21話  カグツチの語ることには

 加具土かぐつちの村は、この山にありモウしタ。

 山にはオロチが棲んでおって、何百年に一度だが現れると言い伝えられておりモウしタ。

 それが、この年じゃねぇかとうらなっタ。

 最近、びりびりと地がゆれておったからナ。


 村のオサは、テナとアシナというきょうだいでありモウシタ。


 テナは、オロチを鎮めるためにニエを出すと。

 アシナは、山より離れた地へ移ると。

 ふたりオサの意見が分かれ、村人の意見も分かれタ。


 おおかタのもんが、住みなれた土地を離れることをよしとしなんダ。

 

 アシナさまは、ご自分のツマと子と村人数人を連れて、去っていかれタ。

 何度も何度も村をふりかえり、袖を振っておられタ。


 残った村人は、オロチを鎮めねばなんネ。

 骨のうらないで出たとおり、八の年の者。八本指の子。八人の大人で言い含めて山へ登っタ。

 火口に八つの宝物があると誘って。

 おまえは、そこで宝物を守る番人になるのダ。

 そこは、寒くもねぇ、熱くもねぇ、よいところダ。腹いっぱいの食べ物もある。

 八つになっても、ふたぁつの子よりもおさない子だっタ。んで、よろこんで火口へと落ちて行っタ。


 そのとき、ひときわ地面が高く咆哮ほうこうして。


 オロチが現れた。

 オロチの頭は八つに裂けて、山を下り、ふもとの八つの村を焼いたということダ。だが、八つの八本指の子が、八つの宝の中に火止めのフタを見つけてナ。それで、自分の身体からだごと、火口をふさいダ。


 それから、山は火止めの山と呼ばれ、オロチが出てくることはなくなったとサ。


 えーいさ、やっと。

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