ジムに通い始めた咲希の嬉しい変化
「夏輝ー! えへへっ、おまたせ!」
「お疲れさま、じゃあ帰るか」
「うん!」
咲希がジムに通い始めてから二ヶ月経った。
最初は唯愛ちゃんと一緒に週に一度くらいの頻度で通うという話だったのだが、最近では週に二、三回通うくらい、咲希はジムでのトレーニングにハマっているらしい。
今日も仕事帰りにジムでトレーニングしていた咲希を迎えに行き、一緒に帰宅しているのだが……
「変な顔をしてどうしたの? ……あっ! もしかして私、汗臭い!? シャワーを借りたんだけど…… ごめんね」
「いや、ボディーソープの良い匂いしかしないから大丈夫だよ」
「えへへっ、夏輝のエッチ!」
心配していたから『臭くない』と伝えたつもりなんだけど、どうして『エッチ』って言われなきゃいけないのかな、咲希ちゃん?
ただ、俺は咲希の格好を見ていただけだよ。
外出する時は必ずと言っていいほど黒い服にキャップを目深に被り、マスクをして顔を隠していたのに、今はキャップもマスクもしていない。
服装は黒のジャージだが、腕や足の部分にキラキラした白のラインが入っていたりと前より少しだけおしゃれになっている。
……中に来ているTシャツはポゥさんがデカデカとプリントされているやつだけどね。
それに俺と腕を組んでニコニコしながら歩いているし。
二ヶ月前まではキョロキョロと怯えた表情で周囲を見ながら俺の腕にしがみついていたから、ジムに通い始めてから運動不足解消と共にメンタルにも良い影響が出ているんだと思う。
まだ肌を露出するような服は恐くて着れないと言っていたが、それよりも咲希が少しずつ元気になってきているのが俺は一番嬉しい。
「先生ったら酷いんだよ! 亀さんの甲羅みたいな変なやつを背負ってランニングマシンで走れって言うんだから! もうあのトレーニングだけでヘトヘトだよ」
「あ、あははっ、それは…… 大変だな」
甲羅? そんなトレーニング方法もあるんだな…… 変なの。
「その後すぐに先生のパンチを避ける練習をするんだから! 足がヘトヘトなのにだよ!? 手加減してくれないし大変だったんだから!」
でも文句を言いながらも楽しそうに話す咲希を見ていると可愛くて思わず頭を撫でたくなってしまった。
「それでも今日も頑張ってトレーニングしたんだな、咲希は頑張り屋さんだ」
「はぅっ! えへっ、ありがとう夏輝ぃ、大好き……」
あっ、歩きづらいから抱き着くのは帰ってから…… 咲希ちゃん、力が強くなったんじゃない? ……は、離して。
……コラッ! どさくさに紛れてどこ触ってるんだ!
「どこって…… 満足美味しいん棒に決まってるでしょ?」
何で『触るのは当たり前』みたいな顔をしてるんだよ! ……まったく。
こうしていつも通りと言えばいつも通りだが、俺達はイチャイチャしながらゆっくりと二人で帰宅した。
◇
えへへっ、トレーニングで疲れたせいかムラムラっとしちゃう! ……『いつも通りだろ!』って? イチャイチャにいつも通りなんてないわ! ……日々切磋琢磨してマンネリ化しないように頑張ってるもん!
夏輝に○○攻めしてもらったり、✕✕と○△でブヒっとしたり、ベッドで身動きを取れないように□□□□□□されたりと…… ふへへっ、思い出してよだれが垂れちゃった。
とにかく! 飽きないように楽しむのも夫婦生活では大切なの! 仲の良さを保つためには避けては通れない道なの…… えへへっ。
最近は身体も引き締まってきたし、軽快に動けるようになったからバリエーションも増えてきて楽しい。
……何のバリエーションかは言わなくても分かるよね?
さーて、夕飯を作る準備もしてから出かけたし、帰ったら晩ご飯を作らないと!
お腹を空かせた夏輝にたーっぷり栄養と愛が入ったご飯を食べてもらって、そのあとは…… えへへっ
◇
「久しぶりだね、その後はどうだい?」
『上手く話しがつきました、それで今度『
「もうそこまで話は進んでいるのかい? ははっ、さすが春日くんだ、私の部下は優秀…… おっと、もう部下ではなかったね」
『いえ、今でも尊敬していますし、鎌瀬さんのおかげで今まで色々と良い思いをさせて頂いてますから』
「はははっ、そう思ってくれているだけでありがたいよ」
『では日程が決まりましたらまた連絡します……』
通話を終え、タバコに火を付ける。
結婚して子供が生まれてからは禁煙していたのだが…… その嫁と子供は嫁の実家に帰っているから禁煙するのを止めた。
チッ…… 思い出すだけでイライラする……
剣持とかいう奴の義理の弟、あのデカブタの大倉とその嫁のせいで、前の会社にいられなくなったおかげで、嫁は子供を連れて実家に帰るとか言い出しやがった。
元々は俺達のペットだったクセに。
ふん、まあいい、どうせ世間体のために近くに置いておいただけの女だ……
ふふふっ…… それよりも今は大倉に復讐する方が楽しそうだ。
大倉…… お前の大事な家族、義理の姉を使って楽しんでやるから待っていろよ?
……さて、兄貴にも連絡しておくか。
◇
「ヨウ……」
「んー?」
「ヒメも寝ちゃったし、少しお話しましょ?」
「……咲希さんの事か?」
「うん…… 本当に大丈夫かな?」
「身辺調査を頼んだんでしょ? あと、いざとなったら警護もお願いしてあるし、起こるか分からない事をずっと心配していると疲れちゃうよ」
「でも不安なの…… だからぁ…… ねっ? お願ーい……」
「……隣の部屋でヒメが寝ているから、静かに、ねっ?」
「はーい、んふふっ……」
夏輝さんからも暇な時少しでも気にかけてやって欲しいと言われているし、ユアの勘って結構当たるからな…… おわっ! い、いきなり!?
「んふっ……」
不安なのは分かるけど…… ここ最近、ユアが積極的に『お願い』してきて困るんですけど!
……あれ? ここ最近じゃなくて、付き合う前からこんな感じだったかな?
◇
「えへへぇ…… さ、さいんがいっぱい…… しあわしぇ……」
あれ? ジムに通う前からこんな感じだったかな?
動きがなめらかで、あと的確に弱点をついてくる! ただ咲希の弱点にもクリティカルヒットしてしまうみたいなので諸刃の剣だけど。
二人でグッタリとなりながらも横になり身体を休めてから、ゆっくりと後片付けをして……
「ほら、もう寝るよ」
「はーい…… 夏輝、ギュッとして?」
「分かったよ…… じゃあおやすみ」
「えへへっ、おやすみー」
日に日に明るくなっていく咲希を見守り、未来への不安がなくなるよう願いながら、今日も咲希を抱き締めて眠りについた。
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