第2話 アフリカのシャーマン

「かつての日本人は我らの手本だった。祖霊を敬い、九十九神を敬い、自然を愛する人々であった」


 アフリカ中部の僻地。サバンナの中に住まうダガンバ族の長は、スワヒリ語でそう話した。通訳を介しているが、残念そうな口調で言っているのは分かる。


「今は違うと?」


 俺は思わず聞き返す。内容が気に食わなかったわけではない。なぜそこまでのことを把握しているのか、詳しく続きを聞きたかったからだ。


「あぁ、違う。今の日本人は、万物に神が宿ることを忘れてしまった。そして一部の者は、妖しげな術で神すらも利用しようとしている。まるで石材や木材を加工するかのように、神を扱っている。恐ろしいことだ」


「なぜ分かるのです?」


「声が聞こえるからだよ。ここにいても聞こえる。日本古来の神々の、嘆き悲しむ声が。苦痛に満ちた叫びが」


 ここまでとはな。


 ダガンバ族は呪術に秀でた部族だとは聞いていたが、そこのシャーマンはそんなことまで感じ取れるのか。


 今の族長の言葉は間違っていない。


 日本の裏社会を牛耳る妖術師集団、【ぬばたま講】の横暴は目に余る。全国から金運や福に関する土地神、妖怪を集めては、死体に憑依させて金持ち連中に貸し与えているらしい。


 おそらく、りんを殺したのも連中だ。そうでなければ、りんが受肉していたことの説明がつかない。


 りんの姿が見えていた俺を消しに来るのも時間の問題。そう考え、俺も対抗手段となる術を集めるべく、世界中を旅してきた。


「ダガンバの【星繰り】が役に立つのなら、どうぞ使ってくれ。あなたの身をお守りくださるはずだ。星霊の導きがあらんことを」


 族長の厚意をありがたく受け取り、俺は先を急いだ。

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