第2章 茅野子が家族になっていく



 さて、名前も決まり我が家の飼い猫となった茅野子ちやこ


 取り敢えず倉庫から今は使っていないかごを引っ張り出して、もう使わなくなった毛布をたたんで押し込んで住処すみかとする。


 そこに押し込まれた茅野子は「クンクン」と毛布の匂いを嗅いだり「ガサゴソ」と籠の中を動き回ったり「バリバリ」と籠を少し引掻ひっかいたりしていたが、しばらくしたら籠の中で「ニャア」と鳴いた。


 その鳴き声は「まぁまぁかな ? アタシの住処としては。欲を言えばキリが無いから、ここで良いわよ」と私達に脳内変換され、茅野子の住処が決まった。


 オプションとして頑丈なダンボール箱に近所のドラッグストアで買って来た「ニオイが出ない猫の砂」とやらを敷き詰めたトイレが付いた。



 えっと、ここでお断りをさせて頂きます。茅野子が家族だったのは15年前で私も  今とは違うリアルで多忙でしたので記憶が曖昧あいまいになっている点があります事を、ご容赦ください。また第1章とは違い「ですます口調」では無くなっています。これは私の脳内に「アタシの事を語るのに、ですます口調は似合わないでしょ」と言う茅野子の声らしきモノが響いたからです。それではお話しの続きをどうぞ。



 それから誰が茅野子の世話をするのか ? と言う話になった。姉は「わたしが世話をする」と言い張ったが、まだ元気で家事全般を取り仕切っていた祖母の「あんたは学校があるでしょ」の一言ひとことで却下。私も同じ理由で却下。祖父もかなり元気だったので店で仕事をしなくてはいけない、と言う事で消去法で主に祖母が世話をする事になった。って言うか、皆も最初からそうなるだろな。とは思ってたけどね。にゃんにゃん。


 こうして住処と言うか寝床は2階、トイレは下。基本的に放し飼いと言う茅野子の生活が始まった。私達が今も住んでいるところは地方都市の中でも「のんびりした」地域であるし、茅野子も女の子だったせいか「家の外に出る」と言っても殆どが裏庭で家の敷地外に出る事はあまり無かったようである。


 最初は牛乳を飲ませていたりもしていたようだが祖母が与えた食事はキチンと食べて食い散らかすと言うような事も無くキレイに食べていたそうだ。トイレも粗相そそうをした事も無く「何となく品が良い」と祖母は言っていた。


 世話をしてくれていた祖母に「猫は好きなの ?」と聞いてみた時には「祖母の実家の田舎いなかにはネズミ捕りの為に何処の家にも猫がいたから好きも嫌いも無い」との事だった。


 茅野子から見た我が家の人間の格付けチェックは、昼間はいつも側にいて食事を与えてくれる祖母がトップ。家に居る時はやたらと構ってくる姉と最初に会って家に住む事を許可してくれた祖父が同ランク。その下の最下位が私だったろうか。


 私は私の中の一匹狼が目覚めざめ始めた頃だったので変にまとわりつかれるのも嫌だったし、りんと胸を張っている茅野子をながめているくらいの距離感が心地ここち良かった。それでも「茅野子」と呼べば「んー、誰か呼んだ ?」と私を見てくれたしスキンシップを取りたい時には頭やお腹を撫でさせてくれた。気紛きまぐれに向こうから寄って来た時には喉をゴロゴロしてあげた。そんな時の茅野子はとてもカワイくて愛らしい家族だった。



 次回は茅野子の武勇伝や奥儀「めてめて」でも語ってみようか。







つづく







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