【改訂版】弱小領地の悪役貴族に転生したので最高に美人なヒロイン姉妹と革命開拓しようと思いますっ!〜前世の便利道具を再現してたら、いつの間にかシナリオをぶっ壊してた〜
第23話 悪役貴族、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ
第23話 悪役貴族、バレなきゃ犯罪じゃないんですよ
「意外と当たるもんだな」
引き金を引くと、発射された弾丸がコカトリスの脳天を貫く。
数日前に俺を殺しかけた相手を、今は俺が百数十メートルも離れた位置から一方的に殺せてしまっている。
銃とは恐ろしい発明品だな。
まるで自分が一方的に敵の命を刈り取れる死神にでもなったかのようだ。
「よし。良い感じに数も減ったし、そろそろ電気トラバサミの方に追い込むか」
銃で数を減らしたコカトリスを、わざと弾を当てずに罠の方へ誘導する。
一匹だけ厄介なコカトリスがいたものの、問題なく撃破できた。
おそらくは上位個体だったのだろう。
まさか結構離れているのにこちらに気付いて向かってくるとは思わなかったな。
銃口の向きから弾道を読み切ったようで、ジグザグに移動しながら「コケェエエエエ!!」と走ってくる様は軽くトラウマだ。
まあ、お陰で良い練習になった。
「あんたのことは先生って呼ばせてもらうぜ、上位個体のコカトリスさん」
こうして俺は、ものの数時間の練習で動く標的を狙って当てられるようになった。
自分でも驚きの命中率。
銃を作ったテオが凄いのか、あるいは俺に狙撃の才能があったのか。
あるいは両方かも知れない。
「あ、外した」
今のところ、確実に当てられる距離は300mが限界だな。
もっと練習したら1kmとか行けるかも知れない。
俺は仕留めたコカトリスをあらかじめ用意しておいた荷台付きバイクに乗せて、生き残りのコカトリスを罠の方に追い立てる。
コカトリスが電気トラバサミにかかり、感電して動かなくなった。
「よし。あとは……待てよ? 生け捕りにしたところで、こいつらが大人しく卵を渡すか?」
いいや、可能性は低い。
野生のニワトリが人に懐く可能性は限り無く低いだろう。
ましてやコカトリスは魔物だからな。
「……卵から育てる方が良いのか……?」
しかし、そうなると温泉卵への道のりは遠退いてしまうだろう。
どうしたものか。
「ん?」
視界の端で何かが動いたような気がして、俺は慌てて木に登った。
そして、銃に取り付けてあるスコープを覗いて周辺一帯の様子を窺った。
「……まじかよ。早くない?」
スコープを覗いた先には兵隊がいた。
それもグナウセンの家紋が入った武具を装備している兵隊だ。
数はそう多くないが、完全武装で森の中を行進している。
「馬鹿な。まさか山を越えて迂回して来たのか?」
フレイヤからグナウセンの話を聞いて、カリーナは領境の警備を強化した。
特に街道の辺りを。
しかし、俺が今いる森はその領境とは大きく離れている。
ドラーナ領は周囲を険しい山々に囲まれているから守りやすいと思っていたが……。
まさか魔物もいる森を突っ切ってくるとは想像もしなかった。
「どうする? 今から戻ってアスランたちに知らせれば防衛戦になるだろうが……」
見たところ、あの兵隊は先遣隊だろう。
完全武装と言っても、装備しているものが基本的に古い。
先遣隊で数十人なら、本隊はもっと多いはず。
甘く見積もっても数百人、最悪の場合は千人にも届くかも知れない。
そうなったら何をどうやってもドラーナ領を守れない。
「……やるか」
先遣隊を潰してから一度戻り、テオから弾丸を受け取る。
弾は量産してくれているはずだし、彼なら今日中に数十発は作れるだろう。
問題はコカトリスの狩りでかなり弾を使ったせいで残弾数が心もとないことか。
あの先遣隊を潰して弾を受け取りに行くための時間を稼ぐには、より効率的に敵を排除しなくてはならない。
「……指揮官を潰そ」
幸い、兵隊の先頭を歩いている兵士は兜に赤い飾りを付けていた。
おそらく、あの羽根つき兜が隊長だろう。俺は先遣隊の隊長に狙いを定めて――
「……いや、待て。奴らは本当に敵か? 実は使者という可能性も……」
捨て切れない。
しかし、ここで彼らを見逃してドラーナ領が不意を突かれる形になったら最悪だ。
どうすれば良いのか、判断に迷う。
「……そうだ、問題なのは連中が何らかの用事でグナウセンから来た使者だった場合だ」
そうなったら、使者を問答無用で俺が殺したことがバレたらまずいだろう。
そう、俺が殺したことがバレたら、な。
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」
俺は躊躇いなく引き金を引いた。
仮に俺だと疑われても、この世界に銃が無い以上、俺がやったとは証明できない。
俺は魔法が使えないからな。
この世界の常識でものを考えるなら、超長距離から攻撃してくる敵など魔法使いだけである。
つまり、姿さえ見られなければ俺は疑われないのだ。
「作ってて良かったギリースーツ」
コカトリスを狙撃する際に使っていたギリースーツで景色に上手く溶け込み、位置を誤魔化す。
一応、このギリースーツも魔導具だ。
音と匂いを消す効果があり、銃を使っても位置がバレないようになっている。
「命中」
最初の一発は見事に敵の指揮官の頭に命中し、その命を奪った。
突然頭から血を流して倒れた指揮官を心配して兵士たちが駆け寄り、攻撃されていることに気付いた兵士が慌てて指示を出そうとした。
おそらくは副隊長とか、そういう立ち位置の人物だろう。
遠慮なく撃った。
「……おお、パニックになってる。やっぱ頭を潰すのは有効な作戦だな」
パニックから脱却して指示を出そうとした兵士の脳天を片っ端から撃ち抜く。
そうするとパニックは終息せず、継続する。
蜘蛛の子を散らすように元来た道へ走って逃げ出す兵士たち。
これなら本隊にもパニックが伝播して、時間を稼げるかも知れない。
と、思ったのだが……。
「ん? なんだ?」
逃げ出した兵士たちがドタドタと倒れてしまった。
ピクリとも動かない。
試しに倒れた兵士の手や足を撃ってみるが、反応はなかった。
多分、死んでる。
「なんだこりゃ」
俺は突然倒れた兵士たちに近づいて、その顔を覗き込むと硬直した。
死んでる。それも普通の死に方ではない。
全身の水分を吸い取られたかのような、ミイラの如き死体だった。
さっき遠目で確認した時は間違いなく普通の人間だったはず。
「逃げようとしたから殺されたのか? 何らかの魔法攻撃、だよな。うーん、グナウセン領がますますキナ臭くなってきた」
それにしてもこの死体、どこかで見たような気がする。
現世ではなく、前世で。
『幻想物語』のシナリオで似たような現象があったような、無かったような……。
「うん、分からん」
思い出せないということは、大事なことではないということだろう。
俺の十八番、気にしない方針で行く。
「っと、ささっと弾を取りに行ってゲリラ戦の準備をしないと。携帯食も必要だな。干し肉で良いかな?」
俺は敵の迎撃方法を考えながら、一度ドラーナ領に戻った。
と、そこで慌てた様子のアスランに知らされる。
グナウセンがドラーナへ正式に宣戦布告してきたらしい。
どうやら俺が狙撃した連中は、本当に先遣隊だったようだ。
俺の勘違いじゃなくて良かったぜ。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイントクノウ設定
目が良い。あと単純に狙撃が上手い。
「ガッツリやってて草」「指揮官狙うの賢い」「セーフ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます