魔王様からは逃げられない!
まえがき
どうにかなれぇ───っ!(一話追加)
─────────────────────
「———と……おい、
「っ……あぁ、
「放課中とはいえ、お前が居眠りなんて珍しいな?」
「まぁ、ちょっと疲れてたみたいだ」
俺は身体を起こし、欠伸をしながら大きく伸びをする。
時々こうして、ふとした時に前世の夢を見ることがある。命を賭けて戦ったあの日々が、俺の記憶の中にはっきりと残っているからなのだろう。
しかし、今の俺は青春真っ只中の高校生。
当然魔王と戦っていたときのような力はないし、平和な暮らしを手に入れた俺は、前世なんか関係なく自由に暮らしたいのさ。
それにしても……
ヒソヒソと声が聴こえ、俺は教室の中を見渡す。すると、目が合ってにこやかな笑顔を返す女子、頬を赤らめて目を逸らす女子……とにかくクラスの女子生徒達の注目を集めていたようだ。
「おうおう、相変わらず
「みたいだな」
「みたいだなって……なんでお前他人事なんだよ」
そう、三度目の人生———
背は高いし、顔は客観的に見てもイケメン。
運動神経は、魔王と戦っていたときを彷彿とさせるほどだ。
勉強もするすると頭に入ってくるから成績も良いし。まぁ、この学校自体は偏差値60前後の、割とありふれた進学校なんだけどね。
ナルシストと言われそうだけど……まぁそれは俺自身が原因だ。前世、前々世の記憶があるからか、『
気にしなければ生活に支障はないけどな。
「ホント羨ましいよお前。前世でどんな徳を積んだら、お前みたいなのが生まれるんだよ」
『世界を救ったんだよ』って……言っても信用しないだろう。
「ずっと見られてるみたいで、結構疲れるもんだぞ」
「出た~、自虐風モテ自慢やつ」
「そんなんじゃねぇって……」
「なら入学して今までの1ヶ月で何回告られたんだ? 言ってみ?」
「5回ぐらいか……つーか、高校デビュー的な感じで彼氏を作りたい女子が多いんだろ。そのうち落ち着くだろうし」
「ホント達観してんな、お前……しかも全部断ってんだろ? 遊び放題なのにもったいない」
「お前な……付き合うんならちゃんとお互い好きになって、だろ」
「お堅っ! いつの時代だよそれ」
ケラケラと笑う
だって仕方がないだろ……前世は恋愛とか考えられる世界じゃなかったし、その前は中年だし……。
人生で3周目にして、高校生としての恋愛は初めてなんだよ!
「ま、お前がいいなら別にいいけどよ……それだけ告られても誰とも付き合わないから、なんか色々噂になってるぜ?」
「噂って?」
「
「んなわけねぇだろうが! 誰だそんなこと言ったやつ!」
「さぁね、でも一部ではそっちの方が
「マジでやめろ……腐海の森の住人が混ざってんじゃねぇか……」
「見てる分には楽しいけどな。ま、それが嫌なら女性関係見直したらいいんじゃねぇの」
「そういうお前はどうなんだよ」
「俺、彼女できたから」
「くっ……!」
「いやぁ、
「くそっ、覚えてやがれ……!」
わざとらしく腹を抱えて笑い転げてる
その日の帰り、さっさと荷物をまとめた俺は学校を出て、少し離れた場所にある喫茶店へと向かう。親父から『大事な話があるから来てくれ』と呼び出されたのだ。
親父から大事な話が、ていうのも珍しいけど……この親父もなかなかの人物だ。
有名な会社の社長であり、お金の面でも苦労はしていない。そういった部分でも、神様の言う通り『苦労しない人生』ではあるけど……なんで俺が小さい頃に離婚してるんですかね?
俺が幼稚園に行っていたぐらいのころ、親父と母親との間で色々とあって離婚にまで発展してしまったのだ。……親権が父親にあるという事実で、色々と察してほしい。
まぁ、経済的にも苦労はしてないからいいんだけどね。
しばらく歩いて喫茶店に到着する。通りから外れた場所にあるからか、ここは落ち着いた雰囲気で俺のお気に入りの場所でもある。
店内に入ると、ふわりとコーヒーのいい香りに包まれ、思わず笑みが溢れる。
人はあまり多くない。
少し探せば、親父を簡単に見つけることができた。
「親父……と、誰……?」
親父を見つけたはいいけど、その隣に知らない女性が座っていたのだ。
金髪に蒼眼、端麗な顔立ちは、日本人のそれではない。
しかし……ものすごい美人。
ハリウッド女優でもやってるのではないかと思えるほどだ。
……なんでそんな美人が親父と……?
「親父、この人は?」
「よく聞きなさい、
…………はっ?
「いや、どういうことだよ……いきなりそんなこと言われても」
そんなことを言われても、俺の疑念が深まるばかりだ。
だって普通に考えたら、冴えない中年の親父がこんな美人を捕まえられるはずがない。親父が金で釣ったか……もしや女性の方が……。
「彼女とは仕事の関係で知り合ってな。出会い自体は数ヶ月前だが、馬が合ってトントン拍子にな……」
「確かに
それに……と続けたその女性は、俺を真っ直ぐに見つめて聖母のような笑みを浮かべる。
「
「っ!?」
女性の言葉を聞いた俺は、思わず椅子を蹴飛ばして立ち上がる。
その言葉は……その言語は、地球上
「私はルヴィリエ……
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