これはむしろ、囚われたと言った方がいいのでは……

まえがき


これなら大丈夫やろ……?

そうだよな……?


─────────────────────


 物心ついた頃から母親がいなかった加賀人かがとは、無意識のうちに『自分一人で何とかしてみせる』と、誰にも頼らない自分を形成していた。


 それは、麗那れいな新那にいなの前でも変わらない。

 むしろ下手に前世の記憶が残っているせいで、年端のいかない少女達に対して彼女達を保護しようとする視点に立っていたのだ。


 『前世は関係ない』と言っておきながら、加賀人かがと自身が一番前世に囚われている。そして、その矛盾に彼は気づいていなかった。



 心を縛っていたその鎖が、彼女たちの手によって解かれた。

 ようやく『高校生・月島つきしま加賀人かがと』になれたのだ。


 前世のしがらみから完全に開放され、『加賀人かがと』としての心に気づいた。

 そして、『自分は捨てられない』という確かな証拠を求め———



 転げ落ちるのはあっという間だった。











 その日の深夜、4人の共同部屋には、いつもと違った熱気が籠っていた。



「すきっ……! かがとっ……!」


「待っ……新那にいなっ、ペース早すぎっ……んむっ!」


「んっ……♡」



 麗那れいなのキスによって口を塞がれる。かなり深いやつだ。

 新那にいなに上から乗っかられている・・・・・・・・俺は抵抗することもできず、ただされるがままに貪られる。



 全てを飲み込むような快楽に包まれ、俺の意識は闇に溶けていった———













「朝か……っ!」



 翌朝、窓から差し込む光で微睡みの中から浮上する。


 被っていたタオルケットを捲り———その下から現れた、一糸纏わぬ姿の麗那れいな新那にいな紗那さなの3人の姿に俺の心臓は大きく跳ねる。



 あぁ、そうだ……記憶が曖昧だけど、昨日はやってしまった・・・・・・・


 そして、存外悪い気分ではなかったのは、はっきり覚えている。


 彼女達の美しい肢体が、熱く熱を帯びた吸い付くような肌が、柔らかくもしっかりと指を押し返す弾力のある胸が、愛を囁く上ずった声が、鮮烈な愛を秘めた心が———全て、自分のものになっている。


 身体の奥から湧き出てくる熱と、全身を包む快楽を感じながらも、加賀人がかとはこの状況に心が満たされていくのを自覚したのだ。


 あぁ、俺は最初からこうしたかった・・・・・・・のだろう……と。



 しかしまぁ……凄かった。

 容赦がないというか、目がキマッてるというか……肉食獣に補食される草食動物って、きっとこんな気分なんだろうな……。


 ただ、これだけは言わせて欲しい。

 紗那さなには、俺からは・・・・・手を出していない。


 成人済みの麗那れいなと、同い年の新那にいなはまだ許されるだろう。しかし、10歳の紗那さなはダメだ。


 もちろんそれは分かっていたし、俺は必死に抵抗した。けど───










紗那さなはさすがに……』


『大丈夫だよ? お兄ちゃんは被害者・・・になるだけだから』


『何を言って───』


『私は腕ね。新那にいなは脚をお願い』


『うん、了解♪︎』


『まさか……! 待て、離せっ……!』


『だって、こうでもしないとお兄ちゃんは絶対さなにはしてくれないでしょ?』


加賀人かがとは優しいから、小さい紗那さなは守る対象と見ちゃうもんね……』


『当たり前だろ! だから───』


『ごめんね、加賀人かがと君……だからこうするの・・・・・。あなたは抵抗もできず、私達に襲われる側なの』


『そんな免罪符があったら、仕方がないよね?』


『お兄ちゃん、共犯者になろ……♡』


『待っ───』










「……いや、ダメだろ……」



 確かに状況的には、『俺は必死に抵抗したけど3人がかりで襲われてどうしようもなかった』としか言えない。


 でも、ダメなんだ。

 それ・・も『良かった』と思ってしまっている自分がいることが。


 『彼女達は、決して自分の前から居なくならない』ということを心と身体で感じ、どうしようもなく安堵してしまっている。


 そして、それ以上に『彼女達を繋ぎ止めておきたい』という欲望が、自分の中で渦巻いている。


……俺は思ったよりも、独占欲が強い男だったようだ。


 気を付けないとな……あれが原因で、紗那さなが歪んだまま育ってしまうかもしれない。



「はぁ……これは確かに見捨てられないだろうな……というか、人生を賭けて俺が責任を取るしかなくなってしまったな……」



 未だ幸せそうな表情ですやすやと眠る3人を優しく撫でながら、俺は心の底からそう呟いた。

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