閑話 その2
「な~んて話、さっき食堂で聞いちゃった」
「そう……」
ニヤニヤした笑顔でそう告げてくる友人の
私が通うキャンパスには大きめの中庭があり、テラスのようにイスやテーブルが置かれている。お昼時に込み合う食堂を避け、中庭を利用して昼食を取る学生も結構いるのだ。
普段から弁当を持参する私も、基本的にはここを利用して昼食を摂るようにしている。
そんな私の前で、レポートを広げながらもお喋りで全然進んでいない女性は、大学でできた友人の
正直、私はずっと前世からの想い人……
ただ、その考えが変化してきたのは高校生になったあたりから。身体的にも成熟したからか、私を狙ってくる男子が一気に増えたのだ。
物心ついたころから、まだ見ぬ想い人に添い遂げる決意をしていた私は当然すべてを突っぱねてきたけれど……どれだけ興味がない素振りをしても、アタックしてくる男子は後を絶たない。
うんざりする。
私が何かを捧げるのは
それが非常に無駄だと思ったから、少しでも味方を増やしておいた方がいいと考えたのだ。要するに、周りを友人で囲って男が入ってくる隙を無くすのだ。
『友人を利用している』と言われればそうなのだけど……欲望のままに暴走する男の悪業も、随分見てきた。
そんなわけで、私の友人関係は広い方だと思う。
母のブランドのモデルもたまにやっているから、そっち方面にも顔が広かったりする。
そんなたくさんいる友人の中の一人が、
同性の私の目から見ても、彼女は非常に可愛い。
身長が低いのは庇護欲をそそるし、それでいて時折見せる力強い瞳は、浮ついた男子大学生の心を惹き付けるには十分なようだ。
……その瞳に、なぜかこの娘は敵に回してはダメだと、本能的にそう思った。
結果、こうして一緒に昼食を食べながら会話に花を咲かせるぐらいの関係にはなることができたのだった。
「
「まぁ、
「提出は明日だから大丈夫です~。……だからもっと時間がある夕方とかにしようって……」
「ダメ、講義終わったら早く帰らないといけないもの」
「……それって、
「……彼氏ってわけじゃないけど……」
「じゃあじゃあ、
「そういうことね」
「そうよねそうよね! いや~~っ、あれだけ男子をゴミを見るような目で見てた
「内緒にしておいてよ? まだ付き合ってるわけでもないし、下手に詮索されても嫌だから」
「大丈夫! 私、
「……信じてるわよ」
「任せて!
「……? まぁ、それならいいけど」
「でもさぁ、大学生のカップルなんて遊びが多いんだろうけど、
「それは……」
そんなの、当たり前だ。
彼とエッチしたい。
彼と結婚したい。
彼の赤ちゃんを産みたい。
彼と一生を共にしたい。
そんな思いは、彼との同棲を始めて、より一層強くなっていく。
普段クールを装っている私が、心の中ではそんな風に思っていると彼が知ったら、どう思うのだろうか。……きっと受け入れてくれる。受け入れて欲しい。
私の全てを受け入れてくれる
それは、どれ程幸せな日々なのだろう。
キュンッと、お腹の奥が疼く。
最近こうなることが多いのは、きっと心も身体も彼を欲しがっているからなのだろう。
クールを装っていても、身体は正直だ。願わくば、彼の欲望のままに貫いて欲しい───
「
「……ごめんね、なんでもないわ。それより、レポートが進んでないみたいだけど」
「ぅっ……」
片手でお腹を擦る私を見て、
さすがに『彼のことを考えていて子宮が疼いた』なんて言えるわけもなく、適当にごまかしておく。
「だ、大丈夫だよ! 今は
そういって笑顔を見せる彼女のレポートは、いまだに綺麗な白だ。
本当に間に合うのだろうか。
「……
「私と妹の
「毎日作るの大変じゃない? 早起きしないとダメだし」
「もう慣れたから。それに、作るのも楽しいしね」
私たちがお弁当を作るようになってから、
「栄養バランスも考えなきゃね」
「十分ヘルシーなお弁当だと思うけど……?」
「最近料理が楽しくて、ついつい作りすぎちゃうのよね。
「ストイックだなぁ……まぁ、だからこそそのプロポーションってことだよね。羨ましい……」
男子に向けられるそれとは違うけど、まじまじと見られるといたたまれない。
私が小さく身を捩ると、
「喋ってばかりでレポートやらないならもう行くわよ?」
「わーっ、待って待って!」
「でも、もうすぐお昼終わるし」
「う~~っ、じゃあ帰りにちょっとだけ! 30分だけでもいいから!」
「全く……仕方ないわね。でも、その時までに全く進んでなかったら無視して帰るからね?」
「やっぱ神! いや、聖女
何かと私を崇める
控えめに手を振りながら
ただ、それは疲れからくるようなため息ではなく、まるでため込んでいた何かを吐き出すような———
「はぁぁぁ……もう、
その言葉は、『友情』というには重すぎる何かを孕んでいるようだった。
「大丈夫だよ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます