第5話

 私は今日もベットの上。肝臓からの液体を抜くか、抜かないか、ちょっと抜かないで様子見したい。と医師達。私が家に帰れるためにはどういう状態が良いか模索中。この先をあまり想像出来ない私は別にどっちでもいいんだけど。最近はこのカクヨムのおかげで暇だった時間の穴埋めが出来てる。看護師さんが今案内を持って来た。ひなまつりだって!

りっぱな雛人形飾ってるもんね。


 毎日顔から頭から汗が溢れ出る。カラダは冷たくなって、足は電気のブランケットだ。いわゆるホットフラッシュってやつ?

 パジャマが汗でグタグタになって、何度も取り替えて。子宮はくっついてあるから、お年頃なのだ。 どっから出てくるこの汗?


 人生で一番良い時期っていつ?

 何をやっても楽しんでいたら、いつでもハッピー!

 今のこの瞬間がいい! でも最近は同じくらい虚しさも感じる。カラダが自由じゃ無いから?

 入院してるから?昔を思い出して文字書き出してると楽しい。苦しかった事でも過ぎた事だから楽しい。自分から沢山愛を捧ぐ。単純に口角上にあげるだけで気が上がる。誰でも出来る簡単な魔法。苦しい時ほどやってきた、私の口角上にあげ。接客業だから身についた。居心地良くするのが大好き。あーまたお腹空いてきた。またコンビニ連れてってもらおうかなぁ。


 今日の夜ご飯メニュー最高!牛丼、ポテトサラダ、パイナップルの缶詰。なかなか病院食で出ない牛丼、やっぱり美味しいねぇ。食べたい物を並べるとキリがないくらいある。

「いただきます」

「ごちそうさまでした」

毎日言えるだけでも本当は物凄く幸せ。

だって今食べるために生きてるような感覚。

何もしてなくても、お腹が空いてくる。

 以前ならば、自分が食べなくても子供達に食べてもらいたいって思いで、優先順位が逆転だったのに。今は自分の事だけで、いっぱい。子供達の方が私に気を使う。


 麻薬の貼り薬。このおかげで何とも表現し難い不快な感覚が抑えられてるようだ。調子が良いからといって、一気に半分量に減らしたら、泣き叫びたくなるような、暴れたいような、なんとも自分をコントロールできない、ひどいと鎮静剤だされるんだろう感覚。あまりにも違うので、増やしてもらう事にした。2mg増えたらまともな私になった。自分だと思ってるこの意識。わかんなくなったら楽なのかなぁ?有るうちはまだ私っていう人を生きる証拠?やっぱりある程度、時間も束縛されながら夢中になる、その没頭している最中の刺激ってあればある程面白い。時間がいくらでもあって自由過ぎると疲れる。無いものねだり。変なの!

 次の日

 今定期的に来てくれる薬剤師が部屋にいる。ちょっとした私の暇潰しの話し相手。非常に盛り上がってしまった男と女の別れ話。ある日の朝の電話。

「今、警察の人達が来て、旦那が連れて行かれた」

「何それ?」

「婦女暴行罪?わいせつ罪?とか言ってんだけど」

犯人らしいとずーっとマークされていたらしくその日の朝、逮捕された。娘の旦那。美容師でチャラチャラした感じが最初から好きじゃなかった。会った時から違和感があったが娘が決めた人なら仕方ない。この人が義理の息子?


「どうしよう?どうすればいいと思う?いまなの?」

娘は以前から占い師に頼ってて、言われてた事があった。旦那と別れる時がくる。その言われてたのが今回の事だと思ったらしくの、いまなの。だったみたい。


「あなたがそれでよければ、別れて帰って来てもいいんじゃない!」

「あたなの望むようにして!」

「いいよ。帰って来ても」


 誰もこんな事が起こるなんて、テレビのニュースではたまに耳にするような、犯罪名を自分の中でリピートさせる。段々と腹が立ってくる。なんで?かわいい奥さんがいるのになんて事してるのその男。何に不満があって犯罪おかす。もともと、どういう男か知らないからざわざわしてくる。そんなのと早く縁切りしてもらいたくなる。美容師でどれだけ毎日ストレス感じているかなんて、知らない。誰だって、毎日ストレスの連続でしょ!発散の仕方が狂ってる。娘に愛情を向けた事があるのか?愛が無いのか、最初から?


 愛された事がない人は愛せない。愛し方を知らない。なんて、聞くけど。口だけの愛してるよ。なんて誰でも言える。だけど本当に愛のある人の言葉は、一つ一つに言霊がのって、温かい気に包まれる。一緒にいて居心地が良い。本当に愛の光に包まれる。ことばのやり取り。行ったり来たりがあったかい。末の子とはいつも、お互い居心地良いのが好きだから楽しい会話で盛り上がる。今だにいつも楽しい。もしかしたら、娘との接し方自体間違いだったかなぁ。相手に愛が足りないと思っていたが、実は娘に愛が足りなかったのかな?もちろん男に愛がなかったのは良くわかる。でも、私も娘に向ける愛情が足りて無かったのかなぁ?


 娘は人を好きになるってどういう感覚?とこの前ほろっと言った。好きの感覚わからないなら、愛なんてほど遠くにあるのかなぁ。これは、私の育て方に問題あったのかなぁ。自分では、奇形で生まれてきた娘には特別な感情はかなりあったが、ほんっとどん底で真っ暗な、泣いてばかりいるような毎日もあったが、どんどん綺麗になって可愛くなっていく。明るい毎日に変わっていく日々も一緒に過ごしてきている。喜怒哀楽はかなり激しいが、何でもあってすべて隠さず曝け出して生きてきた。子ども達と共に。でも私は介護の為に旦那さんと離れ離れになってしまっている。お父さんと小さい頃しか一緒に過ごせなかった子供達はお父さんの愛情をあまり知らないかもしれない。やっぱり普通の家庭という形からはほど遠いだろう。父親の愛情はまったく足りてはいない。娘の男を見る目はほんっと育って無いのも、これが原因なの? 


 せっかく、娘お気に入りのデザイナーズマンションで、近所の方達とも顔馴染みになってきた頃だったのねー。離婚届もハンコを押してもらって提出して、留置所にいる間に綺麗にマンション片付けて、帰って来る場所もない状態までして、あなたは戻ってきた。子ども代わりのボストンテリアと共に。


 私のチワワとパピヨンのミックス犬のプーコが、娘のボストンテリアに初顔合わせした時は口から泡を吹いて気絶してビックリした

よ。よっぽど匂いがひどくて強くて、独特で嗅いだことのないもの。家中にうんこしまくって、吐き出して酷い。酷い。新幹線と車で酔ってしまったらしく、とんでもない状態だったよねー。外にももう1匹犬がいたんだけど、その子とプーコはとても仲良しでお互い会うのを楽しみしていた。

 それに比べて娘の犬っていったいあんたは何ものなの?って感じよ。お互い近付くようになったのは1ヶ月ぐらい後だったような。

 今じゃ一緒に寝てるよね。動物達にはすごく好かれる娘。だから、愛情たっぷりあるんだけどねー。人には向けられないのかなぁ?

摩訶不思議。

 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る