もあるらしく、私は久々にナマのノクターンが聴きたいので頼んでみてた。実際聞けるかどうかは、わからないが楽しみがあるのは良い。
夏の花火大会も良かった。名のある有名な花火大会には、一度も行った事が無い。だがこの辺りでは1番綺麗と言われる花火。それが病院の玄関にでると見える。賑やかなお祭り騒ぎの雰囲気。楽しい気配はいい。気持ちが上向きになる。最初と最後のフィナーレがすごく激しく、綺麗の連続。子供達が小さい頃には一緒に見たが、今回のように、花火だけに集中して見るという行為は初めてかも。やっぱり年をとるほどいろんな事に初体験を感じる。花火は見るより、花火をやる。お盆みんなが集まって、外で焼肉やって、フィニッシュは花火の流れが定番になっていた。ずーっと楽しい日々の連続だったのねー!
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