第14話 初めまして我が家②

 お昼を食べ、自由に家の中を探索中、自分の部屋をあまり見ていないことを思い出し、もしかしたら記憶を思い出す手がかりになるかもと思い、向かうことにした。


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 手始めにクローゼットから開けていく。するとお母さんが入院中に持ってきた服と何故か男物の下着と服があった。


「もしかして……ボクって……」


 どう見ても着たらブカブカになりそうな男物の服。何度も履いた跡のある下着。どう考えても一つであろう。


「変態だった?」


 女の身でありながら男物の服はボーイッシュ系? ならまだしも、下着を持っているのはおかしいだろう。


 次は本棚、こっちも変なものが多い。


『五分で分かる筋トレ講座』

『これで貴方もマッスル! トレーニング基礎』

『筋肉をつける秘訣』


 筋トレものしかない。しかも、その横のダンボールには棒に黒い物体をつけ『15kg』と書いてあった。これも筋トレ?

 これ、記憶喪失前のボクを知ってる人ってたくさんいるよね……。つまり、たくさんの人に変態的な筋肉マンって思われてるってことなの?

 ……ちょっと記憶を思い出したくなくなった気がする。

 

 続いて机。勉強した跡が残っており、ペンとノートが散らかっていた。内容は難しすぎて分からない。きっとお父さんとかなら分かるだろう。


「夕希、入っていいか?」


「いいよ〜」


 ちょうどいいタイミングでお父さんが来たのでこのノートに書き込まれていることを聞くことにしよう。


「お父さん〜」


「どうした? 夕希」


「これって何のこと書かれているの?」


「これは、医学の勉強だな。夕希が記憶喪失ななる前に残したもので、夕希の行動の原点でもあるんだ」


「医学?」


「医学はな、簡単に言うとわたしみたいな医者のことだ」


 行動の原点……。きっとボクが記憶喪失前ではその医者が目指していたものだと思う。


「でもな、過去は過去。今は今なんだ。今のお前はまだ何も決まっていないんだ。だからゆっくり決めて行ってくれ」


「うん!」


「それで話は変わるが、わたしが夕希の部屋に来たのは、夕希の今後の生活でいらなそうなものを処分する為だ」


 いらないもの……。よし、決めた。


「お、おい。もう少しゆっくり捨てるもの決めても……」


 男物の服はいらない! あ、でもこのフード? があるやつかわいいからこれは残して……。他にいらないものは……、筋トレの本とあとこっちの表紙が水着の美人さんの本も! ダンベルは……、一個だけ残そう。


「よし!これでいいよ!」


「お、おう……」


 部屋のいらないものを捨ててスッキリ! この残した、フード付きの服は着ようかな。手が出てこないぐらいブカブカだ。でもかわいいからいいや!

 ボクはいらないものを一纏めにした段ボールを両手で持ち上げ、お父さんに手渡す。すると……。


「イテェェェェェェ!」


 お父さんは思いっきり、段ボールを足に落として、悲鳴を上げた。思わず耳を塞ぐ程の悲鳴を……。


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 思わぬ事件の後、買い物に行っていたのか家に不在だったお母さんが帰ってきた。


「ただいま〜」


「おかえり!」


「おか……えり……」


 お父さんは未だ痛みが引いてなく、氷で足を冷やしていた。お母さんの方はお父さんの悲惨な姿を見ても気にしていない様子。能天気な性格にしても程があるのではないだろうか。


「夕希ちゃん。入江さんからの伝言を伝えておくわね」


 お母さんの話は突然にして始まった。


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