お約束の展開も、3倍になってお得だね!

 3人に襲われそうになった俺だったけど、親父が呼んでくれたお陰でなんとか助かった。


 なんでも、『せっかくの記念日なんだから』と、全員で外食に行くとのことだ。

 それも、ちょっとお高めのところへ。


 予約の時間もあるからさすがに時間を食うわけにも行かず、3人も渋々ながら解放してくれた。


 3人とも目が本気だったから、あのままだったらどうなっていたのだろうか……。



 その後、綾那あやなさんたっての希望で選ばれた回らない寿司屋で舌鼓を打った。


 お預け・・・をくらってちょっと不機嫌だった麗那れいな達3人も気に入ったようで、最終的には笑顔になってくれたようだ。


 外国人にも寿司って人気なんだな……とかどうでもいいことを考えつつも会話は弾み、俺も楽しい時間を過ごすことができた。



 家族の仲も深まったことだろう。

 ……俺に対する親愛度は最初からカンストしてるけど。



 事件は、そんな日の夜に起こったのだった。



        ♢♢♢♢



 油断していたというか、ずっと親父と二人だったから仕方がないというか……とにかく、こればっかりは悪いのは俺だ。


「ご、ごめんっ!」



 俺は、風呂を上がったばかり・・・・・・・・・・で一糸纏わぬ姿の麗那れいなから目を逸らし、慌てて謝罪した。


 そういう習慣がなかったと言えばそうなんだけど、先に確認しなかった俺が悪い。


 急にドアを開けられて少しビクッと身構えた麗那れいなだったが、それが俺だと気付き途端に笑顔を浮かべる。



「一緒に入りたいなら言ってくれればよかったのに……」


「いや、全然そんな気はなくてっ……というか隠してっ、いや違うドア閉めるから───」


「むしろ見てほしいし……それなら明日は一緒に入ろうね……♡」


「なんでドア開けようとしてんのっ、一緒には入らんからな!」


「あっ」



 とりあえず逃げる!

 麗那れいながなにやら残念そうな声をあげるが、こんなところ見られたら初日から家族会義案件だからな!










「いや本当すみませんでした」


「私は大歓迎なんだけど?」



 その後、しっかり部屋着を着て共有部屋に戻ってきた麗那れいなに、俺は全身全霊で謝った。


 ノータイムで許してくれた。

 マジかよ。



「むしろ、私の身体を見て褒めてくれたりしないの?」


「いやそれは───」



 麗那れいなの言葉で、彼女の裸体を思い出してしまう。美術作品のように完成された美しさでありながら、女性らしさが溢れるスタイル。


 正直言って、『エロい』という感想しか出てこない。

 が、そんなこと言えるわけもなく。



「……勘弁してください……」


「あらら、ギブアップしちゃった……『エロいな』とか考えてた?」


「っ!?」


「ふふっ、図星? 女性として見てくれて嬉しいわ♡」


「と、とりあえず風呂入ってくる!」



 麗那れいなに図星を突かれて反論できず、その場から逃げるように風呂場へ。悶々としたままの俺は……またやらかした。



「きゃっ! か、加賀人かがとっ!?」


「っ!? ご、ごめんっ!」



 ドアを開けたそこにいたのは、ちょうど今から風呂に入ろうと、下着を下す瞬間の新那にいなだった。


 新那にいなの身体も白くて美しく、麗那れいなが美術作品であるなら、新那にいなは雑誌の表紙を飾っていそうな輝きを放っている。



 あぁぁぁぁぁっ!!

 なんで俺は同じこと繰り返してんの!?

 麗那れいなあれ・・で頭がいっぱいで———って、クラスの奴らが言った通りになってんじゃねえかっ!



「いやマジでごめん! 何も見てないから———」


「あっ、そういうこと……仕方ないわね。はいこれ、手出して?」


「———えっ、何これ」


「欲しかったんでしょ? 私のパンツ。使っていい・・・・・よ……?」


「っ~~~! そうじゃない!」


「あっ!」



 手渡された新那にいなのパンツを洗濯機に投げ込み、部屋へ猛ダッシュ!

 こんなこと立て続けに起こるか普通!?



 頭の中を新那にいなの裸体で上書きされた俺は、ひとまず共有部屋に逃げ込んで気持ちを落ち着かせる。


 そんな俺を見て、麗那れいな紗那さなは笑っていた。



新那にいなにもやったんだ?」


「顔真っ赤にして慌ててるお兄ちゃん可愛い……」


「本当……お前らと同棲生活を送るってことの意味がわかったよ……」



 にしては初日から色々と起こりすぎだけど。常にこれ・・が起こる可能性があるってことか……俺の理性、大丈夫か……?



紗那さな、次風呂入るか?」


「んー……ううん、お兄ちゃん先に入っていいよ? なんか疲れてそうだし」


「それはまぁ、うん……」


 この10分弱の時間でめっちゃ疲れた……しかも全部俺のせいだから、誰にも文句を言えない。熱い湯に浸かってゆっくりしたい……。










 しばらくしてパジャマを着て戻ってきた新那にいなに土下座する勢いで謝り倒した後、ようやく俺は浴室へとたどり着いた。


 もちろんノックして、誰も入っていないことを確認してから、だ。三度目はないからな。ここまで難易度の高いダンジョンは前世でも数えるほどしかなかったぞ……。



 熱めの湯に肩まで浸かり、大きく息を吐く。

 一人でいる時間が久しぶりだと思ってしまう程振り回された一日だったな。

 あ~……体に染みる……。



 しかし、麗那れいな新那にいなとの間に起こったことに、3人目が黙っていられるはずもなく———疲れを溶かしていくような一人の時間も、浴室に乱入してきた紗那さなによって終わりを迎えるのだった。


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