第5話 入学

 それから三か月ほど経ち、入学式当日になり俺は、魔剣士学校の制服に身を包み、入学祝として父親からもらった真剣とともに、ロードル家の使用人が運転する馬車に乗り、学校へと向かっていた。

 両親はとてつもなく入学式に参加したがっていたが、あいにく領地内での問題が発生し、そちらの対処に出向いて行った。俺からしたら特に気にすることでもないので悲しくもなんともないのだが。なぜか二人は号泣していた。正直ドン引きしてしまった。


 しばらくガタゴトと馬車に揺られていると学校が見えてきた。俺の新しい生活が始まる場所だ。


 馬車から降りて使用人に挨拶を済ませると、そのまま正門をくぐり、校舎へと入った。三階に上がると俺がこれから一年間、お世話になる教室がすぐに見えた。教室の扉の前まで行き、俺は深く深呼吸をする。いじめとかには会いたくない。まぁ、やられたらやり返すだけだが。


 扉を開けたその先には合計九人の生徒がいた。ガラガラッと扉を開け教室に入ってきた俺に全員の視線が向く。人数のわりに教室の広さが合わないことに少し違和感を感じながらも俺は自席につく。


 本を読む男子。

 カタカタと震えている女子。

 何人かで話し合っている男女。


 教室での過ごし方は人それぞれだ。

 

 そんな中、一人の男が俺に話しかけてきた。ヴォイドだ。


「お久しぶりですダクネス君。やはりあなたは合格できたできましたね。僕の読み通りです」

「そうだな。そう言うお前も合格することができたのだな。あそこまでこの俺の剣についてこられたんだ。当然といえば当然か」


 最近、長く貴族生活をしてきた影響なのか俺の口調は少し傲慢気味だ。直さなくては、と思いつつもどうしても口癖のようになって出てきてしまう。頑張って直さなければ。友達が出来なくなってしまうかもしれない。


 少しの間ヴォイドと話をしていた俺は、隣席でそわそわとしている少女の存在に気がついた。なんとなくこちらに話しかけようとしているのがわかったので、一度ヴォイドとの会話を切り上げその少女と向き合った。


「先ほどからずっとそわそわしているが、何かあったのか?」

「い、いえ!その、お話でもしたいなぁ、なんて思っていたんですけど話しかけるタイミングが無くて…」

「ふむ、そうか。それは悪かった。俺はダクネス・ロードルだ。お前は?」

「私はイリス・ラクトリアです。これから一年間よろしくお願いします」


 そう言い、座ったままぺこりとお辞儀をしてくるイリス。


「そ、その…ダクネス君、とお呼びしてもよろしいですか?」

「ああ。俺もイリスとこれからは呼ぼう」


 名前呼びをしてもいいかと聞いてくるイリスに、断る理由もなかったため、うなずく。するとイリスは嬉しそうに顔をほころばせ、ありがとうございます、と礼を言ってきた。


「ところで、ダクネス君の魔法属性は何ですか?ちなみに私は水です」

「俺の魔法属性は闇だ」


 俺は端的にそう答える。闇属性なんて聞いたことなかったのだろう。イリスは首を傾げながら俺を見ている。あまり深く聞かれたくない内容だったため、俺は話を逸らすことにした。


「ところでイリス。お前は剣は好きか?」

「剣、ですか?いえ、恥ずかしいことに生まれてこのかた一度も剣に触れたことがなくて・・・すみません」

「そうか。いや、大丈夫だ」


 ただ話題を逸らすためだけの会話だったからな。本当に申し訳なさそうな顔をするイリスにはちょっと申し訳ない。


 その後も少し会話を続けていると、ゴーンッゴーンッと鐘の音が鳴り響いた。それと同時に教室の前の扉がガラガラッと開き、一人の女性が入ってきた。その人は教壇の上に立つと


「お前ら一年の担任をすることになった、アメリアだ。これから一年間の付き合いとなる。面倒ごとは起こすな」


 いきなり現れ、いきなりこんなことを言ってくる。教師の冷たさに周りの生徒たちはみな黙ってしまう。そんな生徒のことを気にすることもなく、アメリア先生は言葉をつづけた。


「これからお前らの入試順位を発表する。これはいわゆる『序列』というものだ。とりあえず確認しろ」


 淡々とそう言うとさっそく序列を開示した。


1、ダクネス・ロードル(男)

2、ヴォイド     (男)  

3、カール・マコイル (男)

4、イリス・ラクトリア(女)

5、マグナム・ルーン (男)

6、リア・ベストリア (女)

7、シャル・ロンディーネ(女)

8、ティセラ・カートル(女)

9、レオン・ギルマス (男)

10、レギーナ・リンネ (女)


「はぁ?なんで私が6位なのよ!?」


 『序列』が開示されたとたん、椅子をガタンと言わせながら、勢いよく立ち上がり抗議の声を上げるリア・ベストリア。自分の順位に納得のいかない者がいる。当然のことだ。生徒たちはきっと立派な魔剣士になりたくてこの場に来ているのだろう。自分の序列が半分以下なら当然不満だ。しかし、アメリア先生は


「黙れ。これが貴様の序列であり能力だ。それに話は終わっていない」


 と一蹴した。ふぅ!怖ぇ!

リアが悔しそうにしながらも席に着いたことを確認すると。アメリア先生は話を始めた。


「この序列はあくまで入試試験当日のみの結果だ。もし序列順位を上げたければ、『決闘』を申し込むことによって順位を上げることが出来る」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る