第13話
俺とおさだとの生活は順調に進んでいる。
俺は相変わらず仕事人を続け、時折おさだの手を借り、始末した遺体をおさだの紹介の業者が買い取ってくれて、その方面からも収入があり、自慢の65インチテレビをもっと大きなものに買い替えようかと思っている。
今日はおさだがあの更生した巨大淡谷のり子もどきハサミでおちんちん縦に先っちょから根本まで切り裂き魔が経営している「カラオケ居酒屋 淡谷」にヘルプに出かけていた。
俺は時計を見た。
午前2時30分。
少し遅いなと思っていたら、テレビの電源が入り霊界の景色が浮かび上がると、ペシャンコになったおさだを肩に担いだ30代くらいの男とインディアンぽい20代くらいの女性が入って来た。
「おお、ここはおさださんの家で間違い無いのだろうか?」
男と女性は人懐こい笑顔を浮かべた。
「ああ、はい、そうです。」
「そうかそうか、われ達は霊界には少し前に来たばかりであまり地理に詳しくないのでな。」
そう言うと男はそっとおさだの体をソファに置いて手を差し出した。
「われは四郎。
マイケル・四郎衛門がわれの最初の名前だが、今こちらの世界では北斗拳四郎と言うのが正式な名前なのだが、四郎と呼んでくれれば良いぞ。
君はとみき…とみちんと呼んでも良いか?」
俺は四郎の手を握りながら答えた。
「ああ、はい、初めまして。
どうぞとみちんと呼んでください。」
四郎の隣の女性も笑顔で手を差し出した。
「ミスターとみちん。
私はリリー・クゼルシュ。
よろしくね~!」
俺は彼女の手も握って挨拶をした。
「どうも、とみちんです。
はじめまして。
おさだを連れて来て頂いてありがとうございます。
彼女、あまり飲むとぺちゃんこになるんですよね。
コーヒーでもいかがですか?」
四郎とリリーが笑顔になった。
ソファのおさだは後で膨らませたら良いだろう。
俺は四郎とリリーにコーヒーを淹れた。
そして、四郎とリリーの素性を訪ねた。
話しを聞くと俺と同じ仕事人のような事をチームを組んでしていたようだ。
闘いで戦死してしまってこの霊界にやって来たと言う。
しかし、どうやら俺とおさだがいる世界と少し違う世界線に存在したようだ。
話しが微妙にファンタジーだった。
四郎とリリーは霊界では新参者で「カラオケ居酒屋 淡谷」でおさだの話を聞き、俺がこの世界で仕事人をしていると聞いて興味を持ったようだった。
「そうか、成る程…ところでとみちん。
この世界ではその…アナザーは存在しているのか?」
「はぁ…アナザー?」
四郎とリリーが顔を見合わせた。
「要するにね…悪鬼と言えば良いかしら?こんな感じになる者達だけど…。」
リリーがそう言うと二人の顔が見る見ると悪魔のような形相に変化した。
「ひゃあああああああ!」
俺は悲鳴を上げて椅子を倒して後ろに転がりながらも腰に差していたダガーナイフを抜いて戦闘態勢に入った、が、しかし、とても勝ち目があるとは思えなかった。
四郎とリリーの顔が元に戻り笑顔になり、拍子抜けした俺は戦闘態勢を解いてナイフを下げた。
「ほら、四郎。
やっぱり世界線が少し違うのよ。
この世界にはアナザーはいないようよ。」
「そうかもなリリー。
しかし、巧妙に姿を隠しつつ悪事を働いているかも知れんぞ。
また、そうであれば我らの様に悪を憎むアナザーもいるかも知れん。」
四郎がそう答えてコーヒーを飲んだ。
「すまんなとみちんさん。
驚かせてしまった。
しかし、われ達に敵わないと思いつつ武器を構えて戦う姿勢をとったのはあっぱれだ。
とみちんさんは仕事人と言う世の中の悪を密かに退治する仕事をしていると、おさださんから聞いたのだが。」
「はぁ、そうなんですか…。」
「われ達の事は後でおさださんから聞いてくれ。
どうやら、われ達が命を失った時に何かの手違いでどこか
違う世界線に飛ばされたようでな。」
「コーヒー、ごちそうさまでした。
なかなか良いマメで炒り具合も挽き具合もドリップも上手ね。
久しぶりに上出来なコーヒーを飲んだわ~!
もしも、もしもね、なにか、あなたが手に負えないような私達みたいなのが現れたら呼んでね、力になるわよ。
何の拍子か判らないけど、隣接する世界線が入り混じって来ているようだからね~。」
「は…はぁ、その時はよろしくお願いします。」
笑顔で小さく手を振りながら四郎とリリーは再びテレビから霊界に戻って行った。
後でおさだを元通りに膨らませて細かい事情を聞く事にしよう。
続く
おさだとの生活 とみき ウィズ @tomiki
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