8-2

「ねぇ おばぁちゃんは ここに嫁に来る前 何してたん? どこから嫁いできたん?」


「どうしたん? 急に おばあちゃんのことを・・・実家も、もう無かったんでしょっ」


「うん 無くなってた だけどさー おばぁちゃんの生まれたの気になってるの」


「どうして?」


「う~ん 話すと長いしー お母さん 信じてくれないものー」


「なによー それっ! お母さんがマオの言うこと信じなかったことってあるぅ?」


「だけどー ・・・ これはねぇー だから、おばぁちゃんは?・・・」


「お嫁に来る前は、余呉で生糸を紡いでいたそうよ 女工さんね 15の時に家を出て・・・どうゆう訳か 漁師をしていたおじいさんと知り合って、嫁に来たのよ」


「へぇー なり染めは?」


「それは聞いて無いけど・・・実家はかなり貧乏だったみたい 兄妹も15になるとみんな出稼ぎに出されたってー もちろん お母さんだって ここに生まれて 貧乏だったわよ でも 当時は、周りもみんなが そんな調子だったからね」


「お母さんは 夜叉が池ってとこ知ってる? マオは今日 そこに行ってきたの おばぁちゃんが生まれたとこから山ん中に入ったとこ」


「聞いたことはあるけど 行ったことはないわ それがどうかしたの?」


「夜叉が池には伝説があって、竜神白雪様が住んでいるってー それで、福井側の村が災いを押さえる為に生娘を竜神様に生贄を差し出そうと・・・それが、糸さんという人 その後は治まったんだけど、何年か後に、又、災いがあって、生贄が必要だってなって 選ばれたのが糸さんの妹だったの それで、一家で村を逃げ出して おばぁちゃんが生まれたところに・・・」


「ちょっと まってぇー その一家とおばぁちゃんが 係わりあるって?」


「そうなんじゃぁないかなー だって マオはその生贄になったっていう糸姫様の夢を何回も見るのよー 抱かれて池に連れていかれたこともあったわ 朝 眼を覚ました時には着ていたものがビショビショだったものー」


「マオ・・・ あなた 向こうで ひとり 寂しくないの? 夜 うなされて無い? 大丈夫なの?」


「大丈夫だよ それに イオも居るしー」私 しまったと・・・つい 言ってしまったぁー


「なによー それ マオ! 伊織利君とまさかー」


「あぁー ちゃうよー お母さんが考えてるようなこと無いよ! いつも 相談に乗ってくれるってこと マオは お母さんの娘だから ふしだらなことしません」と、言いながら うしろめたさも感じていた。だから、それ以上 伊織利さんと昔から結ばれる運命にあったなんてことは言えなかったのだ。


 姉ちゃんが帰って来て、もう0時に近いのだ。終電の何本か前。こんな時間なのにお母さんはよく許してるなぁーって思っていたけど、私の部屋に来て


「マオ 久し振りねぇ どう? 彼とはうまく行ってる? 毎日いちゃいちゃと愛し合ってるんでシヨ?」


「そんなー いつも会って居るわけじゃぁないからー」


「そーなん? せっかく 二人とも親元離れているのにー でも もう 確かめ合ったんでしょ?」


「あのね マオは姉ちゃんみたいに・・・そんなの 思えないの! もぉー 早く お風呂は行っといでよ!」


「へっ あんまり もったいぶってると誰かに取られちゃうからね」と、コロンの匂いを残して出て行った。お化粧も前より濃くなったみたい。姉ちゃんはそんなに基も悪くないのだから、もっと、薄いほうが印象良いのになぁーというのが、私の感想だった。


 だけど、最後に姉ちゃんが言っていた言葉 確かに あんまりもったいぶってると・・・かぁー と、考えさせられていたのだ。それに、私と伊織利さんはやっぱり結ばれるように導かれたんだから・・・


 伊織利さんは、あの後、どういう風に思っているんだろう 伊織利さんは あの伊良夫さんの末裔だってことはかなりの確率なのだ。そして、私は 糸姫様の血を引いていることも・・・だから 私達 繋がっているんだと 私は思い込むようになっていた。それと、夜叉が池で伊織利さんは私に隠れるように大根を供えていたのだ。あれは、何だったんだろう・・・まだ 彼は私に言ってないことがあるんじゃーぁないだろうか という疑惑も沸いていた。

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