「「「私を見てっ!」」」
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
「今後は自分を顧みないようなことはしないと、約束できるか?」
「ん、約束します」
「ってわけで……姉さん、
「仕方ないわね……」
「
「よし、じゃあこの件はこれで終わり! いつも通りに戻ろうぜ」
「お兄ちゃんありがとう!」
パァァッ! と花が咲いたような眩しい笑顔を浮かべる
その一方で
「それじゃ、
「えっ……どこかに行くのか?」
「えぇ、服を買いに……ね」
「えっ———」
「あっ、いま『あれだけ服を持ってるのに、まだ買うのか?』って思ったでしょ」
「買うに決まってるでしょ! もしかして、
「そんなのだめだよ! お兄ちゃんの服も選んであげる!」
「たしかに、
異論を挟む余地もなく、同行を決定されてしまった……。
ファッションとかよく知らないし、あんまり乗り気にはなれないけど……彼女達はもう、俺を連れて行く気満々な様子だ。
……行くしかなさそうだな。
♢♢♢♢
断ることもできず……というか、
というわけで俺は、
「ここ、そこそこお高いお店では……?」
「まぁそうね。有名なブランドだし」
彼女らに連れられてやってきたのは、ファッションに疎い俺でも聞き覚えがあるような有名ブランドのお店であった。
ガラス張りの向こうには、何やらお洒落な格好のお客さんが、これまたお洒落な格好の店員さんと話している姿も見え……なんかこう、よく分からないけど凄い場違い感に苛まれる。
全く知識がない俺がこんなところに居ていいんだろうか……。
「有名なブランドだけど……ここ、お母さんが手掛けてるブランドだから」
「えっ、マジで?」
「当然お母様が有力株主だし、私達も会員だからね……割引も受けられるし、お父様からお小遣いも貰ってるからお金の心配はないわよ」
「お父さん優しいよね、結構お小遣いくれたし……あっ、別にお金をくれたからとか、そう言うつもりはないけどっ」
「ねー、早く行こう?」
お店の前で喋っているだけの俺らに待ちきれなくなったのか、
「試着室、使いますね?」
「————っ! ど、どうぞっ……!」
分かるよその気持ち……彼女達、客観的に見れば現実離れした超絶美少女なんだよな……。
で、その店員さんは、彼女達と俺との間で、視線を行ったり来たりさせている。こんな美少女達に囲まれた男が一人……しかも、彼氏彼女の距離感だ。一組が、ではなく、全員が。
そりゃ気になるよね、関係性……。
「えっと……彼氏さんはこちらでお待ちいただけますよ」
「……家族です、一応……」
『家族です』と言った瞬間の、『そんなわけあるかぁっ!』と言いたげな店員さんの表情が、めっちゃ印象に残った。
「
「っ———」
待つことしばらく、最初に姿を見せたのは、
———いや、凄い。
シンプルなロング丈の白いワンピースが、もともと色素が薄い
『綺麗』だとか『可愛い』だとかはもちろんだとして、それ以上に『幻想的』と表現した方がいいだろうか。
「
「っ! あっ、いや、あれだ……すごく綺麗だと思う……」
ダメだ、完全に見惚れててそれ以上の感想が何も出てこない!
そもそも女性のファッションを褒めるなんてことしたことないし、今の
精いっぱいの中でかろうじて出てきた一言が、『綺麗だ』だけだった。
「……ふふ、本音っぽいし、今はそれだけでいいかな。次の服も見せるから、ちゃんと感想考えておくのよ?」
白磁の肌をほんのりと染めて満足そうに微笑む
……いや、テンパりすぎだろ俺……。
見惚れて一言しか言えないなんて……あとで笑われるな。
俺が一人自己嫌悪に陥っていると、今度は別の試着室のカーテンが開いた。
「お兄ちゃん、これどーぉ?」
「おぉ———」
出てきたのは
薄いピンクの、レースが付いたシャツ? (よく知らないけど、レースブラウス? というらしい)と、白いひざ丈のスカート(よく知らないけど、フレアスカート? というらしい)に身を包んだ
胸元のリボンが、これまた可愛らしさを引き立てている。
「可愛いのはもちろんだけど、こういう服だと急に大人っぽくなるな」
「そうでしょ! えへへ、これならお兄ちゃんの彼女に見られるかなぁ……」
「それはちょっと……」
「あっ、
声を方を向くと、そこには着替えた
「どう? こんなのも似合うでしょ!」
そう言いながらポーズ&ウィンクする
美人過ぎて取っ付きにくい彼女だけど、カジュアルな服装のおかげでそれもなくなり、魅力を倍増させていた。
「
「えー、それだけ? もっと褒めてよ、ほらほら!」
「いや、十分可愛いと思うし———」
「こら、
再びカーテンを開けた
「姉さん、着替えるの早くない?」
「だって、まだまだたくさん着る予定だし……
「今私の番なのに!」
「早い者勝ちよ? あんまり時間を掛けると
「
「お、おぅ……」
このペースで三人が感想を求めてくるのか……?
それはちょっと辛い———
なんて口が裂けても言えない俺は、これまでにないほど語彙力を駆使して、連続で迫る彼女たちの猛攻を躱し続けるのだった。
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