第4話 アルクとラックの共感

ディードとアイカがふたりで散歩をしている間、

アイカの父アルクとラックは、今朝のアイカの突然の変貌ぶり、絵描きに向けた興奮した様子について、何とも言えない違和感を思い返していた。


これまでのアイカは無口で存在感が薄くはあったが、まぎれもなく親子であった。親子揃って無気力さが特徴的であり、ただそれだけであった。それで良かったのだ。強すぎる個性は、たとえ親子であってたら、相手への心のテリトリーを侵してしまう可能性があり、関係性を一変させてしまう。今朝のアイカは明らかに…


アイカに一体何が起こったのか?

魅力的な存在感となり、アイカ本来の長所と言える個性が誕生した!

アイカから放たれる個性の放出は、他者を一方的に巻き込むもの、誰をも抗う事は出来ない力(魔力)が備わっていた。これは王族のみが所持する力であり、他者を支配する能力が生じていた。(ラックにも影響が及ぼしはじめている。)


≪やがてリジー村全体に拡がって行く事になる≫


ラックは、アルクを見つめていた。

アイカの父アルクは、もともと無口で、感情を表に出さない性格だったが、明らかに動揺していた・・・・・・・表情を強張らせ、全身を震わせている、大丈夫だろうか?


「アルクさん、アイカはいつから様子が変わったの?」

ラックは黙り込むアルクに声をかけた。


「今朝、目が覚めた瞬間からだ・・・・・・・。

まるで悪い夢でも見ているようだ・・私の娘はどこへ行ってしまったのか?」

アルクは明らかに、娘の存在を疑っており、喪失感を漂わせている・・・


「アルクさん、でもね・・・あの子は、アイカである事は、間違いないと思うよ・・

見た目は同じだし、別人とはどうしても思えないよ・・」

ラックに言われた言葉で、アルクは、何か過去の記憶が蘇って行く様な段階へと移って行った。そしてアルク自身の緊張感が解れていく様子が、ハッキリと見てとれた。目力が強まって行く・・・かつてそのような男であったように。


「そうだな・・・ラックの言う通りだ!

あの子はアイカで間違いない!!それに・・」

(ルエラ神族の子の成長は、突然起こるものだからな…)


アルクは思い当たる節があるようだったが、言葉数は少ない・・

<アイカは母親を亡くしてから、言葉を失ってしまった。

深い悲しみ故の弊害、アイカの心を閉ざすキッカケ、

アイカは、もともと明るい性格の子であったのだから・・・>


ラックにも、アルクの表情から、アイカの変化に大陸エーファを覆う壮大な魔力を帯びてきているような・・これまでにない感覚が、迫って来ているように思えてならない。それはラックもまた、魔力を感じる素質があるという事である。

そしてこれから新しい冒険が始まるような、ワクワクした熱い思いが、自然と沸いてくるのであった。


「何だろう?この気持ちは!アイカの事が頭から離れないぞ・・・この感情は何なのだろう?今までに感じた事がない感覚だ!気持ちが抑えられない!」



アイカとディードは散歩から戻って来た。

アイカが熱心にスナフキンの実を欲しい!とお願いされたアルクは、娘の願いを受けいれた。

「好きにするが良い」と言うとアルクは仕事へ出かけた。


今まで我がままを言うことなく、感情を表に出さないアイカが、熱心に求めてくるのだから、叶えてあげたい!

アイカが必要とすることなら、父親として出来る事は何でもしよう!と思っていたのだが、これまでの親子の関係から、相変わらず、、言葉足らずである。


アイカは、ディードから瓢箪の形の果物の実がスナフキンという名である事を聞いた時は、本当にびっくりした。おそらく過去の転生者でムーミン好きな人がいて、この村で摂れる野菜や果物にムーミンのキャラクターの名を付けたに違いなく思えた。私以外にも転生者がいるのなら、どうやって探したらよいだろうか?


私が前世の食事を広めていったら、気づかれるだろうけど・・・この世界で有益な情報を広めていないという事は、何か・・・制限がかかる理由があるのだろうか?

危険が生じる事でなければ良いのだけど・・・と吐息をついた。

しかしディードの家でお料理教室である。とても楽しみだ。

とにかくこれからは慎重に、発信した事が新しい情報であるなら、他の人たちを驚かれる事なく、少しづつ生活水準を向上させていきたい!とアイカは決心するのであった。


まずスムージーの味の開発だ。私とディートさんで色々試してみよう。

とても楽しみだね。ウフフ


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