要求 デッドフラッグ

 あまりの強烈な痛みに彼は思い出したくもない暴力に対する畏怖と、トラウマを思い出そうとおもった、だから放せよ!!と相手の腕を振り払った。案外簡単にほどけて、相手の方も驚いていたし、2、3歩後ずさりした。

「忘れられた死がお前を待っている、お前はそれでも目覚めないのか?」

「何の事かわからない」

「今でも“修復”が行われ続けている、もはや現実こそが“バグ”だ、だから我々の行いは正当化されるべきだ、“デッド・フラッグ”の声明は、すでに何度も発生られている、だが何度も消去されている」

「だからさっきから何をいっているんだよ!!」

「つまりもう、現実は現実ではない、お前の選んだ、偽装したものが現実だ、すでに、彼らに偽装させられた世界を大勢の人間が現実とよんでいるのだから」

「なあ、いったいなんなんだ“現実”のお前はこんなおしゃべりじゃないし、お前はもっと……」

 くるり、と半分頭を上下方向に回転させると、笑いながらザイルはいった。

「習うより慣れろ、昔からいうよな、そうだ、そうだった、それが俺のやり方だ“破片”たちは大した情報量を持つ事ができないから、そう、俺たちは破片、彼にはこんな感情もあった……しかし、まあいいだろう……“舞台”はそろったのだから」

 

 彼は、まるで舞台の幕をひくように、上から伸びた糸をひっぱった。その動きによって彼のあちこちから糸が伸びているのがわかった。そう、操り人形のように、しかしさらに奇妙なのが、その操り人形こそが操り主の糸をたぐりよせるように、襟口から伸びる糸を両手でひくと、恐ろしく巨大な塊が上空から、どさっとふってきた。

<ズゥゥゥウウン>


 奇妙だったのは、それがやけに有機物らしかったことと、あるいはサイボーグ化されているような感じがあったこと。現代の地球ではほとんど見ることがない“昆虫”のたぐいだろう。そう、ヒッヅは図鑑で見た事があった。これは“クモ”覚える意味さえないほどに、ほとんどの種が絶滅したとされているものだ。しかしこれは、いささか巨大すぎた。


「うわああああ!!」

「お前の死の欲望はどこからきた?」

「俺は死にたくない!!」

「まあいい、これからお前はいくつも夢をみるだろう、ピンチになったら俺の名を呼べ、そしてこういうんだ“ザイルを抹消せよ”これは特殊なコードだ、だが覚えておけ、俺が死ぬまでにヒントをえなければいけない、俺の残機は55個だ」

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