第9話

厄介な事になった。

ちょっと遠くに仕事に出かけ、無事に仕事を済ませた俺の車を煽って来ている奴がいる。

深夜の住宅地の道を一時停止無視で飛び出してきた赤いフェラーリに急ブレーキを踏んでクラクションを鳴らしたら、凄く頭が悪そうな野郎2人が乗ったフェラーリがクラクションを鳴らしながら蛇行運転をして追いかけて来た。

俺の個人的な経験だが、フェラーリに乗っている奴でろくな奴は1人もいなかった。


俺の車は2代目スカイライン、俗にいうハコスカだ。

実は中身はGTーRになっているのだ。

目立たない様にフロントと後ろのバッジを外して、ウィングも取り外しているのだが、オバフェンや太いタイアや排気音で見る人が見たら普通の車で無い事は判るかも知れない。


俺は郊外に出てなるべく監視カメラに映らない道路に入ったが、フェラーリがしつこく付いてくる。

思い切りスピードを出して振り切ろうとも思ったが、いきなり警官が出て来て止められても敵わないのだ。

この車には仕事用の物騒な物も積んでいるし、いざと言う時、証拠を全て消し去る様に遠隔で自爆させるC-4爆薬が12キロも詰まった爆弾まで仕掛けているのだ。

それを見られたら…

俺はどうすれば良いか考えながらハンドルを操り、フェラーリを前に出さないように走っていた。


人目に付かない所まで連れて行って仕事を仕掛けるか…でも、それは俺の存在が発覚する危険が高いな…そう思っていると、カーナビの小さいモニターからおさだが出て来た。


俺の帰りが遅いので心配したようだ。

小さいモニターから出て来たおさだは。やはり小さく、俺の掌に乗りそうな大きさだった。


俺はおさだを助手席に置いて事情を説明した。


おさだは俺に親指を立て、大きく息を吸い込むと鼻と口を手で押さえて息を吐きだした。

行き場の無い息がおさだの体にたまり、おさだの身体は少しづつ大きくなってゆく。

おさだはその動作を繰り返してだんだん大きくなっていった。


一体どんな体の構造をしているのだろう?


おさだはどんどん大きくなり、普通の大きさになると、窓のハンドルを回し始めた。

すまんな、これはパワーウィンドウじゃないんだよ。


おさだが窓から身を乗り出して外に身を投げた。

おさだは空を飛べない。

ちらりとおさだのパンティが見えた。

やはりあのイチゴ柄のパンティがお気に入りのようだ。


おさだはハコスカから飛び出して道路にごろごろ転がり、フェラーリの後ろに消えた。

そしておさだが身を起すと猛スピードで走り始めてフェラーリに追いついた。


凄いな…今俺のハコスカは時速132キロで走っている。

追いかけてくるフェラーリもその位のスピードを出しているのだろうが、おさだは易々と追いつきフェラーリのボンネットに身を投げてフロントウィンドウにしがみ付くと車の中を覗き込んだ。

きっとあの恐ろしい下目使いをしているのだろう。


パニックを起こしたフェラーリはハンドル操作を誤り、中央分離帯にぶつかり2転3転して爆発炎上した。


もうあれでは2人とも助からないだろう。

俺は救助する気も無く、アクセルを踏んだ。

自業自得と言うものだ。

巻き添えが出なかったのが幸いだ。

そして片手で、いつも仕事終わりにやる様に南無、成仏、と唱えて祈ってやった。


炎上するファラーリからおさだが姿を現して俺に追いついて来た。

車の窓に手を掛けておさだが助手席に潜り込んだ。

流石に全力疾走しているので息を切らしている。


俺はおさだにお礼を言って、帰りのコンビニでプリンを3つ買ってあげた。

おさだはマンションに帰るまでに全部平らげた。


…おさだに2つ、俺に1つの予定だったのだが…。








続く

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