ようやく再会できたね……♪

 まさか、あの時俺と相討ちをしたルヴィリエが、転生して俺の前に現れるとは。


 いったい何を企んでる?

 あまりよく覚えてないけど、彼女の最後の言葉は、『次は逃がさない』だっけ……?


 ぇ、俺もしかして復讐される?



「親父、再婚とか聞いてないんだけど」


「すまん、イチャイチャしていて伝えるのをずっと忘れていた」


「マジでやめて」



 親父の口から『イチャイチャ』とか聞きたくねぇ……。



「親父、この人と再婚は考え直した方がいいんじゃない?」


「……加賀人かがとは反対なのか? 何故なんだ」


「何故って…………」



 いかん、説明する方法がない!

 『前世が敵同士で、復讐するために来たんだ』って主張しても、頭おかしいと思われるだけだ。



「すぐに認めて貰うことはできないと思うけど、私はきっといい母親になってみせるわ。お願い、加賀人かがと君」


「それに、彼女の娘達とも話はしたが、3人とも加賀人かがとのことを気に入ってくれていたぞ?」


「え、娘が3人……?」


「えぇ、3人とも、加賀人かがと君とどうしても会いたいって楽しみにしてたのよ?」



 魔王ルヴィリエとの最終決戦で、彼女の娘と名乗る幹部も3人だった。つまり、そいつらも復讐のために全員転生して……?



「まぁ、いきなりこんなこと言われてもなかなか受け入れづらいわよね。それなら、顔合わせということで今晩お家にお邪魔しても?」


「……そうだな……加賀人かがと、一度家に来てもらって顔を会わせよう。話をしてみれば、お前の気持ちも変わるかも知れないからな」



 くっ……反論できる材料がない。

 しかも俺以外の全員が乗り気だ。



「わ、分かった……」


「決まりね。加賀人かがと君、そんなに警戒しなくても大丈夫よ」



 警戒してる原因はあなた自身なんですけどね!? くそっ、こんなことなら前世の力をそのまま残しておくべきだった!



        ♢♢♢♢



 家に帰ってからも、俺は落ち着かない時間を過ごした。


 ルヴィリエ……綾那あやなさんはともかく、その三人娘は、俺が命を奪った相手だ。当然恨んでいるだろうし、会うのが怖い。


 しかも親父が再婚して一緒に暮らすとなると……どんな日常が待っているかなんて、想像もしたくないほどだ。


 リビングのソファに寝転がって、気を紛らわすために始めたゲームも手に付かず、不安だけが募っていく。



 そして、ついにその時が訪れた。


 インターホンが鳴り響き、続いて玄関が開く音。彼女達を迎えに行っていた親父が帰ってきたのだ。


 「お邪魔します」という声と、複数人の足音。俺は今すぐ逃げたい感情を抑えつつ、せめて礼儀はと玄関ホールへ迎えに出た。


 そこには、親父と綾那あやなさん。

 そして———



 俺は思わず先程までの警戒も忘れて息を飲む。


 そこには、ビスクドールと見粉うほど恐ろしく容姿が整った、3人の美女・美少女が立っていたのだ。













「さて、改めて自己紹介をしよう」



 紅茶を用意し、全員がテーブルについたところで、親父がそう切り出した。



「私は月島つきしま 龍司りゅうじ。そしてこちらが私の息子だ」


月島つきしま 加賀人かがと……15歳。近くの青海高校の1年だ」



 そう、最低限の自己紹介をしておく。

 確かに彼女達はものすごい美人だけど、俺の懸念は変わらないからな。



如月きさらぎ 綾那あやなよ。龍司りゅうじさんにはとても良くしていただいているわ」


「私は長女の麗那れいな……年齢は19歳で、央都大学に通っているわ」



 最初に答えたのは、長女の麗那れいなさん。色素の薄い白いロングヘアが美しい、超絶美人だ。切れ長の目と冷たい雰囲気が、近寄りがたい印象を与える。


 ……言われてみれば、どことなく前世で戦った幹部の一人、『カミーリア』に似ている。


 それにしても『央都大学』って、国内トップの大学じゃないか……天才かこの人……。



「じゃ、次は私ね。私は次女の新那にいな、15歳よ。加賀人かがと君とは同い年ってことね。一応、創黎そうれい学園の高等部に通ってるわ」



 次女の新那にいなさんは、薄いブラウンの髪を後ろで束ねた姿が印象的な美少女。活発な感じで、結構強気な感じがする。


 言われてみれば、どことなく前世で戦った『エイリア』に似て……というか、『創黎そうれい学園』と言えば、小中高まで一貫の、超上流学園じゃん。


 財政界には創黎そうれい学園の出身者が何人もいるらしい。この娘も天才か……。



「最後さなね! さなは10歳で、にいなお姉ちゃんと同じ創黎そうれい学園の初等部? に通ってるよ!」



 そう元気に答えたのは、三女の紗那さなちゃん。見事な金の髪のツインテールとくりくりな目がとても可愛らしい。将来は絶世の美女になると、断言できるほど整った容姿だ。


 どことなく『フレシア』に似て……つーかこの娘も創黎そうれい学園て……。

 全員超人じゃん……。



 母親が北欧出身のため、全員が日本人離れした美貌の持ち主だが、生まれも育ちも日本とのこと。


 そのお陰か、名前は日本風で覚えやすい。


 まぁでも……前世がどうとか以前に、見た目と学歴に圧倒されていたたまれない。



 俺が居心地悪そうに視線を彷徨わせていると、目が合った麗那れいなさんは目を細めて小さく微笑んだ。


 ゾクリと、背筋に冷たいものを感じたのは気のせいだろうか。



「このまま会話に花を咲かせるのも良いけど、夕飯の準備が遅くなっちゃうわ。龍司りゅうじさん、一緒に準備しましょう♪」


「うむ……」


「それじゃ、わたし達はお家の中探検しててもいい?」



 どうやら親父と綾那あやなさんは、共同で夕飯を作る予定だったようだ。それならと、家に来てからずっとウキウキした様子の紗那さなちゃんが、身を乗り出してそう提案する。



「そうね……私と龍司りゅうじさんで夕飯の準備をするから、あなた達は仲良くなって欲しいと思うわ。どうかしら、龍司りゅうじさん?」


「そうだな……加賀人かがと、彼女達を案内してあげなさい」


「えっ……」


「行こっ、お兄ちゃん♪」



 この状況で、この娘たちと俺だけの状況にするの?


 逃がさないとばかりに俺の手を握る紗那さなは、俺を見上げて満面の笑みを浮かべている。


 そして、妙に熱の籠った鋭い視線を向ける麗那れいなと、チロリと舌舐めずりする新那にいなに、俺は命の危機を感じたのだった。

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