第2話 バズりバズらせバズらえども


「はーい皆さん、こんコロ~。事故物件住み込み型Youtuber早乙女さおとめ ココロです!」


 明かりも付けていない屋内で、自撮り棒に取り付けたスマートフォンへ微笑みかける。顔が明るくなるように且つ、顔が怖くライトアップされるようにと、首から下げたペンライトが顔を不気味に照らし出している様が、配信画面に映る。

 誰も居ないにもかかわらず配信挨拶を行い、自撮り棒で部屋をぐるっと見渡す様にその場でターンする。


「それでは、いつもの定例撮影です。はい、いつものオレの自室ですね。生活ちゃんとしてますよ~」


 オレ、早乙女 ココロ、本名、新垣にいがき ココロは事故物件であると知っていてわざと住み込み、そこで起こる怪現象を配信するネット配信者だ。ネット配信者といっても登録者数は先日ギリギリ1000人に達し、収益化登録を済ませたばかりの弱小配信者である。もっとも、それも一度あった怪奇現象を偶然配信に乗せれたことがきっかけだ。

 元々は自宅で顔出しでホラーゲームを配信していたオレだったのだが、配信カメラが部屋での怪奇現象と心霊映像を生配信してしまい、それ以来オレの立場は望んでいない方向で確立してしまった。


 そう、オレが住んだ部屋は、出るのだ。


 所謂、事故物件という奴だ。

 以前の住人が何らかの理由で部屋の中で死去している、通常ではない死に方をしている場合、事故物件といわれ、格安で住むことができる。

 どうやら、前の住人は強盗に入られて殺された、とか……詳細は知らないが、女性が一人で暮らしていたらしい。お風呂場に逃げ込んだところを殺害されたのだとか。

 それを知ってオレはこの部屋を借りた。確かに、十畳という広さがありながらキッチンと風呂トイレ別で家賃は激安である。バイトで生計を主に立てているオレとしてはとても助かる。元より、オレはお化けとか信じない方だった。だからホラゲを夜中に一人で配信なんてことをしていたわけだし。

 だったのだが、勝手に本棚の本が飛び出したり飲み物のコップが独りでに倒れたりといった怪現象が配信に乗ったことを皮切りに、配信に女性の泣き声が乗り、ついにはオレが座ってた椅子の隙間から配信カメラを睨む黒髪の女性の姿がネットで大いにバズり、そうして今一度の怪現象生配信を望んだ視聴者が数千人登録。オレは以来、事故物件に住むYoutuberとして小銭を稼いでいる。

 それをきっかけに、オレが住んでいる部屋で怪現象を探す生配信をすると、長い髪の毛が排水溝に詰まっていたり鏡に手形がついて居たりと、どうして今まで気づかなかったのかといわんばかりの怪現象のオンパレードで、最初こそ好評だった。

 だが……


『なんか、詰まんねぇな』

『やらせくせぇ』

『低評価ボタン押しました』


 次第に飽きられるのが世の常である。

 気が付けば、登録者は千人ギリギリ。収益化申請に必要な人数はなんとか超えていたが、以来鳴かず飛ばずで、キツいバイトを止めるタイミングを見失っている。


 オレはふと、昔の栄光と悔しさを思い出していたことに自覚し、それらを振り切って今に集中し直した。配信閲覧者の数字は、今は2と書いてある。オレ自身でオレの配信を見ているのを除くと、誰か一人は配信を見てくれているということだ。その誰かに向けて、精一杯オレはエンターテイメントを提供しようとする。

 そうして、定例となっている部屋の探索配信を今日も行っているのだが、今日は何も見つからない。


「あれれ~。今日は髪の毛も手形も、窓の曇りも何にもないですねぇ」


 無きゃ無いで困るのだが、有ったら有ったで困る。それが自宅型心霊配信である。まあ、だいたい何もないのが、通例になってしまっているのが、ここ最近だ。昔のような大バズりが欲しいところだが、自分独りで成した栄光ではないので、こればかりはどうしようもない。幽霊と交渉するわけにもいかない。


「うーん、じゃあ、何も無かったので、今日はこの後、新作フリーホラーゲームの配信やりまーす! 枠分けるんで、また来てください! それじゃあ、お疲れ様でした! おつコロ~」


 なにも無いなら、と配信を止めようかというタイミング。ここで視聴者からスーパーチャット、所謂投げ銭が送られてくる。


「っと、ナイススーパーチャット! ありがとうござい、ま……」


 配信に送られてきた投げ銭は、高額を現わす赤い色をしており、そこには五万円の数字とキャラクターがご飯を食べるアニメーションが表示されていた。

 送ってきた人は「Oh魔」というハンドルネームをしている。


「ありがとうございます! わ、すごい! 高額スパチャ初めて見た! ありがとうございます! えーっと、名前の読み方は……オハ、マ? オフマ? オウマ?」


 配信のコメント欄にOh魔さんが返事を打ち込んでくる。


『オウマです。ご飯代としてお送りしました。美味しい物を食べてください』

「わぁ~ ありがとうございますぅ、本当に助かりますぅ。こいつぁ焼き肉だなあ! いや、高級フレンチも良いなあ! いやほんと、お金大事にしてくださいね? 助かりますけど~」


 だいたい生活費に消えるだろう、とは脳内の試算で出ていたが、まさかこんな場末の配信で高額を支払ってくれるような酔狂な、どこか金銭感覚がおかしい人を、全力で楽しませようと思うが、気の利いた言葉が出てこない自分に少しヤキモキし始めた頃、Oh魔さんが続けてチャットを入力する。


『いえ、その自室で、お化けの方と一緒にお鍋を囲んでください』


 え? と、困惑したオレの顔色を察してか、Oh魔さんが続ける。


『料理は配信しても配信しなくても構わないので、お化けの方の食器もそろえて、一緒の机を囲んで、一緒に食べるところを配信してください』

「えっと……いやまあ……そう、ですね。はい、じゃあ、近々やります」


 ヤバい視聴者だ。スパチャハラスメントだ。なんてことを思ったが、実際金額的にはバカにならない。今後もお化けの食費として支払ってくれるなら、それはそれでありなんじゃないか? とも過る。

 少々の恐怖と欲望が脳裏をかすめながら、オレは一旦配信を終えた。

 しっかりと配信終了を確認してからひとりごちる。


「やべえ視聴者居たわ……あ、五万円、いつ引き落とせるか調べとこ」


 その日はその後、ホラゲ配信を何事もなく終えた。



 後日、全く関係ないFPSゲーの配信にOh魔さんが現れる。もちろん、FPSゲーの視聴者は1人、つまり、配信画面を確認しているオレだけ、事実上誰も見ていない配信だったのだが、その数字を2にして、Oh魔さんがチャットに書き込んでくる。

 オレはゲーム実況配信用の机に座り、固定カメラ代わりのスマホに定期的に誰も見ていない決め顔を決めたりしながら、無駄にリアクション豊かに道化を演じていた。

 そんな空しい気持ちでいっぱいのところに、Oh魔さんの書き込みが水を差した。


『こんコロです。お鍋の種類は決まりました?』

「え? あ、こんコロです、Oh魔さん。いやあ、土鍋とかも必要なんで……」

『そうですか』


 と、今度は三千円のスーパーチャットが送られる。


「あ、すみません。ありがとうございます! 土鍋買いますね~」


 などといいつつ、買うつもりは無かった。

 何だかわからんが、狂人がお化けと食卓を囲むのを見たいばかりに金を支払ってくれるなら、それは大いに助かる。もうしばらく引っ張れるんじゃないか、などと考えていると、パソコンの電源が落ちる。


「は? え? 何? 何がおきたの? おいおいおいおい」


 オレは思わず立ち上がる。パソコンは何のエラーも吐き出さずに再起動し、配信を再開する。ゲームは敗北、事態をOh魔さんしか居ない配信に簡単に説明した。

 すると、Oh魔さんがチャットにこんな話を書き込み始めた。



―― 泣き屋敷の娘


 今からおよそ千年前、平安の頃のこと。

 ある貴族の娘が、病に苦しむ父のため、祈祷師を呼ぶも一向によくならず。

 そうして泣き暮らす娘を不憫に思う、彼女に想い寄せるやんごとなき青年が一人。彼は彼女の家の使用人に頼んで、娘に助言を行った。病には滋養に良い物が良い、と。

 娘は縋る思いでその助言に従い、遠方より滋養のある物として、自然薯を取り寄せようと考えた。

 大枚をはたいて購入した自然薯は、屋敷の使用人によって遠く遠方より届くはずであったが、偶然通り過ぎた虫の居所の悪い男に、使用人は八つ当たりで殺されてしまったという。

 父親はそのまま衰弱死。泣き暮らす娘の元へ、屋敷の使用人を殺した罪を洩らさぬためにと訪れた男が現れ、娘を殺してしまった。


 これを聞いたのが娘に心寄せる青年で、彼は彼女の屋敷に彼女のふりをして住まい、娘がまだ生きており下手人が誰か知っていると噂を流した。冥府より蘇り呪いをもってして無念を晴らそうというのだと。

 これ見よがしに件の男は今一度屋敷を訪れ、怨霊と化した娘を斬ろうとしたが、娘に化けた青年によって一刀のもとに切り伏せられたという。


 しかし、娘が怨霊となったのは事実であり、千年を超えて今なお恨みと悲しみに暮れ、呪いを振り撒いて、似たように殺される無関係な者を生み出し、共に泣こう泣こうと誘うという。


――


「え、で、その話とオレになんの関係が?」

『霊は、似たような事例に吸い寄せられます』

「うん、はい。それで?」

『すると、当時の再現をしようとするんです』

「うん?」

『回避するには、無念を晴らすしかないです』

「いや、まだ話が繋がらない気が……」

『お化けの方と食事をとらないと、近々、その部屋に以前の住人を殺した犯人が舞い戻りかねない、ということをお話してます』


 どういうことだ? 平安のお化けの話と、この部屋の前の住人の話に関係があるのか? 確かに両方とも「知らない男が部屋に上がり込んできて殺された」話ではある。しかし、平安のお化けの話ではその後「女装した別の人が部屋に居座って、今一度現れた殺人犯を退けた」ということになるが……

 と、そこまで考えてオレはぞっとした。

 確かに、配信という形でオレは「別人のふりをして」「事件現場に住んでいる」……ということは、後は「この部屋に殺人犯が戻って来る」ということになるのだろうか。いやまさか……

 と、寒気を必死に抑え込もうと考えるが、確かに考えてみれば「殺人があった部屋の内容を配信で送っている」というこの現状は、もしも犯人に繋がる新しい証拠が配信に乗ろうものなら、犯人は今一度、この部屋に戻って来てもおかしくない。むしろ今まで無事だった理由が解らないほどだ。単純に、今まで犯人の目に留まらなかっただけ……なのだろうか? そういえば、件の事件の犯人がどうなったのか、オレは調べていなかった。つまり、今もどこかに居ても、おかしくない。

 Oh魔さんがチャットで畳みかける。


『多分、そうじゃないともう一度パソコンの電源が落ちます。ポルターガイストで』

「マジかよ……」


 オレは頭を抱えた。


 それからはとても速かった。

 翌日を待たず、深夜に自転車を飛ばし、オレは土鍋とカセットコンロ、女性物の箸と茶碗を二十四時間営業のリサイクルショップで購入し、その足でこれまた二十四時間営業のスーパーで鍋の食材になりそうな物を適当に購入。目に留まった自然薯も……購入しようとして山芋で誤魔化した。自然薯は高い。

 オレは自室に戻るなり、深夜過ぎに調理を開始する。

 机の上はゲーミングPCたちが占拠しているので、床の上に古新聞を広げてそこにまな板を置く。カセットコンロに土鍋をセットし、スーパーで買ってきた食材で鍋を作り始める。が、配信していなかったことを思い出し、急遽配信を開始する。


「はい! 皆さんこんコロぉ! 深夜もいいところですが、今から朝食に向けて鍋を仕込んでいきます! わー、ぱちぱちぱちー!」


 我ながら何を言っているんだ。

 と思いながらも、土鍋の中に鍋の元の液体スープを入れる。アゴ出汁の良い香りが部屋に広がる。

 ところで、オレは料理なんて胃に入ればどれも同じだと思っているタイプなので、料理なんてしたことがほとんどない。鍋って言ったって何を入れれば良いのかも分からない。

 解らないので、適当に作ることにした。

 ニンジンを輪切りにし、水菜と白菜を手で分けて、更に一口サイズに切っていく。鍋に何を入れたら良いのかわからなかったので、長ネギと大根も適当な大きさに、ざっくばらんに切る。お豆腐はスーパーで売り切れていたので、代わりに油揚げを……


『あ、揚げさんは油抜きが必要ですよ』


 と、チャットでOh魔さんが告げる。


『揚げさんとはなかなか良いチョイスですね。お稲荷さん』

「え? そうなんですか? いやあ、助かります。……で、油抜きってどうやれば?」


 オレはOh魔さんに油抜きの方法を聞く。どうやら、お湯で一度煮る必要があると聞いて、オレは油揚げを持ってキッチンに、配信の外へ離れていく。カセットコンロにはアゴ出汁の入った土鍋が陣取っており、それをどかすのは少々ほねだ。

 すると、いつの間にかチャット欄にはOh魔さん以外の視聴者も居り、曰く「今ポルターガイストあった」とか、キッチンから油抜きを終えて戻ってきたオレに教えてくれる。確かに、少々ニンジンの輪切りの配置が換わっている、気がする。視聴者たちの間で「やらせだ」「CGだ」「配信がとんだだけでは」「この部屋って」「でも動いた気がする」など、いつの間にかチャットはにぎわい始めている。

 いつか以来の賑わいを感じながら、オレは気を良くしながら調理を再開する。

 切った食材を、アゴ出汁の金色の汁の中に落とし入れ、カセットコンロで火にかける。煮立つまでまだ時間があるであろう間に、自然薯……ではなく、山芋に手をかける。


「山芋って言うとすりおろしたりするのがイメージありますけど……み、皆はどう食べる?」


 チャットがにぎわっているのが嬉しくて、ついチャットに質問なんて投げかけてみる。だが、チャットは急に静まり返る。少し変な汗を掻き始めた頃、チャット欄に山芋料理の案が流れて来る。


『山芋といえばとろろ。めんつゆをサッとかけてご飯に乗せろ』

『練って出汁の中に入れて、ツミレみたいにする』

『うちは山芋は輪切りにしてフライパンで炒めてる。山芋ステーキ』

『鍋だろう? じゃあ、鍋にとろろを入れても美味しい』


 思わずオレは安堵の息をこぼしつつ、視聴者に応える。


「OK! じゃあできる限りやろう!」


 山芋の皮をむき、おろし金で山芋を下ろしていく。あるいは輪切りにしていく。そうしている間に、アゴ出汁の、魚介の良い香りに野菜のほのかな甘みを含んだ香りが混ざって部屋に立ち込める。ぐつぐつと小気味よい音と共に食欲を誘う。

 沸騰した鍋にすりおろした山芋を少量入れると、次第に固まって……固まって?


「あれ? 散っちゃった。やっべぇ! 失敗してる!」


 などというアクシデントを視聴者と笑い合いながらも、調理は問題なく進んでいく。『何してる』『もっと良い山芋買ってこないから』『これはこれでおいしそう』『鍋の具材寂しくね?』『その部屋他に誰かいる?』『ああ、早乙女さんが深夜にメシテロしてる』などなど……オレは自然と頬がほころんでいた。


 鍋の良い香りが部屋中に満ちる頃、窓の外から僅かに朝日が昇り始めた。

 オレは二人分の食器をゲーミングPCで占拠されている机の端に置いて、かなり早い朝食、あるいはかなり遅い夜食を配信に乗せる。


「できましたぁ。山芋たくさん鍋です! アゴ出汁で煮込んだとろろ、軽く表面を焦がした山芋が入っております! あ、揚げさんすごい出汁吸ってる。うまそ~」


 そして、視聴者に『メシテロ』だの『腹減った』だの言われながら食べ始める。


『お疲れさまです。これからも同居人の方と一緒に食事を楽しんでください。そうすれば、あなたの知名度が上がって、結果あなたを守ってくれると思います』


 Oh魔さんがチャット欄にそう書き込む。そういえば、元々そんな主旨で始めたことだっけ?


「ああ、オウマさん、ありがとうございました! 今はもう、この鍋のことで頭も口の中もいっぱいで、ああ~ 温まるぅ……いや、痒いな。痒いわ」


 この部屋に殺人犯が舞い戻るかも、などといった考えは、調理のすったもんだと鍋のうま味で、すっかりどうでもよくなっていたが言われて改めて思い出した。

 手のかゆみを何とかしたいと言い残し、オレは配信の外へ、洗面所で手を洗いに行く。


「やっべぇ、そういや忘れてた……」


 急に帰ってきた殺人犯への恐怖に、オレは洗面所で誤魔化す様に顔を洗った。すると偶然か、オレは洗面所の、洗面器と壁の隙間に何が挟まっていることに気付いた。オレは慎重に、その何かをつまんで引っ張り出した。それは小さな楕円形の物体で、しかし直感でそれが何か解った。

 人の爪の欠片だ。ぞくりとした感覚が背筋を走り、オレは思わず振り返った。するとそこには髪の長い女が居り、目が合った瞬間に俺は気絶した。



 後日、偶然見つけた爪の欠片が犯人に繋がる証拠になったとかなんとかで、難なく犯人は捕まった。恐ろしいことに、犯人は配信を見てオレの部屋のすぐ近くまで来ていたのだとか。逆にそれが故に捕まったらしいのだが、そこからは芋づる式に罪状が明らかになり、件の爪が決定打となったとかんとか。山芋だけに。

 それよりも、件の料理配信がネット上で大バズりをしていた。


『お化けが火災を止めた』と……


 オレが洗面所で倒れている間、古いカセットコンロにかけられた鍋からアゴ出汁が蒸発し、あわや火事になりかけた時、部屋に現れた髪の長い半透明の女性カセットコンロの火を止め、ついでにとろろ鍋を食べてその場で消えていった一部始終が配信に乗っており、これが伝説の配信となった。

 もちろん、やらせだとか仕込みだとか様々なことが言われたが、それもまた注目を呼んだ。なんだったら、部屋で起きた過去の殺人事件とその顛末と合わせてこれまた話題を呼び、オレの配信に新たな名物企画が組み込まれた。

 のだが……


「はい皆さんこんコロ~ 事故物件住み込み型Youtuber早乙女 ココロでーす。今日も同居人に料理を振舞っちゃうぞ~……ってまたスタートは一人だよ。登録者数増えねぇ……いや、切り替えて行こう! 今日も料理、頑張っちゃうぞ!」


 視聴者数が1人、つまり、配信を確認するオレしか見ていない状況にまた戻っていた。そりゃ、いつでも怪現象が起きるわけではないし、なんだったら、犯人が捕まって以来、怪現象はぴたりと止んだ。まるで、もう無念を晴らせたかのように。


 ここでさらに数字を求めて新しい事故物件に住んでも良いのかもしれないが……生憎と、ここの同居人にはオレは恩がある。

 だから今日もオレは、同居人と早すぎる朝食にして遅すぎる夜食を取る様を撮るのだ。

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お化け飯 九十九 千尋 @tsukuhi

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