第8話
俺はおさだと最近は少し古い映画にはまっている。
昨日も大映映画の1966年版の『大魔神』をおさだと観た。
本当にこんな神様みたいのが居たのかな?とおさだに聞いて見たら、おさだは知り合いにいると伝えて来た。
俺はコーヒーを吹いた。
いるのそんなのがぁ!
おさだによると確かに昔から存在するが映画の大魔神ほどは大きくないと伝えた。
だが、もっと大きい、本当の大魔神もいるらしいと言う事だ。
マンションが壊れない程度ならぜひ見て、いや、会ってみたいと俺はおさだに言った。
そういう訳で今夜、おさだが知り合いの魔神を連れてくると言う事になった。
一応部屋の掃除などしておいてお菓子なども用意して待っているとおさだがテレビから顔を出した。
おお!魔神が来たぁああああ!
おさだは手招きで俺を呼び、魔神がテレビから出るのを手伝ってほしいと伝えた。
え?そんなに小さいの?
俺がテレビに近づくとおさだの横に魔神の頭が見えた。
小学生くらいの身長だった。
そして手足が、特に足が短かったのでテレビから出るのに苦労していた。
なるほど、大きさはともかく、体形のフォルムは映画の大魔神そっくりだった。
俺とおさだは苦労して魔神をテレビから引っ張り出した。
顔はあの怒る前の埴輪顔だった。
人見知りをするのか、テレビから出るのに苦労したのか少し顔が赤らんでいた。
俺達は挨拶もそこそこに椅子に座り、コーヒーとお菓子を出した。
やはり埴輪顔ではあまり口が動かせないらしく、お菓子を細かく割って少しづつ口に入れていたし、コーヒーにはストローを差して飲んでいた。
おさだと魔神は世間話でそこそこ盛り上がっていたが、俺はおさだの通訳が無いと魔神と意思疎通が出来ないので少し歯がゆく、そして、飽きて来た。
おさだは俺がいささか退屈しているのを見て、ウノを持って来た。
マッチ箱を持って来て、1人当たりマッチ棒100本でウノをやろうと言う事になった。
おさだは魔神にウノのルールを説明した。
魔神は埴輪顔のままうんうんと頷いて、3人でウノを始めた。
あまり期待はしていなかったが、いざ、やり始めると意外と面白かった。
魔神はあのポーカーフェースの埴輪顔なので手持ちのカードが判りにくくてすこし、手こずったが、そこは人のちょっとした動作などで感情などを読み取る事が得意な俺だ。
魔神の癖を読み取った。
手持ちに強いカードがあると魔神は左の頬を指で掻く。
手持ちのカードが弱いと少しお尻をもぞもぞ動かすなど、俺が本気に勝負を掛けると魔神はみるみると勝負に負けてマッチ棒が減っていった。
魔神は席を立ち、壁をポスポスと殴っていた。
悔しいらしい。
魔神がトイレに立った時、おさだがあまり勝負に勝って喜ばない方が良いと伝えた。
魔神は負けず嫌いで怒るとあの映画のように顔が変わると言う事らしい。
成る程~。
俺はちょっとだけ魔神が怒った顔を見たいと思った。
俺はおさだの忠告を無視して魔神を集中的に標的にしてワイルドカードなどを連続して魔神に置いて勝ち続けた。
おさだもウノをしながらハラハラして俺を見ている。
マッチはかなり残り少なくなり、魔神の埴輪顔が赤くなって来た。
そしてついに魔神の腕が上がり、あの青黒い怒り顔になった…が…なんか可愛かった。
背も小学生くらいだし、顔立ちも何か幼い感じがしてそれは非常に可愛く見えた。
そして怒り顔になると表情を読みやすくて、ますます魔神は負け続けた。
そして、魔神の残りのマッチ棒が残り数本になった。
もう、勝負は見えた。
俺はけらけらにやにやしながら魔神にカードを配った。
その時だった。
ズシン!ズシン!と非常に重い物体がこちらに歩いて来る地響きが響いた。
何だろうと窓を見るとマンションの5階の窓を、あの映画のように巨大な大魔神が現れて俺達の部屋を覗き込んだ。
ひぁ!
そして大魔神が腕を顔の前に動かすと、埴輪顔の大魔神があの映画の橋本力の激怒顔の大魔神になってぎょろりと充血した眼で俺を睨みつけた。
慌てる俺の袖を引いて魔神がウノを続けようと催促した。
その後は俺がワイルドカードを出そうとする度に窓の外から大魔神がぎょろりと俺を睨むので俺は恐怖のあまり遠慮して負け続けた。
おさだも背後に大魔神の視線を感じて遠慮して負け続けた。
勝ち始めてウノを続ける魔神の顔が元の埴輪顔に戻って行った。
そして俺のマッチ棒が無くなった。
窓から俺達を覗き込んでいた大魔神は満足したのか埴輪顔に戻り、ズシン!ズシン!と音を立ててどこかへ去っていった。
魔神は満足してそろそろ帰ると言った。
俺はお辞儀をされて魔神と握手をしてからまた苦労してテレビに入れてやり、魔神は帰って行った。
おさだが身振り手振りで魔神は喜んでいたらしいと俺に伝えた。
あの窓の外の大魔神は魔神たちの守護神らしいのだが、おさだも初めて見たと伝えて来た。
あの小魔神を苛めると大魔神がやって来るのだろうな…。
まぁ、また遊びに来るのは良いが、ウノは止めておこうと俺は思って、俺はおさだとベッドに入った。
一見小さくて弱っちく見える者がいるがバックに何がいるのか判らないので、おさだの友達には特に親切にしようと思った。
続く
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