第3話 ヴォイド
十五歳になった俺は魔剣士学校の入試試験を受けるため、会場である魔剣士学校に来ていた。俺は、あたりをきょろきょろと見まわしながら歩みを進める。魔剣士学校の体育館内で試験を受けるらしい。
魔剣士学校は国内の上位役職の一つ『魔剣士』を育成させるための機関らしい。そのため、この学校は過剰なまでの実力主義であり、皆が皆一線を画す生徒ばかりだ。
試験の項目は三つ。
・魔法威力・効果調査
自分の放つことのできるを魔法を一度だけ撃ち、その威力・効果を審査するもの。
・基礎体力調査
前世で行っていた新体力テストのようなものを行う。
・模擬戦
受験者同士で支給される木剣を使った模擬戦を行う。その際、魔法の行使は禁止。どちらかが一本を取るまで試合を続ける。
この試験の結果によって今後の俺の学校生活が大きく変動してくる。ここで底辺の成績を取れば校内での評判は落ち、ロードル家の評判も落ちる。そもそも入学できるかもわからない試験だ。もし落ちたらとんでもないことになる。そのため父親のためにも自分のためにも出し惜しみはできない。本気でぶつかりに行くため、俺は歩きながら両頬を叩いて気合を入れた。
◇◆◇◆
体育館前につくとそこはなんだか人だかりができ、ざわざわとしていた。人間の持つ野次馬精神に負けた俺はその人だかりへと歩を進める。すると人だかりの中心には透き通った青い瞳を持ち癖っ毛の男の子がいた。きっとこの学校の入試試験を受けに来た子だろう。
そしてその子の前には大声で癖っ毛の子を罵るガタイのいい男が立っていた。
「おいおい!冗談はよしてくれよ。お前の名はヴォイドだけか!どこぞの下級貴族かと思いきやお前は貴族ですらないのか?平民ごときがこの学校に通う、いや、入試を受ける資格なんざねぇよ!さっさとこの場から去るんだな!」
「この学校に通うのに貴族や平民などの身分の差は関係ありません。よって僕はこの学校の入試試験を受ける資格を有し、通うことのできる権利も持っています」
罵られる癖っ毛の少年――ヴォイド――は冷静にそう返す。その様子が気にくわなかったようでヴォイドを罵っていた男は拳を振り上げヴォイドに殴り掛かった。
「平民ごときがこの俺に口答えなんかするんじゃねぇ!」
叫びながら攻撃意を繰り出す男だったが、ヴォイドはそれを容易く受け止め腕をひねり上げた。そして、男の足を払うと地面に組み伏せ耳元で何かをささやく。すると男は驚愕、いや恐怖の表情を浮かべすみませんすみませんと謝り始めた。
俺を含め野次馬たちは何が起きたのか分からず、男の態度の豹変っぷりに唖然とする。きっと何かの魔法だろうがどんな魔法か見当もつかない。しかし直観だが俺はヴォイドはこの学校に入学すると確信し、コイツに対する警戒度を上げた。
ヴォイドは周囲の目を気にせず、自分に謝罪してくる男をそのままに、体育館入り口へと入っていった。
しばらくすると野次馬たちも徐々に体育館内に入っていき、俺も体育館に入った。
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