【改訂版】弱小領地の悪役貴族に転生したので最高に美人なヒロイン姉妹と革命開拓しようと思いますっ!〜前世の便利道具を再現してたら、いつの間にかシナリオをぶっ壊してた〜
第8話 悪役貴族、ゴブリン軍団を迎え討つ
第8話 悪役貴族、ゴブリン軍団を迎え討つ
更に翌日。
アスランは腕に覚えのある領民を連れてゴブリンキングの森へ向かった。
また、戦う力を持たない領民たちはバリケードを作ったドラーナ家の屋敷に立て篭もり、防衛に専念する。
念入りにカリーナが結界魔法を張っているため、ガッチガチの防備だ。
「兄様、それは……? また何かの魔導具ですか?」
「ううん、これはロックスリング。投石紐だ」
俺は布と紐を使って、ある工作をしていた。
「これに石を乗せてぶん回して投げると、俺みたいな子供でも遠くに飛ばせるんだ。少し離れてくれ。そう。あとは――こうやって!!」
「わあ!!」
投石紐の布部分にあらかじめ集めておいた石を乗せ、ぶん回し、窓から外に放り投げる。
すると、子供の膂力からでは考えられないくらい石が遠くに飛んだ。
ウェンディが驚嘆の声を上げる。
「凄いのです!! 兄様!!」
ニッコニコの笑顔で言うウェンディ。
うっ、別に俺が考えたもんじゃないし、投石紐くらい探せばこの世界にも普通にあるだろうから、地味に心が痛い。
「ま、まあ、とにかく。これを作れるだけ作ったら、子供も戦力になる。母様の結界の内側から投げ続けるだけでも敵の戦力を減らせると思う」
「ウェンディもお手伝いします!!」
「それは助かるな」
俺とウェンディが作れるだけ投石紐を作っていると、何やら大人たちが騒ぎ始める。
ウェンディが不安そうに辺りを見回した。
「何かあったのです……?」
「……大丈夫だ、ウェンディ。何があっても、きっと母様や父様が何とかしてくれる」
「……はい!!」
とは言え、騒ぎが何なのか気になるのでカリーナのいる部屋に向かう。
「クノウ!! ちょうど良いところに!! 貴方はフェルシィやウェンディ、領内の子どもや老人を連れて地下に避難していなさい!!」
「何かあったんですか?」
「予定よりも早いですが、討伐隊に追い立てられたゴブリンたちが真っ直ぐココに向かってきています。様子見に行った領民によると、ゴブリンキングと思わしき大型のゴブリンもいるようです。予定通り、結界の内側から迎撃します」
「っ、な、なら、俺たちも戦います!!」
そのために投石紐を作ったのだ。
それをカリーナに見せると、彼女はしばらく考えた後、首を横に振る。
「いいえ、駄目です。結界が破られた場合、屋敷の中に敵が雪崩込んでくるでしょう。そうなった場合、私が満足に戦えなくなります」
カリーナは凄腕の魔法使いだ。
俺やアスランが怪我をした時に治癒魔法を使ってたりするが、カリーナは治癒魔法より攻撃魔法の方が遥かに得意だったりする。
しかし、人を巻き込む可能性が十分にあるため、満足にその力を振るえないという弱点がある。
「で、でも……」
「安心なさい。最悪の場合、屋敷を消し飛ばしてでも連中を根絶やしにしてやります」
悲報、うちの母様が思ったより怖い件。
でも冷静に考えるなら、子どもは足手まといになるだろう。
ゲームではドラーナ領がゴブリンキングの不意打ちを受けて全滅したが、こちらは万全の準備をしている。
カリーナに存分に暴れてもらった方が良い、か。
「分かりました。子どもたちを連れて地下に避難しています」
「ふふ、よろしい。頼みましたよ、私の可愛い子」
カリーナが優しく俺を抱きしめる。
何がとは言わないが、その大きくて柔らかいものは俺を黙らせるのに十分だった。
よし、行動開始だ。
戦えない子供や老人を連れて屋敷の地下室に移動する。
地下室の入り口は暖炉の内側にあるため、隠れるには打ってつけだ。
備蓄もあるため、見つからなければ一ヶ月は立て籠もれる。
と、ここで問題が発生。
「兄様!! フェルシィ姉様が戻らないのです!!」
「なんだって?」
「さっき『マーサさんがいない』って探しに行ったっきり……」
「マジか」
「マジなのです」
マーサさん、ああ、あのマーサさんね。
齢八十を超えている、この世界ではかなり長寿な老婆だ。
ドラーナ家の屋敷のお手伝いさんで、俺も何度も顔を合わせている。
「ウェンディはここにいろ。俺が探してくる。見つかっても見つからなくても、十五分以内に戻ってくる」
「は、はい。気を付けてください」
「ああ」
俺は地下室から出て、フェルシィを探す。
窓から外の様子を見ると、どうやらゴブリンたちが屋敷を囲う結界近くまで来たらしい。
ゴブリンキングと思わしき大柄なゴブリンの姿もあった。
しかし、領民たちはカリーナの魔法を中心に投石や長槍で距離を取りながら、結界越しに応戦している。
あの様子なら大丈夫そうだ。
「あっ、マーサさんが拳でゴブリンの頭を叩き潰してる……。はは、本当に八十過ぎてんのかよ」
フェルシィが探しに行ったはずのマーサさんは、結界の外に出て淡々とゴブリンを抹殺している最中だった。
マーサさんは八十過ぎの老婆だが、バリバリの現役だったりする。
普段は腰が曲がっていて弱々しいが、今は背筋がピンと伸びていて動きにキレがあった。
実を言うと、マーサさんはウェンディの師匠という位置づけのネームドキャラだ。
フェルシィが魔法全般を扱う魔法エリートなら、ウェンディは肉弾戦を得意とし、クリティカルを連発するフィジカルエリート。
そのウェンディに拳の扱い方を教えるのがマーサさんなのだ。
って、そんなこと思い出してる場合じゃない。
「フェルシィはマーサさんと入れ違いになったのか? 一体どこに――あっ、いた!!」
庭の方にフェルシィがいるのを発見。
俺は慌てて窓から庭に飛び出し、フェルシィと合流した。
「姉様!! 早く地下室に!!」
「待って!! まだマーサさんが――」
「あの人なら最前線でゴブリンの頭蓋を叩き割るのに夢中ですよ!!」
「!? ど、どういうこと!?」
そりゃあパニックにもなるわな。
でも説明している暇が無いので、さっさとフェルシィを連れて地下室に戻る。
戻ろうとした、その時だった。
「ギャギャ!!」
「うわ、ゴブリン!?」
どうして庭の方に……。
って、よく見たらゴブリンが一匹くらい通れる穴が結界に開いてる!?
まさかゴブリンキングが正面で大人たちの注意を引きつけてる間に侵入してきたのか?
ゴブリンのくせに知能高いことするなよ!!
「ギャギャ!!」
「姉様、伏せて!!」
「クノウくん!?」
俺は庭に転がっていた石を広い、即座に魔力文字で『爆散』と書いた。
魔力を流し、ゴブリンの方に放る。
フェルシィに怪我をさせないよう彼女に覆い被さった。
その次の瞬間。
「ギャギャ!?」
耳をつんざくような炸裂音と共に石が爆発し、その破片がゴブリンを挽き肉にした。
俺の背中にも石片がいくつか刺さる。
「クノウくん、大丈夫!?」
「あ、はい、大丈夫です。少し石片が肉を抉ってるだけなので。軽傷です」
「重傷じゃない!?」
冷静に突っ込むフェルシィ。
しかし、ここに来て連続でトラブルが発生。ゴブリンは一体だけではなかったのだ。
「ギャギャ!!」
「二体目……ッ!!」
「姉様!?」
今度はフェルシィが俺を守るように前へ出た。
「クノウくんは逃げて。私が時間を稼ぐから」
「……姉様……」
「大丈夫。お義母様から魔法も習ってるんだから」
「いえ、そうではなく」
「?」
俺は至って真剣に、フェルシィへ足を見せて言った。
俺の足には石片が刺さり、血塗れだった。
「なんか、筋がやられたのか、ピクリとも動かないです……」
「え、逃げられない?」
「はい。とても申し訳ないことに」
「……そう……」
ゴブリンがじわじわと近づいてくる。
俺もフェルシィも、どうしたものかと頭を悩ませていた、その時。
「アイシクルプリズン」
近づいてきたゴブリンが、一瞬で氷漬けになってしまった。
刹那、聞こえてくるのはブオオオオオオオオオオオオオンッ!! という駆動音。
俺が作ったバイクモドキだ。
それは氷漬けとなったゴブリンを跳ね飛ばし、粉々に砕いてしまう。
「うちの大切な息子と可愛い娘に、近づかないでくださる?」
俺のバイクモドキに乗っていたのは、カリーナだった。
おそらく、結界の中にゴブリンが侵入したのを感知したのだろう。
うちの母親がカッコイイ件。
でもどうしてバイクモドキに乗っているのだろうか。そこが不思議だ。
カリーナは俺とフェルシィの方を見ながら、溜め息と共に一言。
「はあ、地下室にいなさいと言ったのに……。二人には後でお説教ですからね!!」
「「は、はい!!」」
そのままバイクに乗って走り去るカリーナ。
いくらアスランの一件で改良したとは言え、あそこまで乗りこなすとは……。
なんて考えながら、俺とフェルシィに担がれて地下室に戻った。
およそ一時間後。
カリーナがボロボロのアスランを伴ってゴブリンを殲滅したと言いに地下室へやって来た。
怪我人はいたが、死者は誰もいない。
ドラーナ領の大勝利として、イベントは終わるのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイント作者の一言
作者「ただカリーナがカッコいいだけの話でした。まる」
「マーサさんで草」「カリーなさんかっけぇ」「面白い」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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